ぬか釜で炊いたご飯とステーキのコラボを楽しめる「百一膳」。
食べる
2022.05.03
新鮮な魚介をはじめ、肉や野菜、乳製品、地酒などなど……新潟県内の美味しいものがいろいろと集まっている「ピアBandai」。そのなかに「ぬか釜ステーキ丼専門店 百一膳(ひゃくいちぜん)」という、とっても気になるお店がオープンしました。「ぬか釜ステーキ丼」って何だろう? とても気になったので「百一膳」のオーナーで、上越でも飲食店を経営している赤田さんを訪ねて「ピアBandai」に行ってきました。


ぬか釜ステーキ丼専門店 百一膳
赤田 晴樹 Haruki Akada
1973年上越市生まれ。長野県のホテルや上越市キューピットバレイにある温泉旅館で和食の料理人修業を積む。魚屋や洋食レストランを経て、2003年に上越で「ごっつお屋 とくっと」をオープンし、続けて大潟地区に2号店も展開。2022年4月より新潟市のピアBandaiで「ぬか釜ステーキ丼専門店 百一膳」をオープンする。
料理だけではなく、人間として大事なことを教わった和食修業。
——オープンおめでとうございます。赤田さんは「百一膳」の他にもお店を経営しているんですよね。
赤田さん:はい。上越でも「ごっつお屋 とくっと」という創作和食の店を経営しています。
——いつから和食の料理人をやってきたんですか?
赤田さん:実をいうと小学生の頃は真っ白なコック帽に憧れて、洋食の料理人になるのが夢だったんです。
——へ〜、それがどうして和食の道に?
赤田さん:洋食をやるつもりで長野にあるホテルに入社したんですが、そこで和食の部署を勧められたんです。働きはじめてみたらとにかく厳しい世界で、返事は「はい」か「わかりました」しか許されませんでしたね(笑)。でも頑張ったおかげで親方や先輩に気に入られたことで、料理のノウハウをいろいろと教えてもらえましたよ。今では洋食より和食の道に進んでよかったと思っています。
——和食の道に進んでよかったというのは、どういうことですか?
赤田さん:和食の職人はいろいろとつぶしが効くんですよ。和食から洋食に行く人はいるけど、洋食から和食に行く人はほとんどいないじゃないですか。
——言われてみるとそうですね。
赤田さん:次に勤めたのは地元のキューピットバレイにある温泉施設でした。そこで出会った親方からは、山菜料理を教えてもらいましたね。僕もまだ若かったから、最初は「山菜なんて……」とバカにしていたんです。でも親方から「あと10年もしたら、採る人間がいなくなって山菜は宝物になる」って言われたので、渋々やっているうちにすっかり山菜料理にハマってしまいました。

——山菜のどこに魅力を感じたんですか?
赤田さん:クセがある山菜でも他の食材と上手に組み合わせることで、立派な料理に変わるところが面白かったですね。最初は山菜の見分け方もよくわかっていなかったので、山菜を採って親方の元に行くと「お前が大切そうに抱えてきたのは、みんなただの草だ」って言われたりしました(笑)。親方には山菜の採り方をはじめ、保存の仕方、使い方、すべてを教えてもらったんです。
——じゃあとてもいい修業になったんですね。
赤田さん:はい。山菜のことだけじゃなくて、人として大切なこともたくさん教えてもらいました。料理主任になった僕が上からの態度でパートのおばちゃんたちに仕事を指示していたら、それを見た親方からすごく叱られたんです。敬意を持って人と接する大切さを教えられましたね。
——料理以外にも教わることは多かったんですね。
赤田さん:そうなんですよ。僕がお店で失敗をしてしまったときは、お休みだった親方がタクシーで飛んできてお客様にお詫びしてくれました。そのとき「お前は一生懸命やったのか?」って聞かれたから「一生懸命やりました」と答えたら、まったく叱られなかったんです。料理人としてだけじゃなくて、ひとりの人間としても尊敬できる親方でしたね。

お店のピンチを救った「ぬか釜ステーキ丼」。
——独立したのはいつ頃なんですか?
赤田さん:2003年3月に上越市で「ごっつお屋 とくっと」をオープンしました。山のなかにあるお店なのにものすごく繁盛したんですよ。勢いづいた僕はすっかり天狗になってしまって、最初の借金も返し終わらないままさらに借金をして、2年目に入ってからお店の改装工事をやったんです。そしたら3年目に入ってお客様の数が半分に減っちゃったんですよ。
——大ピンチじゃないですか。
赤田さん:そうなんですよ。いよいよヤバいというときに、大潟地区に出店してみないかという話が舞い込んできたんです。渡りに船とばかりに大潟で2号店をオープンすることになりました。今度こそ同じ失敗は繰り返さないようにしようと、ふんどしを締めて営業していたにも関わらず、やっぱり3年目に入ってから売り上げがまったく上がらない状況に陥ってしまったんです。
——3年目のジンクス……。
赤田さん:ただ、大潟店では本店の失敗を教訓に、いろいろ手を打つことができたんです。そのなかで誕生したのが「ステーキ丼」だったんですよ。

——この「ステーキ丼」は、どんないきさつで生まれたメニューなんですか?
赤田さん:ランチの売り上げが落ちてきたので、起死回生を図ろうと新メニューを考えていたんです。どこのお店でも産地や銘柄にはこだわるから、今さら新潟産コシヒカリを使うだけでは他と一緒になっちゃうんですよね。そんなときに実家の母が「お米は電気釜よりガス釜で炊いた方が美味しい」と言っているのを聞いたんです。それをヒントに「釜にこだわる」ことを思いつきました。
——それで「ぬか釜」。
赤田さん:僕はお店のインテリアを兼ねて、古い民具を集めていたんです。そのなかにぬか釜があったんです。試しにお米を炊いてみたら見事な「めっこ飯」が炊き上がって大失敗、調整して再度挑戦してみたんだけど今度は真っ黒焦げで大失敗でした。でも試行錯誤を重ねていくうちに、美味しいご飯が炊けるようになったんです。

——ぬか釜って使いこなすのが難しそうですね。
赤田さん:めちゃめちゃ手間がかかりますね。おかげで最初はスタッフから総ブーイングを喰らいました(笑)。「ただの飯にそこまで手間をかける必要があるんですか?」って聞かれたので「ただの飯だっけこだわるんだねっか」と言って、自分の考えを押し通したんです(笑)
——そこまでこだわるぬか釜には、どんな魅力があるんでしょうか?
赤田さん:炊いたお米が美味しいのはもちろん、ぬか釜って昔の人の知恵が詰まった万能器具なんですよ。燃料に使っているお米の籾殻は、使い終わったら「くん炭」として田んぼの肥料になるんです。まさにSDGsですよね(笑)。水さえあればお米が炊けるし、暖も取れてお湯も沸かせるし、照明としても使えるから災害時にも役立つんですよ。
——へ〜。昔の道具って、手間はかかるけど無駄がないんですよね。
赤田さん:本当にそうですよね。世の中が便利になりすぎて、昔の道具のよさがわかりにくくなっているんですよ。ぬか釜のよさを伝えることは、子どもたちの食育にもつながるんじゃないかと思うんです。

ぬか釜の素晴らしさを伝えていきたい。
——ピアBandaiに「百一膳」をオープンしたのは、どういういきさつがあるんですか?
赤田さん:おかげさまで「ステーキ丼」は「ごっつお屋 とっとこ」の看板メニューとして評判になりました。お客様から「新潟でもお店を出さないか」という声も聞かれるようになったんです。そこでピアBandaiのテナント募集に応募して、このたびプレゼンが通ったので出店できることになりました。

——「百一膳」をオープンしてみて、反響はいかがでしたか?
赤田さん:オープン初日は全然お客様が来なかったですね(笑)。告知の仕方も悪かったんだと思うんだけど、みんな「何の店だろう」って遠くから様子を見ている感じでした。今はテレビでも紹介されたおかげで、少しずつ認知されてお客様も増えてきましたね。1日に280食出た日もありました。
——それはすごいですね。ぬか釜で炊いたご飯って、他ではなかなか食べられないですからね。
赤田さん:ぬか釜でご飯を炊くのは時代に逆行して手間がかかりますけど、だからこそ誰でも使えるものじゃないし、どこでも食べられるご飯じゃないと思うんです。今後はぬか釜で炊いたご飯と旬の食材を使った限定メニューをいろいろと提供しながら、ぬか釜の素晴らしさを伝えていけたらいいですね。

ぬか釜ステーキ丼専門店 百一膳
新潟市中央区万代島2-12 ピアBandai内
025-250-0760
10:45-19:00
火曜休
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