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両親がはじめた行列店を守り続ける「岩瀬の清水そば」2代目店主。

阿賀野市にある「岩瀬の清水そば」は、遠方からもたくさんの蕎麦好きが訪れる人気のお店。名水として知られている「岩瀬の清水」と、西会津産の自家製粉した蕎麦粉を使用した、風味豊かな蕎麦を楽しむことができます。今回は2代目店主の羽賀さんに、お店のこだわりや接客業についての思いなどいろいろとお話を聞いてきました。

 

岩瀬の清水そば

羽賀 博人 Hirohito Haga

1977年阿賀野市(旧水原町)生まれ。「岩瀬の清水そば」2代目店主。若い頃から10年以上建設業などを経験し、2001年に家業に入る。蕎麦作りだけではなくマーケティングなど飲食業を経営するために必要な知識を学んできた努力家。

 

技術一本の業界から飲食業へ。今だからわかる両親の偉大さ。

——「岩瀬の清水そば」は、羽賀さんのご両親がはじめたお店だとお聞きしました。羽賀さんはどんな経緯でお店へ?

羽賀さん:この店は1994年に両親がはじめました。僕は中学を卒業してから10年くらい建設や製造の仕事をしていたんです。鳶をしたり、鉄工所に勤めたり。家を建てるノウハウがあるくらい、いろいろな現場の仕事をしてきました。でも、両親から「店を手伝って欲しい」と言われて、2001年に家業に入ることにしたんです。

 

——どこかで蕎麦の修行をされたんですか?

羽賀さん:修行へは行かずに、最初からこの店で蕎麦作りの勉強をしました。ところが、僕が店に入って1年半ほどして父親が51歳の若さで亡くなってしまったんです。だから父から蕎麦打ちを教えてもらったというよりは、父のやり方を真似て蕎麦作りをしてきました。幸い「かえし」のレシピは残っていましたし、両親の味を引き継ぐことができたと思っています。両親は、店をやっていた頃は年に10日も休んでいなかったと思います。一生懸命働いて、この店を波に乗せてくれたんですよね。今も当時からのお客さまがたくさん来てくださるんですよ。

 

——羽賀さんは建設業から飲食の世界に入られたんですよね。戸惑いなどありませんでしたか?

羽賀さん:この店に入るまでは「技術一本の世界」にいたので、人前で笑うことができませんでした(笑)。最初の頃は、お客さまに「ありがとうございました」と言うこともできないくらい人見知りで、「話しかけるなオーラ」全開だったと思います。今振り返っても、とても接客業で働けるタイプではなかったですね。

 

 

——羽賀さんご自身の変化のきっかけになったことは?

羽賀さん:知り合いの建築士さんがお店に来たとき、僕に「兄ちゃん、愛想悪いよ」って言ったんです。それが恥ずかしくて、僕、茹でだこみたいに耳まで真っ赤になったことを覚えています。優しい言い方だったけど、心にグサっと響きました。そのときに「今のままではダメだ」って思いましたね。それからは、マーケティング、接客サービス、電話応対、クレーム対応、マネジメント、経営などのセミナーに積極的に参加して、いろいろと勉強しました。自分が変わると、まわりもみるみる変わっていって、それがとても嬉しかったですね。

 

——まわりに影響を与えるくらい必死に努力されたってことですね。

羽賀さん:自分を磨きたい、向上したい、という思いが強いんです。負けず嫌いですし。それにマーケティングを学んで、お客さまに「岩瀬の清水そば」を選んでもらうためには、商品やサービスに「自分たちの想い」を込めないといけないと思うようになったんです。だから、一緒に働くスタッフには僕が目指していることをしっかり伝えるようにしています。

 

——お話を聞いて、先代から変わらずに続けていることと、ご自身が考えるやり方の両方を取り入れているように思いました。

羽賀さん:今でこそ、先代のやり方と自分のやり方、どちらも大切にしています。ただ、父が亡くなって母親とふたりでお店をやっていた頃は、両親がやってきたことを守っていこうとは思っていませんでしたね。今の時代に合ったやり方があるだろうと思っていたので。でも店内の設備をリニューアルしようとはじめて自分の名義で借り入れをしたとき、商いの大変さを痛感しました。創業の精神を痛感したと言うか……。両親には、ずっと大変なプレッシャーがあったのだろう、と思いましたね。

 

名水「岩瀬の清水」と西会津産の玄蕎麦、創業から継ぎ足している「かえし」が、人気店の味を支える。

——「岩瀬の清水そば」には、どんなこだわりがあるのか教えてください。

羽賀さん:西会津産の蕎麦を殻付きで仕入れて、店内で製粉した蕎麦粉を使っています。蕎麦は昼夜の寒暖差があるほど甘みが増すといわれていて、西会津のような山間部の蕎麦が美味しいんです。僕の父は西会津の職人さんにアドバイスをもらいながら、独学で蕎麦作りを勉強したそうです。僕の代になってから蕎麦の食感をより感じられるように蕎麦の切り幅と厚みを変えましたが、それ以外は何も変えていません。それから年配のお客さまが食べやすいように、父の代から「蕎麦を冷やし過ぎない」ようにしています。キリッと冷やしたコシの強い蕎麦ではなく、モチっとした食感のそばに仕上げているんです。ちなみに「かえし」は、創業から30年近く継ぎ足しているんですよ。

 

 

——使っているお水は、お店の近くの「岩瀬の清水」ですよね。

羽賀さん:岩瀬の清水は「越後三清水」のひとつで、遠方からも水汲みに来る人がいるくらい美味しい湧き水です。その岩瀬の清水が、蕎麦の甘みと風味を引き立ててくれるんです。

 

——私、飲食店を取材するときは、ちゃっかりお料理のヒントを聞くようにしているんです。できれば、蕎麦を美味しく茹でるコツを教えてください。

羽賀さん:当店のような十割蕎麦はちょっと茹でるのが難しいかもしれませんね……。失敗しないポイントは3つあります。蕎麦1人前に2リットル程度のたっぷりの湯を使うこと。できるだけバラバラと広げて茹でること。沸騰するまで触らないこと。蕎麦がくっついてしまいそうだったら、箸を広げて持ってゆっくりと動かしてみてください。

 

行列店だからこそ生まれた、お客さまのため仕組みの数々。

——人気店だからこそのご苦労もあると思います。

羽賀さん:閉店時間前にのれんをしまう日や、お客さまをお待たせしてしまうときは心苦しいですね。私たちは、お客さまが気持ちよく食事ができるようにエスコートする立場だと思っているんです。なのですぐにご案内ができないときは状況をお伝えして、お客さまに待っていただくかどうかの判断をしてもらっています。ご案内できる目安の時間を伝えて、時間が近づいたら携帯電話にご連絡することもしています。そういうひと工夫で、お客さまにリラックスして入店してもらえるんですよね。相手に寄り添った言葉があるかないかで、感じ方って変わると思うんです。

 

——ちょっと変わった「取置き予約」というシステムがあるようですが。

羽賀さん:事前に召し上がる分量と来店日時を予約できる仕組みです。今は半数以上のお客さまが「取置き予約」をしてのご来店です。電話予約がはじまる10時から11時くらいまで電話が鳴り止まないこともありますし、開店時間には予約分だけでその日の蕎麦の半分がなくなる日もあるんですよ。

 

 

——お店を運営される上で、どんなことに気を配っているんでしょう。

羽賀さん:スタッフ同士で情報共有をしっかりすることです。みんなが共通の認識を持つことってとても大切だと思うんです。ホールの状況、調理の進み具合などを把握して仕事に取り組むと、和やかな時間をもてます。お客さまにゆったりとした気持ちで食事を楽しんでもらうためにも大切なことです。

 

——飲食業の魅力ってどんなところにあると思いますか?

羽賀さん:飲食業は、きちっとした腕やサービスで目の前のお客さまが喜んでくれる素晴らしい仕事です。それにアルバイトの学生さんなど、若い人が成長するのを手伝える職業だとも思っています。仕事の喜びを感じたり、相手の立場で考える力を養ったり、飲食業には生きる上で大切なことが凝縮されているんですよね。それを一緒に働くスタッフに伝えたいって気持ちはいつも持っています。僕は、飲食業が大好きですから。

 

——最後にこれからの展望を教えてください。

羽賀さん:次は「うどん専門店」でも勝負したいですね。このお店とは別の店舗でやりたいと思っていて、レシピも考案しています。今はスタッフが不足していて提供を休止しているんですが、このお店はうどんも人気なんですよ。他では食べられない「縮れ麺のうどん」です。平打ちの縮れ麺は口の中でうどんが踊っているような食感で楽しいですし、つゆがよく絡んで美味しいんですよ。

 

 

 

岩瀬の清水そば

阿賀野市山崎97-1

TEL: 0250-62-1510

営業:火〜土  11:00 – 15:00(ラストオーダー 14:30)

定休:日・月

※事前に電話で食べる分量と来店日を予約するのがオススメです。
席と時間の予約はできません。

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