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愛らしい表情にほっこり癒される、「かんだあきら」の羊毛フェルト。

目が合うと、思わず笑顔になる。「かんだあきら」さんがつくる羊毛フェルトには人を元気にするパワーがあります。今月行われた新発田の寺びらきイベントの一角に、「かんだあきら」さんの展示販売ブースがありました。どこかとぼけた顔をした、ゆるいフォルムの羊毛フェルトたち。いったいどんな発想でキャラクターたちができあがるのか、気になるお話を直接伺ってきました。

 

羊毛フェルト作家

かんだあきら Kanda Akira

1980年生まれ、新潟市在住。学生の頃から趣味だった音楽のため21歳で東京へ。自主アルバムを制作するなど音楽活動に没頭。その後、新潟に戻るとカメラをはじめ日常的に写真を撮るように。周りにクリエイターも多く、音楽づくりもできることからショートフィルムや映像の制作をはじめる。30歳で専門学校に通い介護福祉士の資格を取得。現在は介護士として働きながら羊毛フェルトの制作を行う。趣味は歴史、明治維新・幕末が特に好き。

発想の起点は、郷土玩具。

――かんださんの作品は同じシリーズでも、ひとつひとつ表情が違うんですね。

かんださん:そうなんです。お客さんは表情をよく見て、自分のお気に入りを探して購入してくださるんですよ。

 

 

――何とも言えない表情がたまりませんね。かんださんの作品はどのような発想で生まれたのか気になります。

かんださん:もともと郷土玩具が好きで、そこから着想を得ています。会津の「赤べこ」や、新潟の「三角だるま」も郷土玩具のひとつです。

 

――郷土玩具に興味を持ちはじめたのはいつ頃からですか?

かんださん:ちょっときっかけとはズレますが、みうらじゅんさんの『いやげ物』って本が好きなんです。「みやげもの」と「いやなもの」をかけて、「いやげ物」。全国の「これいったい誰が買うの?」って思うようなお土産を集めた本で、それがめちゃくちゃ面白いんですよ。

 

 

――その本の中に郷土玩具も入っていたんですか?

かんださん:郷土玩具に近いような、全国にある変なものですね。江戸時代からつくられているものやお寺で売っているものなど、個性があってすごく面白いです。僕、本に載っていた変な顔のひょうたんが欲しくて栃木まで探しに行ったんですよ。

 

――栃木まで!すごいですね!

かんださん:そういう古くからあるものって、一見意味なんてなさそうだけど、実は色や絵柄に理由があったりするんですよね。そういうところも興味深いですし、逆に全然意味がなくてもいいんです。「なんか面白いね、味があるね」と感じるものに影響を受けていると思います。

 

きっかけは、羊毛フェルトにチャレンジした人の失敗写真。

――かんださんは普段何のお仕事をされていらっしゃるのでしょうか?

かんださん:普段は介護福祉士として働いています。他の活動としては、写真が好きで、友人たちと合同制作で『Light』という名前の写真作品のZINEをつくったりもしています。

 

――自由な時間が少ない中で制作するのは大変ではないですか?

かんださん:羊毛フェルトをつくる前も仕事をしながら映像や音楽などのコンテンツをつくってきたので、僕にとっては日常ですね。介護の仕事は楽しいのですが、別で没頭できる時間もあった方が自分的にはバランスがいいんです。

 

 

――どのようなきっかけで羊毛フェルトの世界に入ったのですか?

かんださん:コロナ禍だと思うんですが、100均の羊毛フェルトキットで失敗して、モンスター化させてしまった画像がSNSで盛り上がっていたのを覚えてますか? あれにめちゃくちゃ衝撃を受けて、こんなに多種多様の面白いものが偶然できあがるんだ!って、すごい笑っちゃったんですよね。

 

――覚えてます、見本とかけ離れた作品の画像がたくさんありましたよね(笑)。

かんださん:最初はただ見るのが好きだったんですが、ふと本当にこんな風になるのかなと思って、キットを買ってやってみたんです。でも、はじめからうまくいっちゃったんですよ……(笑)

 

――かんださんの手先が器用すぎたんですね……。

かんださん:失敗した形から、面白いものをつくる発想が沸いたりするので、失敗を期待していたんですけどね。すぐにキットの通りにつくるのをやめて、別のものをつくってみたらちょっといい感じにできたんです。今日持ってきた中にも古い作品がありますが、この辺りは先ほど話した、郷土玩具を羊毛フェルトでつくれないかと、色々試したときのものです。

 

 

――つくるときはイメージを紙に描き出したりするんですか?

かんださん:紙に描くことはないですね。僕はつくりだしの際に完成形を思い浮かべることもあんまりなくて、その方が面白いなと思っています。できあがった瞬間の「こうなったか!」が一番わくわくします。

 

お客さんの笑い声が、一番嬉しい。

――最初は趣味でつくっていらしたと思うのですが、どのような経緯で販売することになったのでしょうか?

かんださん:写真の友人のつながりで、ものづくりのイベントに誘われたのがきっかけでした。秋葉区の古津で開催されたイベントで、僕以外にも6人くらいの作家さんが出店されていました。僕は変なのばかりつくってるから心配だったんですけど、いざ出店してみたら、反響が結構あって驚きましたね。

 

 

――実際にお客さんを目の前にして、反応が見えるって嬉しいですよね。

かんださん:はじめての経験で緊張していましたが、次の年もイベントに呼んでくださったので。少しずつ自信がついてきました。その後、何となく個展のようなものがやりたいなと考えていたときに、元々知り合いだった「ヒッコリースリートラベラーズ」の迫さんにお会いして相談し、新潟市美術館のミュージアムショップ「ルルル」のポップアップに誘っていただいたんです。

 

――すごい、いいタイミングですね! 今、新潟市美術館は改装中ですが、イベント以外でかんださんの作品を買いたいときはどちらに行けばいいですか?

かんださん:長岡の「摂田屋6番街発酵ミュージアム・米蔵」で常設販売していて、実際に手にとって購入できます。あと、最近オンラインも開始しました。チェックしてもらえると嬉しいです。

 

 

――かんださんが作品をつくっていて、一番楽しい瞬間を教えてください。

かんださん:お客さんの笑い声が聞こえる瞬間ですね。展示販売などのイベントでは、僕もその場でつくりながら対応することが多いんです。小さな子からご年配の方まで隔てなく、作品を手に取って、「何これ~!」って言いながら楽しそうに笑ってくれたりするんですよ。いいものつくったなって思えるので、その瞬間が好きですね。

 

 

 

かんだあきら

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