新潟駅前にあったイタリアンレストラン「キアッキエリーノ」が、お惣菜の販売をメインにしたお店「ガストロノミア キアッキエリーノ」として2021年に豊栄駅前に移転しました。イタリアンシェフとして長年経験を積んできた山田さんが「家庭でも美味しいイタリアンを味わって欲しい」という思いで、新潟の食材を使った様々なお惣菜を提供しています。独立されるまでの経緯や料理へのこだわりについて聞いてきました。
ガストロノミア キアッキエリーノ
山田 清人 Kiyoto Yamada
1977年魚沼市生まれ。新潟調理師専門学校卒業後、東京のイタリアンレストランで修業。赤坂のレストランではシェフも務める。2010年に新潟へ戻り、2011年に新潟駅前でイタリアンレストラン「キアッキエリーノ」をオープン。2021年に北区へ移転し「ガストロノミア キアッキエリーノ」としてリニューアルオープン。ゲーム好きで自分用のゲーム機を購入するが、子どもに取られてしまい困っている。
——まずは山田さんが料理の道に進んだいきさつから教えてください。
山田さん:高校卒業後の進路を考えたときに、大学受験やスポーツでの推薦入学も考えたんですが、新潟調理師専門学校に進学することにしたんです。僕はサラリーマンに向いていないと思っていたので、手に職をつけて、いずれは独立しようと考えていました。
——独立にもいろんな道があると思いますけど、どうして調理師を選んだんでしょう?
山田さん:どうしてなのかは自分でもよくわからないんですけど、父方の実家が蕎麦屋さんをやっていたり、親戚に料理人が多いんですよ。僕もその血を引いているからかもしれないですね。
——専門学校時代はどんなことを学んだんですか?
山田さん:専門学校では色々と基礎的な勉強をしながら、イタリアンレストランでのアルバイトをしていたんです。仕事はとてもハードだったけど、料理の楽しさを学ぶことができました。
——じゃあ、卒業後はアルバイトしていたお店で働いたんでしょうか?
山田さん:そこのオーナーからは「本当にイタリアンの勉強をしたいんだったら新潟にいちゃダメだ。東京で修業してこい」って言われました。専門学校の先生からも東京での修業をすすめられたので、東京にあるイタリアンレストランで働くことにしたんです。上京してみてオーナーや先生の言っていた言葉の意味がよくわかりましたね。
——と、いうと?
山田さん:当時の新潟では「イタリアン」っていうとパスタかピッツァくらいしかなかったんです。でも東京のイタリアンレストランには、それ以外のイタリアンメニューも豊富に揃っていたんですよ。新潟のイタリアンレストランでアルバイトした経験なんて、ほとんど役に立ちませんでしたね。
——当時は東京と地方でレベルの差が大きかったんですね。それからしばらくは東京でイタリアンの修業を?
山田さん:シェフとの考え方の違いから3ヶ月で辞めちゃったお店もあるんですけど、7〜8軒のお店で働いたと思います。最後は赤坂のイタリアンレストランでシェフとして調理場を任せていただきました。このお店で学んだことはとても大きくて、今も自分の料理に生かされていると思います。
——どんなことを学んだんでしょう?
山田さん:「イタリア料理」といっても、北イタリアの料理と南イタリアの料理はまったく違うんです。僕はそれまで北イタリアの料理を作っていたんですけど、そのお店で初めて南イタリアの料理に触れたんです。乾麺も初めて使ってみて、その美味しさを知りました。僕が今得意としている魚料理も、そのお店で勉強しましたね。
——じゃあ山田さんの今の料理は、その頃の経験がベースになっているんですね。
山田さん:そうですね。その頃にイタリアに渡って、自分が日本で作っているパスタが本場イタリアで食べられているものと同じものなのかどうか、間違ったものじゃないか、食べ歩いて確認したりもしました。
——山田さんはどうして新潟に帰ってこられたんですか?
山田さん:ふたり目の子どもが生まれる2010年頃は、僕にとっていろんな転換期で、まるで呼び寄せられるみたいに新潟に帰ってきたんですよ。そうしたら帰ってきた数ヶ月後に東日本大震災が起こりました。しばらくは地元のイタリアンレストランで働きながら独立の準備をして、2011年12月に「キアッキエリーノ」をオープンしたんです。
——駅前のいい場所で営業されていましたよね。
山田さん:最初はいろんなお店と一緒に古町十字路の「北光社」跡地に入る予定だったんですけど、いつの間にかその話がうやむやになってしまったんです。そこで駅前の物件を見に行ったら、大家さんから「今日中に返事をしてほしい」と言われて。びっくりしたんですが、その日のうちにその物件でお店をはじめることを決めてしまいました。
——それも何かの縁だったんでしょうね。「キアッキエリーノ」はどんなお店としてオープンしたんでしょうか?
山田さん:魚を使ったイタリアンをメインにしたお店でしたね。魚料理は肉料理に比べて人気がないんですけど、新潟の人たちにもイタリアの美味しい魚料理を食べてほしいという思いではじめました。「魚料理には白ワイン」という通説をひっくり返して「赤ワインにも合う魚料理」を目指しました。僕の料理って見た目よりうま味を優先しているので小綺麗に飾ることはしないんですが、味には自信があります。
——料理には新潟で揚がった魚を使っているんでしょうか。
山田さん:もちろんです。イタリアンの基本的な考え方でもあるんですけど、地元で採れた食材を使うのが当たり前だと思っています。せっかく新潟でお店をやるんだったら、新潟の美味しいものを出せばいいと思っているんですよね。だから「地産地消」っていう言葉は当たり前だと思っていますし、その時期に採れない食材は使いません。例えば今の季節だと、冬に採れないナスやムール貝、ワタリガニなんかは使わないようにしています。あとメニューもそのときどきの食材を見てから決めるようにしているので、1週間前にならないとわからないんです(笑)
——新潟駅前から豊栄駅前に移転して、お惣菜をメインにした「ガストロノミア」にリニューアルされたのはどうしてなんですか?
山田さん:子ども連れだとレストランでは落ち着いて食事できないことも多いんですよね。そこで「ご家庭でもお店の美味しいイタリアンを食べていただけたら」という思いではじめました。
——なるほど。どんなお客さんが買いに来るんですか?
山田さん:いろんなお客様が来ますけど、お母さんが多いかな。子どもでも食べられる料理を質問されることもあるんですけど、ぜひお子さんと一緒に買いに来て、何が食べたいか選ばせてあげてほしいですね。僕自身、子どもたちがお惣菜を選んでいる姿を見ているのが楽しいんです。
——どんなお惣菜が人気なんですか?
山田さん:「タコのマリネ」は人気がありますね。佐渡や間瀬で水揚げされたタコを使って、塩揉みせずに仕上げているので、固くならずに柔らかいんですよ。レーズンや松の実を入れてイタリア風に作っている「魚のハンバーグ」も子どもたちに人気があります。ドルチェも常時4種類ご用意していますけど、僕が飽き性なので入れ替わりが早いんです。食べたいものがあったら、リクエストしていただいた方がいいかもしれません(笑)
——そんなに飽き性なんですか(笑)
山田さん:「飽き性」っていうよりも「新しいことが好き」って言った方がいいのかな(笑)。いつでも新鮮な気持ちで料理を作り続けていたいんですよ。
——じゃあ、今後はどんな「新しいこと」をやるつもりですか?
山田さん:近々、ニョッキとソースの組み合わせが選べるセットを販売予定です。いずれはパニーニもはじめたいんだけど、ひとりでやっているからオペレーションに不安があるんですよね。奥さんからは「やった方がいい」ってお尻を叩かれているんですけどね(笑)
ガストロノミア キアッキエリーノ
新潟市北区柳原2-8-1
025-288-5523
11:00-20:00
水曜・第2火曜休