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自社農場の米粉でつくる、「ごぱん屋カフェCOME&CO.」のもっちりパン。

自社農場の「おおた農場」で栽培したコシヒカリを使った米粉パンをメインに、カフェベーカリーとして営業する「ごぱん屋カフェCOME&CO.」。実は春と秋の2回、お店を1ヶ月ほど休業するんです。思い切ったカフェ休業は、美味しいお米をつくるため。このスタイルに辿り着くまでには様々な試行錯誤や想いがあったのだとか。オーナーの太田さんにパンづくりとお店のこだわり、農家としての働き方について尋ねてきました。

 

ごぱん屋カフェCOME&CO.

太田 和枝 Kazue Ota

1967年上越市生まれ。高校卒業後、会社員を経験して30歳でご主人とともに家業である農家に転身。稲作農家の傍ら、2017年に「ごぱん屋カフェCOME&CO.」をオープン。休日は仕事を兼ねたカフェやパン屋巡りが趣味。

米粉パンと地産地消のランチのお店。

――「ごぱん屋カフェCOME&CO.」さんのパンは、自社農場の米粉をつかっているんですよね。

太田さん:うちはお米農家ですからね。パンやお菓子に使用している米粉はすべてうちの「おおた農場」で栽培しているコシヒカリです。ふんわりもっちりした食感が特徴なんですよ。

 

 

――パンと焼き菓子は常時何種類くらい店頭に並びますか?

太田さん:平日は20~30種類、休日や祝日は40~50種類焼いています。看板商品は全5種類のおにぎりパンです。おにぎりの形にちなんで、具材も野沢菜やきんぴらなど、和風にしているのが特徴です。

 

――米粉以外の具材やランチの野菜にも地元のものが使用されているんですよね?

太田さん:基本的に野菜も近所の農家さんから仕入れているので、新潟のもの、地域のものが中心ですね。

 

 

――カフェメニューではワンプレートランチやカレーもあるんですね。ピザをいただきましたが、とても大きくて驚きました。

太田さん:案外ぺろっと食べられますよね(笑)。ピザも米粉でつくっているので、薄いけどもちっとしたした食感に仕上げています。トマトソースは廃棄される予定になっていたトマトをまとめて引き取って、ソースづくりに使っています。

 

米粉の勉強を通し、ケーキからパンづくりへ。

――太田さんがカフェベーカリーをオープンすることになったきっかけは?

太田さん:おおた農場のお米を知って、「お米をもっと皆さんに食べてほしい」というのがお店をはじめた動機ですが、きっかけになったのは農業普及指導センターが主催する勉強会への参加です。15年くらい前、新潟県でも米粉を普及させるために女性農業者を集めて米粉の勉強会が開かれたんです。

 

――そこでパンやケーキのつくり方を教わったのですね。

太田さん:お菓子やお団子、ほかには餃子とか。いろいろな料理を教わりました。もともとお菓子をつくるのは好きだったので、米粉でもできるなら自社の米でやってみようと。

 

 

――カフェの運営経験がない中で、実際にお店を出す決断をするのは勇気がいりませんでしたか?

太田さん:最初は本当に趣味程度というか、農業仲間でやっていた料理教室の幅を広げたくて米粉料理を取り入れたんです。それからマルシェに出るようになり、4~5年くらいはいろんなところで出店していました。実は、最初はお店を持つつもりは全然なかったんですよ。最初のマルシェに出るときも、食品衛生許可ってすぐ簡単に取れるものだと思っていました。「厨房の図面を出してください」って言われて驚いたのを覚えています。既にマルシェの出店自体は決まっていたのに、市の施設で借りる間借りの厨房では営業許可が取れなくて……。

 

――え、どうなったんですか?

太田さん:本当にたまたま、おおた農場の事務所の横に給湯室をつくったタイミングだったんです。そこに手洗い水栓をつければ営業許可が下りることに気づいて、慌てて手洗い水栓をつけて営業許可を取りました。営業許可は一度取ると5年間有効ということもそのときに知って、だったらもう少し真面目にやってみようかなって想いが自分のなかに芽生えました。その後、いろんな勉強会で人に会うたびに、「そろそろ店舗を持つことを考えたら?」とか「このままだと趣味で終わっちゃうよ」とか、助言をいただくことが多くて、徐々にお店を持つ決意が固まりしました。

 

パン好きの人にも、お米を美味しく食べてほしいから。

――太田さんは米粉を使ったお菓子づくりもされていたと思うんですが、店舗のメインがパンになったのはなぜでしょうか。

太田さん:おおた農場のお米をたくさん使いたいんです。米不足が嘆かれていますけど、お米を食べる人は減っています。その中で米粉パンなら、パン派の人にもうちのお米を届けられます。お米の美味しさとパンの手軽さを両方楽しめるのがいいなと思っています。

 

――米粉パンと聞くと、グルテンフリーをイメージされることが多いですが、ここもコンセプトにあるんですか?

太田さん:よくお問合せをいただきますが、うちのパンはグルテンフリーではありません。グルテンがまったく入っていないと固くなりやすいので、米粉82%のグルテン18%でつくっています。ただ、焼き菓子などはグルテンフリーですし、パンは受注販売でグルテンフリーのものもつくっています。特定の方だけじゃなくて、幅広い世代・年代・嗜好の方にとって食べやすいものを出したいと思っています。

 

 

――ほかに、お店のこだわりはありますか?

太田さん:うちは農業もやっているので田植え時期と稲刈りの時期、それぞれ1か月間程度お休みをいただいています。このお休みの長さはお客様に申し訳ないと思ってはいるんですが、その時期はお店のスタッフも米づくりがあるので、数年前からちゃんと休むようにしました。

 

――休むってことを決めるのも勇気がいりますよね。

太田さん:オープン当初、予想以上にお客さんが来てくれたんです。でもまだ作業に慣れていないから朝2時くらいにお店に来て、パンをつくって焼いて、オープンくらいにスタッフにバトンタッチして農場に戻って米仕事をして、またお店に戻ってパン焼いて、家帰って夕飯つくって、戻って仕込みして……こういうのを1年間続けていました。

 

――それは想像するだけで大変ですね……。

 

 

太田さん:当たり前なんですが、そうすると家庭内がちょっとぎくしゃくしてしまうんですよね。私も主人も忙しくて、うまく回らなくなって。これはまずい、よくないぞってことで、「田植え休み」と「稲刈り休み」をしっかり取るようにしました。商売なので、売り上げや利益を上げることはもちろん大事なんですが「無理しない」こともすごく重要だと考えています。そうじゃないと続けられないんです。

 

――自社のお米をだからこその方針ですよね。毎年秋になると新米が楽しみなので、同じように「ごぱん屋カフェCOME&CO.」さんの営業再開が楽しみになりますね。

太田さん:ありがたいことに、最近では時期になるとお客さんから「いつから休みに入る?その前に買いに行きたいんだけど」って問合せをもらうことも多くなって、このスタイルが確立されつつあります。休むのがもったいないと悔しく思うこともありますが、この時期だけは農業に集中すると決めました。またこの秋に、美味しい新米で米粉パンが届けられるように稲刈りもがんばってきます。

 

 

 

ごぱん屋カフェCOME&CO.

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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