日常をちょっと豊かにしてくれるモノ。それは職人の技術によって生まれただけでなく、たくさんの人の想いが込められているもの。金属加工を中心としたモノづくりが盛んな燕三条地域では、そんな世界に誇る「思いの詰まった製品」が生まれ続けています。「FACTORY FRONT」は、燕三条地域のモノづくりを見て、買って、体験のできるショップ。どんな製品があり、どんな思い出それらを扱っているのかなど、マネージャーの武田さんにお話しをうかがいました。
FACTORY FRONT
武田涼子 Ryoko Takeda
1980年生まれ、上越市出身。結婚を機に「FACTORY FRONT」のある燕市に生活を移す。6年生の愛娘と共に、自社のワークショップを切り盛りする家族愛&モノづくり愛にあふれるママ。
――「FACTORY FRONT(ファクトリーフロント)」とは、どのようなお店なんですか?
武田さん:「オープンファクトリー型の本社施設」と説明しています。
――本社施設ですか?
武田さん:ショップを運営しているのは「株式会社MGNET(マグネット)」といって、自社製品事業、商品開発事業、地域資源事業などを行う会社なんです。その会社(工場)に併設したショップなので、「オープンファクトリー型の本社施設」なんですよ。
――そういうことなんですね。会社としては具体的にどのような仕事をされているのですか?
武田さん:作りたい人と作る人の間を繋ぐ仕事ですね。例えばデザイナーの方が考えたプロダクトデザイン(製品デザイン)を実現させるために、どこの工場にお願いしたら最良のモノができあがるかを考えて工場との関係を繋いだり、デザイナーの言葉やニュアンスを職人の方に伝わるように橋渡しをしたりと、コーディネート業務を行っています。あとは地域の環境づくりですね。
――燕三条地域には大小合わせて約3,000もの工場があると聞きました。この地域ならではの仕事ですね。地域の環境づくりとは?
武田さん:高校の授業の一環として、地域産業を学び、どのように発信するかを考える授業がありサポートをさせてもらったりしています。今年も10月3日~6日に開催するのですが、燕三条地域の工場を見学できたり、体験することのできるイベント「燕三条 工場の祭典」の事務統括などもしています。
――燕三条地域のモノづくりと密接な関係にあるのですね。
武田さん:そうなんです。なので「FACTORY FRONT」では燕三条のモノづくりの素晴らしさに少しでも触れてもらい、職人の方の想いが伝わるようにと、たくさんの魅力あふれる製品を提供しています。
――「FACTORY FRONT」には、どのような製品がありますか?
武田さん:燕三条をはじめ、全国のモノづくりを紹介しているので、たくさん素敵な製品がありますが、自社で製造しているメタルケースを紹介させてください。
――メタルケースって何ですか?
武田さん:自社ブランド「FOR(フォー)」発の第一弾プロダクトとして、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、真鍮(しんちゅう)、チタン、5種類の金属をプレス加工したケースです。一見、名刺入れのようにも見えますが、名刺入れとしても、クレジットカードを入れてお財布にも、薬を入れてピルケースにもと、さまざまな用途で使ってもらえる金属製のケースです。
――見た目もシャープでカッコいいですね。
武田さん:「いろんな人に寄り添った、出会いを繋ぐ商品」をコンセプトとして考えられているんです。例えば営業マンの方が名刺交換する時に、話のきっかけとなったり。そんなちょっとした何かを繋ぐ製品づくりをしています。
――ワークショップも開催していると聞きました。どのようなワークショップが開催されていますか?
武田さん:「FACTORY FRONT」では、「真鍮板のヘアゴムorブローチづくり体験」「銅板しおりづくり」「ティースプーンづくり」の3つのワークショップを開催しています。どれも1,500円で体験できて、中学生以上であれば参加OKです(小学生は保護者同伴)。
――どれも楽しそうですね。
武田さん:伝統工芸製品を作る過程の一部を切り取った内容になっているので、燕三条地域のモノづくりを直に体験してもらえると思います。最近では女性の方がワークショップに参加されることが増えてきました。女性職人も増えてきているからなのか、自分もモノづくりをしてみたい、したいという方が多くいらっしゃいますね。県外から新幹線に乗って、ワークショップに参加しに来られた方もいました!
――へえ、女性も多いんですね。モノづくりって男性のイメージでした(笑)。
武田さん:最近は少し変わってきましたね。なので、女性に向けたモノづくりのトークイベントなんかも開催し始めました。モノづくりをしている女性デザイナーの方を招いて、モノづくりのきっかけや考え方などを女性目線でトークしてもらっています。
――ワークショップはいつから開催されているのですか?
武田さん:もともとこの場所は工場であり、倉庫だったんですよ。ショップ機能も少しありましたが。2018年にリニューアルオープンし、「FACTORY FRONT」とネーミングしました。その当時からワークショップの開催もスタートしたんです。なので1年前ですかね。
――スタート時から同じ内容だったんですか?
武田さん:ちょっとだけ違いましたね。はじめは予約制で、職人の方に来ていただいてワークショップを開催していました。実際にその作業を普段からされている方に直接教われるので、とても有意義なワークショップだったのですが、もっとたくさんの人に楽しんでもらいたいとの思いから1年後にシステムを変えたんです。スタッフも技術を学び、いつでもたくさんの方にモノづくりに触れてもらえるようにと、いつでも体験できる体制へ変えていきました。
「燕三条の産業にまつわるモノを見てもらい、体験してもらうことで、自宅にあるモノが今までと違った価値観で見えて、使ってもらえるようになると思うんです。それってこんなこだわりがあるんだ、こんなに作るって大変なんだと、職人の方の思いが伝わるからなんですよ」と武田さん。モノづくりの素晴らしさを伝えるために製品を紹介し、販売するだけでなく、体験してもらうことで肌で感じられる「FACTORY FRONT」。そしてこの場所だからこそ、「工場」と「作りたい人」をつなぐ「株式会社MGNET」としての活動。すべては燕三条のモノづくりを世界へ発信することへと繋がること。これからの燕三条モノづくりも注目です。
FACTORY FRONT
新潟県燕市東太田14-3
0256-46-8720