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僕らの工場。#26 神の手のような商品をお客様に。「ゴッドハンド」

2010年に設立した「ゴッドハンド株式会社」は、プラモデル用工具に特化した製品で、多くのプラモファンからの支持を集めています。今回は代表取締役の角田さんと妹の大竹裕美さんに、設立から現在に至るまでの経緯などをいろいろとお聞きしてきました。

 

ゴッドハンド株式会社

角田 稔 Minoru Tsunoda

1978年生まれ。ゴッドハンド株式会社と株式外社ツノダの代表取締役。趣味はバスケと機械いじり。

 

大竹 裕美 Hiromi Ootake

1982年生まれ。稔さんの妹で、現在はゴッドハンド株式会社の協力会社である極株式会社で製造の責任者を務める。週末は娘とゲームをするのが何よりの楽しみ。

 

まるで「神の手」を持ったかのように使いやすい工具。

――まずは、ゴッドハンドが設立した経緯を教えてもらえますか?

角田さん: もともと僕は父が創業した株式会社ツノダに務めていて、当初はその子会社としてゴッドハンド株式会社が設立されました。ツノダはペンチ類の工具品の製造会社で、商品は問屋に卸していました。ゴッドハンドができたのにはふたつ理由があって、ひとつは株式会社ツノダが「直接消費者に向けた販売ルートを作りたかった」ということ、もうひとつは僕が「自分の城が持ちたかった」ということです。僕としては後者の比重が相当大きかったですね(笑)

 

――なるほど、じゃあ工具の販売会社としてゴッドハンドは設立されたんですね。

角田さん:そうです、僕は通販がやりたかったので、通販メインの会社として設立しました。

 

――社名のゴッドハンドっていうのは「神の手」ってことですよね?

角田さん:会社設立は半年くらい準備期間があったんですけど、社名はそうとう悩みました。ちょうどそのとき「ゴッドハンド輝」っていう漫画を読んでいて「ゴッドハンド」っていいなとは漠然と思ってたんです(笑)

 

――ちなみにそれはどんな漫画ですか?

角田さん:ゴッドハンドを持つ医者の漫画です。でも「ゴッドハンドを持つ社員が作った商品」という社名だと、ちょっとアピール強すぎないかなと思ったので決めかねていたんですね。それがある日、ふと、「お客さんがゴッドハンドになることができるような商品を提供する」という意味を持たせたらいいんじゃないかって思いついたんですね。

 

――ゴッドハンドで買った商品を使えば、誰でもゴッドハンドになることができるってことですね。

角田さん:そうです。それほど使いやすくて高品質なものを提供しているという意味を込めました。

 

仕入れて売るだけじゃ、商売にならない。

――新会社設立で当初は苦労も多かったんじゃないですか?

角田さん:最初は僕ひとりで進めていました。ツノダに在籍しながら二足のわらじで、休憩室で仕事をしていましたよ。商品の写真を撮ったりいろいろ準備が必要なのに、なにせ場所がないから。でも軌道に乗るまでは余計な出費は避けたいと思っていたので。

 

――販売の経験はあったんですか?

角田さん:ツノダでは基本、製造だったので、販売の経験はまったくありませんでしたね。ECサイトのノウハウなんてもちろんなくて、本は読みましたけど実務になると全然違うから。

 

――そこから軌道にのせるための、何か転機みたいなのはあったんですか?

角田さん:1年過ぎた頃から、仕入れ商品を売っていただけでは商売にならないなって思ったんです。そこで、じゃあ何ができるんだろうって考えたときに、ツノダでのノウハウを活かして、オリジナル商品を作って売ってみたらいいんじゃないかと思ったんですね。それを試したら意外と売れたので、「これでいこう」ってなったわけです。

 

――販売会社として設立したゴッドハンドが、製造会社としての機能も持つようになったと。

角田さん:もともとツノダの商品を売るために立ち上げたゴッドハンドでしたが、途中からはゴッドハンドで作った自社商品を売るための会社になっていきました。そこから今のかたちである模型のツールメーカーとして、どんどん変わっていったんですね。

 

――角田さんが販売と製造をやっていたんですか?

角田さん: 2012年頃からはようやくもうひとり雇う余裕ができて、そのおかげで僕がニッパーを作る方に軸を移せるようになっていったんです。

 

予告販売のみで注文がとれた、アルティメットニッパー。

――最初のオリジナル商品はどんなものだったんですか?

角田さん:今でも主力商品になっている「アルティメットニッパー」というものです。当初のコンセプトは、当時市場に出てたニッパーと同等かそれ以上のクオリティってことだけを考えて作りました。

 

――反応はどうでしたか?

角田さん:最初は10丁だけ作って、発売の一週間前から写真も付けずに販売予告だけECサイトに載せたんです。そしたらその日のうちに注文が入って、「え、なにこれ?」って信じられなかったです。

 

――写真なしの販売予告だけで注文が入ったんですか?

角田さん:そこには「よく切れるニッパー」みたいな煽りの文言だけ入れていた気がします。時間をかけて良いモノを提供しようと思っていたので、自信はありましたけどね。

 

――そしてそれが徐々に売れて行くわけですね。

角田さん:そうですね。2013年頃にはまた人手が足りなくなるくらいになってきて、誰か他の人が作れるようにならなきゃいけないと。そこで誘ったのがツノダでパートとして働いていた妹の裕美です。

 

 

――声をかけられたときはどうでしたか?

裕美さん:「え、なんで私?」って思いました(笑)。身内だから声かけやすかったんじゃないかな。

 

角田さん:いや他人じゃできないと思ったからですね。

 

裕美さん:いばらの道だからね(笑)。なんか自然にそのレールに乗せられた感はあったんですけど、興味はあったのでやってみようかなと思いました。モノづくりはツノダで携わっていたのでイメージはできていました。でも実際にはじめるとパートでやっていた仕事とはまるで違うものでした。

 

――ツノダではどんな仕事をされていたんですか?

裕美さん:パートのときはラジオペンチを検品したり手直ししたりっていうのだったので。ニッパーは作ったことなかったんですけど、刃を研いだり検品したりするのも好きだし、いいかなって。

 

ある日、できなかったことができるようになる瞬間がある。

――では作り方はゴッドハンドに入社してから学んでいったんですね。

裕美さん:そこまでガッツリ教えられたって記憶はないですね。こんな感じに仕上げて、みたいな(笑)。なので最初は全然できなくて。でも誘ってくれたってことはそれだけの能力があると思ってくれてるんだなって期待に応えたい気持ちもあったので。

 

角田さん:能力っていうよりも、やりきる力とか絶対できるようになるだろうっていう確信みたいのがありました。実際になりましたし。

 

――どのくらいでできるようになるんですか?

裕美さん:最初の1年は全然できなくて本当にしんどかったですね。完成形のイメージはできているんだけど、その通りに自分の手が動かなくて削れないんですね。悔しくて地団太踏みながら毎日夜中まで作業してました(笑)

 

――その積み重ねで徐々に上達していくんですね。

裕美さん:やっと一応かたちにできるかなって思えるまでには3年くらいかかりました。徐々にと言うか、結構ある日突然って感じでしたね。なんかふっと目覚める瞬間があって、「あぁ、こういうことね」みたいな感覚が身体の中にできるんですね。

 

角田さん:そうだね。なんか階段を一段ポンッてのぼるイメージ。階段は百段くらいあるんですけど、ふっと登れる瞬間があるんですね。

 

――なんかプロアスリートのお話を聞いているみたい。

角田さん:もしかしたらそういう感覚に近いのかもしれないですね。裕美が作れるようになってきて、さらに人を増やすタイミングで、製造をメインで行う極株式会社を設立することにしました。

 

裕美さん:今度は教える立場になって、それはそれで大変でした(笑)。職人を育てるのは3年くらいを目安にしています。本気で頑張ってるような子は2年くらいでやっとスタートライン立てるくらいかな。

 

角田さん:極で作ったものをゴッドハンドで売るような流れですね。今は各ECショップでの販売と、国内外の営業の事業部を作ってそこが専属で販売にまわっています。

 

――海外にも展開されているんですね。

角田さん:今、全世界で毎月8,000本くらい販売しています。ありがたいことに海外にもファンの方がいて、この前は手書きの手紙がきたので、僕も手書きで返信しました。

 

社員や商品の生きざまを、ストーリー仕立てで伝えていきたい。

――今後の展開として何か見据えているものはありますか?

角田さん:今はまだ漠然としたイメージなんですけど、中で働いている人や商品にスポットライトを当てながらなにかできたらと思っています。いろんな人や商品の生きざまをストーリー仕立てにして紹介できたらなって。あとはお客様がゴッドハンドの商品を使った瞬間に感動するような、そんなものをこれからも提供し続けていきたいですね。それが私たちの使命で、それで喜んでいただければ嬉しいです。これはお客様にも伝えたいですし、うちの社員にも伝えていきたいですね。僕ら作り手は、謙虚でいながら、誇りを持って仕事していきたいです。

 

――裕美さんはいかがですか?

裕美さん:とにかくまだまだ職人の数が全然足りていないので。各セクションで私と同じくらいできる職人がもっともっとほしいです。でもそれ育てるのにどのくらいかかるんだろうって思いますけど(笑)

 

角田さん:基本、毎年10人採用していいことにしているんですよ。なかなかできないですけどね。アルティメットニッパーだけじゃないので。ゴッドハンドらしい商品て何なのって突き詰めていくと、やっぱ手間のかかる商品になってしまうんですね。

 

裕美さん:あと女性社員もほしいです(笑)。やっぱりモノづくりってなると男の人がやってるイメージが強いから、女性でも全然できるんだよっていうのを伝えていきたいです。女性の社員が増えれば女性の購入者や興味を持ってくれる人も増えるのかなと思って。女性と男性で感覚が違うところはあるから。

 

角田さん:実際、今、女性社員も4名いますし。16名中4名なので結構増えてきていますね。チャレンジしたい女性がいたらぜひ!

 

 

ゴッドハンド株式会社

新潟県燕市物流センタ-2-34

0256-64-8900

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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