南魚沼市にある「魚沼の里」には、新潟を代表する日本酒「八海山」の酒蔵や雪室の貯蔵施設、ビール醸造所などたくさんの見学・観光スポットがあります。そのひとつ「八海山みんなの社員食堂」では、お酒造りに関わる皆さんが実際に利用している社員食堂を一般解放しているんです。今回は店舗リーダーの田中さんに、ここでしか味わえない料理の秘密について、いろいろとお話を聞いてきました。
八海山みんなの社員食堂
田中 弥生 Yayoi Tanaka
1983年南魚沼市生まれ。高校卒業後、湯沢町の旅館などで働き、2014年に「八海山みんなの社員食堂」を運営する「株式会社魚沼新潟物産」に入社。2匹の愛猫と暮らしている。
——こちらは「八海山」で働く皆さんの社員食堂でもあり、一般利用もできるお店なんですよね。
田中さん:本社の3階にあった社員食堂を移転して、2014年に一般開放しました。従業員は好きなものを選べるバイキングみたいなかたちで、一般のお客さまには日替わりと3ヶ月ごとに変わる期間限定メニューをご提供しています。社員がいるとは思わず、たまにびっくりされる方もいらっしゃいます(笑)
——「魚沼の里」の他のお店には何度かお邪魔したことがあるんですけど、「八海山みんなの社員食堂」にははじめて伺いました。
田中さん:「魚沼の里」は、「八海山みんなの社員食堂」や「猿倉山ビール醸造所」「八海山雪室」など14の施設で構成されています。2004年に「八海醸造 第二浩和蔵」という酒蔵が完成し、それから徐々にいろいろなお店がオープンしました。一部はテナントさんに入っていただいていますが、全体の運営は「八海山」の製造会社である「八海醸造」が行っているんです。
——「八海山みんなの社員食堂」は、どんなきっかけでスタートしたんですか?
田中さん:「八海醸造」では、同じ釜の飯を食べる文化を大切にしてきました。良いお酒を造るために、みんなでひとつの場所で食事をする習慣があったんですね。お酒造りにはいろいろなセクションがあって、それぞれ別々に作業をしています。社員食堂はそのみんながコミュニケーションを取る大切な場でもあったんです。それを一般の皆さんにも味わっていただこうということで、オープンしました。
——「八海山」にちなんだお料理が食べられるんですか?
田中さん:酒蔵ならではのお料理を提供したいと思っています。料理で使うお酒はもちろん「八海山」の日本酒ですし、塩麹、醤油麹、みりんなども「八海山」で培った技術で造られた麹を使って作られたものです。お味噌は蔵人が作ってくれる自家製品ですよ。麹をふんだんに使った、ここでしか味わえないお料理を目指しています。
——サービスで甘酒をいただけるそうですね。
田中さん:「八海醸造」の「麹だけでつくったあまさけ」をベースに、ゆず果汁をブレンドしています。柑橘系が入ると飲みやすいですよね。「麹だけでつくったあまさけ」は、「魚沼の里」の別の店舗で購入できるので、ここで食事をして「美味しかった」で終わらず、ぜひ敷地全体をまわっていただけるといいなと思っています。ゆず果汁入りの甘酒として販売しているわけではないので、これも「ここだけの味」です。皆さんには、「麹だけでつくったあまさけ」を使っていろいろなアレンジを楽しんでもらいたいですね。
——先ほどご馳走になった「豚ロースの酒粕味噌焼き」、めちゃくちゃいい香りがしました。
田中さん:それはよかったです(笑)。香りの良さは、「八海山」の酒粕を使っているからだと思います。「八海山」を造る工程では、お米とお酒の旨味を残した酒粕がたっぷり出るんです。その分、日本酒の量は多く造れないんですけど、風味豊かな酒粕ができあがるんです。
——お野菜も地元のものを使っているんですか?
田中さん:なるべく地産地消を意識して、地元で採れる季節の素材を使うようにしています。副菜などもすべて手作りですし、お砂糖やアミノ酸は極力使わず、シンプルに麹の味を生かした食事作りをしています。
——他にこのお店ならではの魅力はありますか?
田中さん:ロケーションですかね。敷地内に季節のお花がたくさん咲いてきれいですよ。あと冬は、隣の酒蔵から上がる蒸気がとても幻想的なんです。晴れた日の雪景色にとても映えて美しいので、ぜひ見に来ていただきたいですね。
——ちなみに一般利用のお客さんってどれくらいいらっしゃるんですか?
田中さん:平日は70〜80人くらいかな。ゴールデンウィークやお盆などのトップシーズンは300名ほどいらっしゃいますよ。
——加えて社員の方のお食事を用意されるとはすごい。
田中さん:酒造りは体力勝負なので、美味しいご飯を食べて午後からの活力にしてもらいたいと思っています。酒造りは冬が忙しいんですよね。この時期は出勤日も増えるし、泊まり仕事の方もいらっしゃいます。蔵人のためにお昼だけじゃなくて、朝食と夕飯も用意するんです。
——以前は、地元のお母さんが調理を担当されていたそうですね。
田中さん:ここに移ってからも、お母さん方が大活躍されていましたよ。退職された方も多いですけど、私がここに入社した頃は、年上の方ばかりでした。私、地元の料理をあまり知らなかったので、皆さんに教えていただいたんです。まだまだ勉強中ですけど、そうして今があると思っています。
——市外、県外からのお客さんがびっくりした「ここらの」メニューってありますか?
田中さん:今の季節だったら、里芋を味噌で煮たもの、大根と車麩を煮たもの、大根の皮のきんぴらなどは、県外の方に新鮮に映るようです。そういう地元の味を味わっていただきたいですし、私たちも大切にしたいと思っています。
——ご飯は南魚沼米なんですよね。美味しかった〜。
田中さん:精米したての地元の美味しいお米ですよ。「八海山」の仕込み水と同じお水で炊いています。「魚沼の里」一帯には、「八海山」の仕込み水と同じものが流れているんです。
——水が違うとお米の味が変わるって聞いたことがあります。
田中さん:毎日このご飯を食べているから、私にはもう当たり前の味かもしれません(笑)。でもちょうど昨日東京に出張に行って、改めて「南魚沼のお米は美味しいんだな」って感じましたね。味も香りもぜんぜん違いますよね。
——最後に「八海山みんなの社員食堂」で働くやりがいを教えてください。
田中さん:私たちは実際の酒造りには携わっていませんけど、高品質なお酒を造るメンバーの一員だと思って、ひとつひとつ丁寧に料理をしています。蔵人が心を込めてお酒を造るのと同じように。その気持ちを忘れず、丁寧に料理をする。それをずっと続けていきたいと思います。
八海山みんなの社員食堂
南魚沼市長森334-2
営業時間/ 11:00~15:00※限定数に達し次第終了