長岡市の「すずらん通り」に「ウエスタンバー Forty-Niners(フォーティー・ナイナーズ)」というお店があります。鹿の頭が飾られた看板をくぐって、銃の形をしたドアノブを押して扉を開けると、そこには西部劇に出てくる酒場のような空間が広がっていました。カウンターで迎えてくれたのは、ウエスタンスタイルに身を包んだオーナーの大橋さん。どうして「ウエスタンバー」をはじめたのか、いろいろお話を聞いてきました。
株式会社 FunFreaks
大橋 元木 Motoki Ohashi
1974年長岡市(旧栃尾市)生まれ。東京の大学で建築を学んだ後、様々な職業を経て渋谷のバーでバーテンダーを経験。長岡へ戻り2001年にバー「AQUA VITAE(アクア バイテ)」をオープン、キャパの大きな物件へ移転して2006年に「ウエスタンバー Forty-Niners」をオープンする。登山や映画鑑賞が趣味。
——外も中も西部劇に出てくる酒場じゃないですか(笑)。大橋さんは最初から飲食業をやっていたんですか?
大橋さん:実家が建設関係の仕事をやっていたので、東京の大学で建築を学んだんですが、自分に合わなかったのか、楽しいと思えなかったんです。その後、いろいろな仕事を経験したものの、なかなか楽しいと思える仕事に巡り会うことはできませんでした。そんななか、23歳のときにようやく楽しいと思える仕事に出会えたんです。
——それがこのお仕事だったと。
大橋さん:当時はいろいろな深夜番組で、東京のナイトスポットがよく紹介されていたんですよ。僕も若かったし憧れがあったので、23歳のときに渋谷でバーテンダーとして働きはじめました。
——バーテンダーのどんなところが楽しかったんですか?
大橋さん:自分の目の前にいるお客様を笑わせたり感動させたりして、空間や時間を演出できることですね。
——ある意味、エンターテイナーですよね。長岡へ帰ってこられたのは?
大橋さん:父が大怪我をしたので実家の仕事を手伝うために帰ってきたんです。でも父の怪我が完治して仕事に復帰することになったので、僕はそのまま長岡に残って「AQUA VITAE」というカウンターだけの小さなバーをオープンしました。
——どんなお店だったんですか?
大橋さん:「ウエスタンバー Forty-Niners」とは正反対で、落ち着いた雰囲気のクラシカルなバーでしたね。僕もネクタイにベストといった典型的なバーテンダーのスタイルで、カウンターに立っていました。
——そうだったんですか。確かに今のお店とはまったく違いますね(笑)
大橋さん:4年近く営業してみて、僕がやりたい店のイメージと違うことに気づいたんです。落ち着いたバーもいいんですけど、東京で働いていたバーのわいわいと賑やかな活気が忘れられませんでした。あと、ひとりで働いているのも寂しくて、一緒に働く仲間がほしかったので、現在の広い物件へ移転してきたんです。
——移転をきっかけに「ウエスタンバー Forty-Niners」をオープンしたんでしょうか?
大橋さん:最初は店名も「AQUA VITAE」のままで、クラシカルなバーだったんですよ。ただ、この広さで落ち着いた雰囲気だととても暗く感じるんです(笑)。そこでカントリーウエスタンの軽快なBGMを流すようにしたら、お客様も増えていきました。
——へぇ〜、それが「ウエスタンバー」としてのきっかけだったんですね。
大橋さん:そうなんです。それに合わせてスタッフの格好や内装もウエスタン調に変わっていって、店名も「ウエスタンバー Forty-Niners」に変えました。
——世界観に妥協がなくて、ディズニーランドのウエスタンランドみたいですよね。
大橋さん:そう言ってもらえると嬉しいですね。おもちゃ箱をひっくり返したように、ごちゃごちゃした雰囲気になるよう意識しています。お客様が「お店に飾って」といって、雰囲気に合うようなナンバープレートやブリキ看板を持ってきてくれるんですよ(笑)
——お客さんも一緒に、お店の世界観を楽しんでいるようですね。
大橋さん:お酒を飲むだけの場所ではなくて「大人の遊び場」として楽しんでもらえるようなお店を目指したいんです。そのためにもウイスキーやカクテルの数を充実させていますし、喫煙OKな上に水タバコも楽しむことができます。
——これってドリンクメニューなんですね。お店で見ることができる映画リストかと思いました(笑)
大橋さん:僕は映画が好きなので、カクテルの名前も映画のタイトルにしているんです。作品中で主人公が飲んでいたお酒を再現したり、着ていた服の色をイメージしたり、その作品に因んだお酒になっています。
——そんな話を聞くと、全部飲んでみたくなりますね(笑)。例えばどんなカクテルがあるんですか?
大橋さん:「天気の子」をイメージしたカクテルは、オレンジと水色の2色で、太陽と雨を表現しています。「テルマエ・ロマエ」はお風呂をテーマにしたコメディ作品にあやかり、フルーツ牛乳味のカクテルです。「ローマの休日」はオードリー・ヘプバーンが食べるジェラートをイメージしていますし、「キャリー」はクライマックスの血をイメージしました。映画のワンシーンを思い出しながら、味わってもらえたら嬉しいです。
——どんどん出てきますね(笑)。お客さんを楽しませたいという、大橋さんの気持ちが表れているように思います。今後はどのようにお客さんを楽しませていきたいですか?
大橋さん:新潟県中越地震やリーマンショック、コロナ禍といった危機を経験しながら、それでも20年間続けてくることができたのは、支えてくれたお客様やスタッフのおかげだと思っています。その感謝を忘れずに、これからもお客様が楽しめる時間を提供していきたいですね。お酒には人や仕事をつなぐ力があると思うんです。だからお酒を提供する店には、縁をつなぐ場所としての使命があるような気がします。コロナ禍がはじまる前は婚活イベントや友達づくりイベントを開催していたので、また再開したいですね。
ウエスタンバー Forty-Niners
長岡市東坂之上町2-3-4 いこいビル1F
0258-37-1807
18:00-3:00
不定休