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僕らの工場。#35 業務用レベルの調理器具「株式会社本間製作所」。

「株式会社本間製作所」のブランド「仔犬印」は、調理器具として高級ホテルやレストランで長年愛用されていて、全国の料理のプロフェッショナルから多くの信頼を得ています。今回はモダンでシンプルなデザインを提案する同社代表取締役の本間さんとWEB担当の小片さんに、商品開発への想いなどいろいろお話を聞いてきました。

 

株式会社本間製作所

本間一成 Kazunari Honma

1970年燕市生まれ。株式会社本間製作所3代目代表取締役。東京の大学を卒業後、大手時計会社で5年間勤務。その後ファッション関係の輸入販売会社に2年勤め、33歳のときに本間製作所の代表取締役に就任。趣味はワイン、食べること。

 

株式会社本間製作所

小片 昇 Noboru Ogata

1978年東京都世田谷区生まれ。株式会社本間製作所のWEB担当。趣味もWEB関係で、YouTubeチャンネルも持っている。

 

将来、家を継ぐために。今なにをするべきかを考えて生きてきた。

――本日はよろしくお願いします。まずは本間製作所の創業から教えてください。

本間さん:今年で70周年になります。創業当初はスクラップのような金属を回収する会社から始まったと聞いています。そこから自社設備を少しずつ入れて物を製造するようになりました。加工する素材も最初は鉄で、それから時代を経てステンレスに変わっていきました。

 

――本間さんは小さい頃から家業を継ぐつもりでいたんですか?

本間さん:私が物心ついた頃にはもう、会社はステンレスの調理道具を作っているようなメーカーになっていて、子どもの頃から継ぐもんだっていうふうに言い聞かされて育ってきたので(笑)

 

――でもどこか別の会社にお勤めもされていたんですよね?

本間さん:最初から家業を継ぐつもりでいたので、まずはどこか別の業界を知って自分なりに勉強をして、それからのタイミングで戻ろうっていうのは考えて動いていました。商品を海外に販売するのは大事だと思っていたのと、時計がすごく好きだったので、大手時計会社へ入社したんです。OEMの輸出が流行っていた時期で、運良く輸出関係の部署にも入ることができ、ドイツ、イギリス、イタリアを担当させてもらいました。

 

――時計の世界はいかがでしたか?

本間さん:分野は違いますけど、時計のモノづくりっていうところを学べたのは良かったですね。デザインだったり他のブランドとの差別化についてきちんと考えて製造販売しないといけないっていうことを学べました。それでこの会社に入ったわけですけど、ただ現実はまたちょっと違いましたね。そのときの会社の状況に合わせながらじゃないと何もできなくて、自分の考えていたような進み具合では進まなかったです。

 

厳しい経営状況の中で、まずは自社の強みを見つめなおした。

――というと、会社は厳しい状況だったんですか?

本間さん:戻ってきたのが1999年頃で、中国の安価な商品に市場を取られていたような状況でした。会社がこんな状況になるまでどうしてほっといたんだってかなり頭にきましたね。もっと安く作るのか、それとも他と差別化できる何かを探るのかっていうところが全部中途半端で、途方にくれたのを覚えています。

 

――そんな中、本間さんはまずはどんなことから始めたんですか?

本間さん:まずは「自社の強みは何か」っていうのをとにかく探しました。うちの強みは自社で金型を作っているところで、差別化はここしかないと思いました。類似商品がいっぱい作っているところがあっても、それを早く改良していくことができるし、そこをポイントにして力のある販売先にお願いしていこうっていう方針を取りました。とはいっても、それでも周りの状況に合わせながらなんとか会社を維持していくっていう方が強かったかもしれないですね。外装を変えたりデザインに特化していくっていうのは、ほんとここ数年の話です。ちなみにこのシフトチェンジのタイミングでちょうど小片と会ったんですよ。

 

――小片さんが参加したきっかけは?

小片さん:入社が2020年の2月です。私は東京の出身でずっと東京にいたのですが、2015年に息子が生まれるタイミングで、妻の実家がある三条市に移住しました。最初はほとんど東京の仕事しかしていなかったんですけど、こっちでも徐々にご縁をいただくことが増えてきました。私の妻がよく通っていた子ども服屋さんが通販サイトを運営していて、そのサイトを見たときにもっと良くできそうだなと思ったんですね、それで私のほうからサイトのリニューアルの提案をさせていただきました。そのサイトが本間社長の目にとまり、お声がけいただいたことがきっかけです。

 

通販サイトの立ち上げ前に、何か仕掛けが必要。

――小片さんが入社してからどんな変化が?

小片さん:本間社長が「これからB to Cを行っていきたい」と仰っていたので、公式通販サイトの立ち上げに着手しました。でもただ立ち上げてもいきなり注文が入ることはないと思ったので、その手前で何か仕掛けましょうというお話しをして、そこで利用したのがMakuake(マクアケ)でした。Makuakeで新製品を売っているあいだに新しい公式通販サイトをオープンさせ、Makuakeのお客さまと一緒にオープンを迎えるというストーリーで進めました。

 

――新製品開発についてもお話を聞かせてください。どんなことをコンセプトに、新しい商品を作ったのでしょうか。

小片さん:なによりも機能性ですね。例えば2020年に一回目のプロジェクトで出したのはザルとボウルのセットなんですけど、ザルとかボウルって質を考えなければ100円ショップでも手に入る商品ですよね。でもそうじゃなくて、安く買って何回も買い換えるより、良いモノを買って長く使ってもらいたいという想いで提案させてもらいました。実際触ってもらうと分かるんですけど、ザルの強度もなかなか手にしたことがないような仕様になっています。

 

――本当だ。ふかふかしていないですね。

本間さん:これは弊社が業務用製品を作る中で培って積み重ねてきた要素や技術を組み合わせて出来上がった商品ですね。

 

小片さん:最大の特徴としては「フラットエッジ」といって、フチの部分が巻かれていないところです。通常のボウルはフチを巻いているので、そこに水がたまりやすく不衛生になりやすいんです。フラットエッジでは水がたまることはないので、そこは特に好評だった部分ですね。

 

本間さん:ボウルは元々製品としてはあったんですが、このプロジェクトのために一からメッシュボウルを作りあげました。メッシュボウルとフラットエッジを組み合わせるっていう発想はなかなか出てきにくいんです。なぜかというと金型代を作るコストがかかりますし、製作の工程数も3倍近くに増えます。金型の試作も何個も作りましたし、作り上げるまでも苦労はたくさんありました。

 

売れ行き好調の中、妥協できずに商品をすべて買い戻す事態が。

――本当に良いモノを作るには、やっぱり技術に加えてコストと手間がかかってくるわけですね。

小片さん:一度製品として仕上げたものをMakuakeに出して、それは売れ行きも良かったんですけど、代表が少し気になる部分を見つけたので出荷前に代表自ら買い取って、金型と工程を増やして作り直すなんてこともありました。

 

――そんなに細かい部分が気になったんですか?

本間さん:ここの引っ掛かり具合が気になりました。ここ触っていただけますか? こういう隙間があるとここに細かいものが引っ掛かってしまうことがあるんです。「プロが使える業務用レベルを家庭でも」っていうコンセプトで進めたかったので、こういうところを本当にこだわっていかないと差別化できないんじゃないかと思ったんです。

 

 

小片さん:初回のサイズは18cmだったんですけど、もう少し大きいサイズや小さいサイズも欲しいという声が上がったので、15cmと21cmを同時に出してこのサイズ展開を第2弾として販売しました。細かい部分にまでこだわって改良を重ねた結果、第1弾も第2弾も目標を大幅に達成する結果となりました。

 

――その後の第3弾はどんなものだったんですか?

小片さん:第3弾がいちばんヒットしました。当社は業務用の給食缶をずっと作ってきているんですけど、それを家庭用サイズにデフォルメしたんです。発端としては取引先の社長さんの「社員に豚汁を振る舞うときに使える、おすそ分け容器が欲しい」っていうご要望からだったんです。タッパーはプラスチックなのでベタベタするし匂いも取れづらいけれど、ステンレスならそれらを解消できるからおすそ分け容器の代案として製品化しようと。。直火もIHも対応していて、元々の給食缶の機能をすべて兼ね備えた”ありそうでない”製品を作ったわけですね。

 

本間さん:仔犬印の調理器具は機能性に特化した”道具”なので、デザイン的にはどうしても簡素で素っ気ないものになってしまいます。そこで第3弾”給食缶ミニ”は出来る限りおもちゃっぽく可愛らしい、思わず手に取ってみたくなるよう真逆の発想でデザインしました。ミニチュアな見た目ながら調理から保存、温めと、本来のプロ仕様を全てこのサイズに盛り込むという、ある意味では弊社で初めて二兎を追った商品だったと思います。

 

長年親しまれてきた雪平鍋のグレードアップに挑戦。

――そして今回が第4弾になるわけですよね。

小片さん:弊社は調理器具メーカーなので鍋を押し出していかなければいけないなっていうところで、今回は行平鍋を改めて考え直した商品になっています。既存の行平鍋をグレードアップさせて、品質や堅牢感みたいなところを再構築したイメージです。この商品はステンレス、アルミ、ステンレスっていう3層構造になっています。メリットは熱伝導率がよく、熱がまんべんなくいきわたることです。さらに厚みもあってステンレスでサンドされているので蓄熱性も高いです。

 

本間さん:熱の均一性が良いと料理が焦げ付かずとても煮込み料理に適しているんです。あとはこの3層構造でこの口出しを作るっていうのは高度な技術が必要になってくるので、技術面のアピールも訴求ポイントになっています。違う材質を重ねて曲げているのでそれぞれの素材で曲がり方も違ってきます。そこを計算しつくした上で加工しないとうまくできないんですね。中側はミラー仕上げで洗いやすく水垢も残りにくい加工にして、外側は傷が付きづらい艶消し加工を施しています。

 

小片さん:5/30までMakuakeで先行販売でお得に購入できるので、是非チェックしてみて下さい。

 

 

――これから目指すことは?

本間さん:創業以来ずっと業務用の限られた市場で商売をしてきたので、仔犬印というブランドがまだまだ認知されていないと思っています。とにかく仔犬印というブランドをひとりでも多くの人に知ってもらって商品を使ってもらいたいです。

 

小片さん:WEBを通してお客様とのコミニケーションを大切にしていきたいですね。お客様の意見を大切にすると同時に、それを商品にさらに落とし込んでいきたいと思っています。

 

 

 

株式会社本間製作所

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