薪を燃やして豪快に料理する、万代「薪火料理FIREPIT」の挑戦。
食べる
2021.12.23
最近、アウトドアブームでバーベキューを楽しむ人が増えているようです。木炭を使ったバーベキューはお馴染みですが、薪を使った料理を体験したことのある人は、案外、少ないのではないでしょうか。そんな薪を使ったワイルドな料理を味わえるお店が、今年、万代にオープンした「薪火料理FIREPIT(ファイヤーピット)」です。今回は料理長の大海さんに、薪火料理に挑戦する意気込みを聞いてきました。


薪火料理FIREPIT
大海 貴仁 Takahito Daikai
1981年新潟市生まれ。東京の調理師専門学校でフランス料理を学び、「オテル・ドゥ・ミクニ」をはじめとした県内外の洋食店で数多く経験を積む。2021年に「株式会社イデアル」に入社し、洋食部門統括料理長、「薪火料理FIREPIT」の料理長を務める。
厳しい職場を選んで料理修行をスタート。
——今日はよろしくお願いします。大海さんは現在「株式会社イデアル」で洋食部門の統括料理長を務めていらっしゃるということですが、こちらはどんな会社なんですか?
大海さん:「旬魚酒肴 五郎」「焼NIQ」「Material Café」といった飲食店の運営、プロデュース、サポートなどをおこなっている会社です。この「薪火料理FIREPIT」も「株式会社イデアル」が運営しています。
——大海さんが「株式会社イデアル」で働くことになったのは?
大海さん:独立して飲食店をやることも考えていたんですけど、コロナ禍のタイミングが悪い時期でもあって、どうしようか迷っていたんですね。そんなとき知人から「株式会社イデアル」が薪火業態のお店を計画していると聞いて和田社長とつないでもらい、いろいろなお話を聞かせてもらったんです。この会社は自分と同じベクトルを向いている、と感じたので、ぜひ働いてみたいと思ったんですよね。

——社長と考えが一致したわけですね。大海さんはいつ頃から料理人を?
大海さん:父親が若い頃に和食の料理人をやっていた影響もあって、高校生のときにはもう料理の道に進もうと思っていました。少しでも早く現場に出たかったので、1年制の専門学校を探したんですけど、新潟にはなかったので東京の調理師専門学校に行って基礎だけ学びました。
——じゃあ学校を1年で卒業してすぐにお仕事を。
大海さん:はい、一番厳しい職場で働きたくて専門学校の先生に探してもらいました。それで茨城にある結婚式場併設の会員制乗馬クラブで働くことになったんです。

——あえて厳しい職場に入ったんですか?
大海さん:だって、最初に厳しい職場を体験しておけば、あとはどこに行っても楽じゃないですか(笑)。それ以上厳しい環境はないんですから。
——な、なるほど。それで、やっぱり厳しかったですか?
大海さん:厳しかったですね。とにかく忙しくて、メモを取る余裕すら許されないんですよ。覚えなきゃいけないことはできるだけその場で頭に叩き込んで、トイレに行ってからメモしたりしていました(笑)。あと厨房で飛び交っているフランス語がわからないと仕事にならないんです。だから先輩が使っているフランス語を覚えて、家に帰ってから辞書で調べていましたね。
——お話だけでも忙しさが伝わってきますね。
大海さん:料理人って自分の仕事だけじゃなくって、他の人の仕事や調理場全体の状況を把握していなければならないんですよね。会社が倒産してしまったのでその職場を離れましたが、そのときの経験は後々まで役に立っています。
——その後のキャリアは?
大海さん:日本を代表する料理人・三國シェフの「オテル・ドゥ・ミクニ」で働かせていただきました。最初はあまり大変な仕事を回されないように、仕事ができないフリをしていたんです(笑)。でも副料理長に見抜かれてしまって、「大海君、実はめちゃめちゃ料理できるでしょ?」って言われて……。
——見る人が見ればすぐわかるんでしょうね(笑)
大海さん:そうなんですかね(笑)。料理長として系列店を任せてもらえるところまで話があったんですけど、料理長になると会議に出席しなければならないんです。でも僕は会議が嫌いなんですよ(笑)。だからお断りして、退社することになりました。
——なんかもったいないですね。その後もいろいろなお店で経験を積んだんですか?
大海さん:そうですね。知り合いから頼まれて長野のホテルで料理長をした後、新潟に戻っていろいろな洋食店で料理を作ってきました。

薪火料理は難しいからこそ面白い。
——こちらのお店では薪火料理に挑戦。いかがですか?
大海さん:今まで使ってきたガスや木炭とは性質が違うし、温度もずっと一定じゃないところが難しいですね。オープン前にスタッフみんなで海岸に行って、経験者から薪を使った調理方法を教わったんです。……というより、「勉強会」という名のバーベキューでしたけどね(笑)。僕も薪火の扱いを今も日々勉強中なんです。でも、薪火料理は難しいからこそ面白いですね。
——そんなに扱いが難しいのに、薪火で料理することにはやはりメリットがある?
大海さん:食材を生かす料理には、薪火が適しているんじゃないかな。生の木を焼くことで、含まれていた水分が食材に当たってジューシーに仕上がるし、煙で燻されることで食材に香りがつくんです。ただ、やたらと香りがつき過ぎないように、焼き方には気をつけています。

——他にも薪の使い方で気をつけていることってあるんですか?
大海さん:薪火をコントロールするには風の力が必要なんです。風がないと火力が上がらないので、強い吸気で風の流れを起こしています。あと特徴の違う2種類の薪を使って火力をコントロールしているんです。ナラの薪は火持ちがいいけど着火に時間がかかるので、火がつきやすいスギの薪と合わせて使っています。

——お話を聞いていると、薪火料理のカギは火力のコントロールにあるみたいですね。薪火以外にも料理のこだわりがあったら教えてください。
大海さん:温度かな。温かい料理は温かい状態で食べてもらわないと、美味しくなくなるものが多いですよね。だからお客様の前にお出ししたとき、一番美味しい状態になるよう計算しています。あと、どうやったら食材のうま味を引き出せるのかを考えますね。シンプルに作った方がいいものもあれば、味をふくらませた方が美味しいものもあるし。その食材に薪火が合わさることで、どう変わるのかを考えながら調理しています。
——なるほど。
大海さん:今後はもっと雰囲気のある盛付けになるよう工夫しながら、薪火料理の魅力をお客様に伝えていけたらと思っています。僕もまだまだ勉強中なので、今後は新しいメニューにも挑戦していきたいですね。ここでしか食べられないワイルドな薪火料理を、ぜひ味わいに来てほしいです。

薪火料理FIREPIT
新潟市中央区弁天2-4-19
025-282-5529
17:30-24:00(土日祝日は17:00から)
水曜休
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