箏をもっと身近に感じてほしい。
箏奏者 藤崎浩子さんの思い。
その他
2025.12.29
お正月と聞くと、お箏(こと)の音色を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。新潟市を中心に活動している箏奏者、藤崎浩子さんは「箏をもっと身近に感じてほしい」という思いから、箏を使っていろんな音楽を表現しています。そんな藤崎さんが、お箏をはじめたきっかけや、今の活動のこと、これからのことなど、いろいろお話を聞いてきました。
藤崎 浩子
Hiroko Fujisaki
新潟市出身。18歳のときに箏と出会い、演奏をはじめる。新潟や東京で演奏技術を磨き、現在は音楽教室や、新潟市のジュニア邦楽合奏団で指導するほか、「薫風之音」として演奏活動もしている。趣味はホットヨガ。
箏の音色に魅了されて。
18歳から歩みはじめた、箏の道。
――今日はよろしくお願いします。早速ですが、藤崎さんのこれまでのことを教えてください。
藤崎さん:小さい頃から音楽が好きで、ピアノを習っていたり、学生時代は吹奏楽部に所属してトロンボーンを演奏したりしていました。でも和楽器を弾いたことはなかったんです。18歳のとき、ラジオからお箏の音色が流れてきて、ドキッとしたんです。「この音で音楽がしたい」って強く思って、お箏をはじめることにしました。
――その後は、新潟市や東京で演奏を学ばれたんだとか。
藤崎さん:最初は新潟市内の先生にお箏を習っていたんですけど、師範になるための試験を受けようと思ったとき、先生から「師範をとるなら東京の家元の方にレッスンを受けてくるといいよ」ってアドバイスをもらったんです。そこから東京でレッスンを受けはじめて、多いときは週1で、新潟から東京に通っていましたね。
――週1で東京まで。そこまでできたのは、どんな思いが?
藤崎さん:「NHK邦楽技能者育成会」という演奏家を育成する機関に入りたかったんです。ここは若手の演奏家の登竜門のようなところで、芸大を卒業した方や、プロを目指す演奏家の方が集まるような場所だったんですよ。師範に合格した後、ここに入って演奏の勉強をしました。
――「NHK邦楽技能者育成会」に入るときの試験も、大変だったと聞きました。
藤崎さん:一次試験では筆記と実技、二次試験では面接があり、その中に「ソルフェージュ」っていう歌の試験があって。演奏ではなく、しかも箏の演奏では使わない、五線譜での試験だったので大変でしたね。でも、「NHK邦楽技能者育成会」には、お箏だけではなく、尺八や琵琶、津軽三味線の演奏家もいたので、いろんな人とのつながりはできました。
――現在は、個人の演奏活動の他に、どんなことをされているんですか?
藤崎さん:「薫風之音」っていう箏と尺八のユニットで活動したり、音楽教室や新潟市のジュニア邦楽合奏団で箏を教える仕事をしたりしています。感染症が流行していたときは、イベントも教室もできなくなって、時間ができたんです。そのときにYouTubeやTikTokで演奏している動画を上げはじめました。こんな表現もできるんだって、思ってもらえたら嬉しいです。

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箏の表現を、もっと広めたい。
「薫風之音」の活動のこと。
――藤崎さんは「薫風之音」というユニットを組まれています。どんな経緯でユニットで活動することに?
藤崎さん:新潟で個人の演奏活動をしていたとき、尺八の鯨岡徹さんと現場が被ることが多かったんです。あるとき、お箏と尺八を演奏してほしいっていう依頼がきて、そのイベントに一緒に出てから、ユニットとして活動しはじめました。
――思ったより、ゆるっとはじまったんですね。
藤崎さん:本当はふたりで出たイベントも、ユニット名はつけなくてもよかったのに、鯨岡さんが「ユニットに名前をつけてほしいって」って言ってきたんです(笑)。それで鯨岡さんが名前をいくつか考えてくれて、その中から私が選んだ名前が「薫風之音」になります。そのイベントがきっかけで、ふたりでユニット活動をはじめましたね。
──意外な経緯でした(笑)。この名前には、どんな思いが?
藤崎さん:語感がきれいな日本語を使いたくて、この言葉を選んだみたいです。この名前にはちょっとした仕掛けがあって、「之音」は「の音」とも読めますし、「NOTE」とも読むことができます。「薫風さん」って皆さんに呼んでいただけているので、とても気に入っています。
――「薫風之音」は具体的にどんな活動をされているんでしょう。
藤崎さん:「箏と尺八をもっと身近に」をテーマにイベントやコンサートを中心に演奏をしています。過去にはCDをつくって販売したこともあります。CDのジャケットは場所を決めるところから撮影まで私たちで行っているんです。曲もすべてオリジナルで、シンプルに箏と尺八だけの曲や、ギターやベースを交えた曲や、ピアノと一緒に演奏している曲など、表現の幅は広いと思います。
――CDのジャケットも、私の知っている邦楽のCDとは違う雰囲気です。
藤崎さん:和楽器のCDってデザインだけで顔が見えなかったり、ステージで演奏している姿がジャケットになっていたりすることが多いんです。私たちは、あえて一般の商業音楽で流通しているスタイルに倣って、音楽の雰囲気が伝わるようにジャケットをつくっています。
――ユニットの魅せ方まで細かく気配りもできる、おふたりのセルフプロデュースの力に驚きました。
藤崎さん:私と鯨岡さんは、「りゅーとぴあアウトリーチ事業第1期登録アーティスト」でもあります。ここでの経験が、私たちの活動が外からどう見えているか、どんなふうに魅せたいかっていうのを、考えて活動をしていくきっかけになりました。ここでいただいたアドバイスは刺激になりましたし、今でも活動に活きていると思います。


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20年、そして30年と、
体験会で箏と人をつなげていく。
――「薫風之音」は来年で20周年を迎えます。
藤崎さん:集大成ではなく、その次の10年につながる1年間にしていきたいなと思っています。とはいえ、記念のコンサートは開催する予定なんですけど。とにかくここで何か区切りをつけるというよりは、その先につなげる活動をしていきたいですね。つなげるという意味では、定期開催している体験会もそのひとつだと思っています。
――箏と尺八の体験会、ですか。
藤崎さん:コンサートで私たちの演奏を聴いてもらうだけでも、皆さんにとってお箏と尺八が身近に感じられるかなって思っていたんですが、まだまだハードルの高さを感じています。月に1回、「燕喜館」さんで実際にお箏を弾いてもらう機会をつくりました。ここでは、皆さんに馴染みのある曲を選んで弾いてもらっています。
――『さくらさくら』からYOASOBIの『アイドル』まで、選曲が幅広いですね。
藤崎さん:難易度もいろいろあるので、ご自分に合った曲を楽しんでもらえたら嬉しいですね。中には、お箏初心者だけど『アイドル』が弾きたいって時間いっぱい練習される方もいましたよ。今までとつながり方を変えたことで、いろんな世代の人が気軽にお箏にふれてくれるようになった気がします。
――私も弾きたくなってきました。藤崎さんのこれからの目標を教えてください。
藤崎さん:まずは20周年の記念コンサートを成功させて、30周年に向けてさらにパワーアップしていけたらいいなって思っています。船で演奏して、そのまま海外に行ってそこでも演奏して、また船で戻ってくる、みたいなのをやってみたいです。すごい、欲にまみれていますが(笑)
――でも、藤崎さんならできそうな気がします。最後に、藤崎さんの思う、お箏の魅力とは?
藤崎さん:やっぱり、この音色が大好きですね。木の板にただ弦が張ってあるっていう、単純なつくりですが、自分の思いがいちばん素直に表現できると思っていて。これからもいろんな音楽を、お箏で演奏していきたいです。演奏はYouTubeやTikTokで聴けるので、興味のある方は、ぜひ聴いてみてください。


藤崎 浩子
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