感動で店も自分も成長していく。母への想いを込めた「煮込みと酒と錦弥」。

気軽に呑めて、食べられる。そのメニューは感動と感謝が。

JR新潟駅から万代シティへと向かう途中、飲食店が並ぶ狭い小道で、白地に黒文字の暖簾が目をひく「煮込みと酒と錦弥(きんや)」。昼間にちょっと軽く一杯飲みたい…そんな願いを叶えてくれる、ランチメニューも展開している居酒屋です。とはいえ、ラフに楽しめるありきたりの居酒屋ではありません。山形のナチュラルワインをはじめ、こだわりの味ばかり。店主の佐藤さんから聞いたお話をちょっとだけ、酒の肴にご紹介します。

 

煮込みと酒と錦弥

佐藤静也 Seiya Sato

1983年生まれ。高校卒業後から飲食業界に足を踏み入れ、2018年中央区万代に「煮込みと酒と錦弥」をオープン。趣味は愛機ライカでの撮影、バイク、食べ歩き。

 

朝食作りからはじまった料理。見ず知らずの男性との出会い。

――まずは、佐藤さんの料理歴のはじまりから教えてください。

佐藤さん:料理を作りはじめたのは、小学校低学年ぐらいからかな。見よう見まねで卵焼きを作って、「卵焼き100円」と書いたポップを作って家庭内販売してて(笑)。料理番組が好きでさ、人気だった「料理の鉄人」なんかは、寝たふりをしてこっそり観てたなぁ。

 

――卵焼きからのスタートだったんですね。

佐藤さん:それからずっと、なんだかんだ料理はしていたんだけど。高校2年生の時に母が他界して、ばあちゃんと暮らしていたんだ。朝飯担当だったから、何があっても作らないといけなくてさ。高校生の時は古町で飲み歩いたり、クラブで遊んだりしていたから、帰って朝食を作るために6:30にはどうにかこうにか帰宅してたね。

 

 

――未成年でも夜遊びできた時代ですね(笑)。アルバイトとかで料理は学ばなかったんですか?

佐藤さん:ん~料理はできると思っていたからね。玉ネギなんか見ないでも切れていたし。でも、やりはじめたキッカケはあったかな。古町のバーで飲んでいた時に、たまたま隣に座っていた男と仲良くなって…当時流行っていたウイイレ(※サッカーゲーム「ウイニングイレブン」)をしよう!ってなったんだけど、朝食を作らないといけないから断ったんだ。

 

――ウイイレ流行っていましたね。

佐藤さん:そしたら、「どんな料理が作れるんだ?」って話になったんだよ。その頃の自分は料理ができるって自信があったから、偉そうに「こんなの作れるよ」って語ってさ。そしたら、ちょっとついて来なっていうんだ。どこへ行くかと思っていたら、着いたのは、とあるお店の調理場。

 

――もしかして、その男性は料理人だったんですか?

佐藤さん:そうなんだよ。自分が料理人だって言わずに、俺の話をただただ聞いてくれて。調理場では、パスタとかを作って見せてくれたんだ。パスタを作る時に重要なポイントになる、乳化とか技を教えてくれて、もうワクワクしちゃったよね。もちろん、仲良くもなってさ。

 

求人雑誌でたまたま。時給で選んだターニングポイント。

――その後、実際に飲食店では働きはじめたんですか?

佐藤さん:そうだね。東京でも修業したね。めちゃくちゃ厳しくて、まずいと思われたら、せっかく作ったまかないも捨てられるようなスパルタなお店でね。当時、同居していたやつが働いていた会社の社長が新潟の人で、「恵比寿でカレー屋をやりたいから」って声をかけられたこともあったな。

 

――新潟つながりの出会いですね。急にカレー屋になったんですね。

佐藤さん:それが、話が二転三転して…結局、「蕎麦屋をやろう」ってなったんだよ(笑)。

 

――あるある話ですね(笑)。目移りしちゃうんですよね。

佐藤さん:だからさ、蕎麦の修業をして新しいその店を頑張ったわけ。でもそれまでは店を任されたこともないし、まだ18歳だったし…結局その蕎麦屋はズッコケちゃったんだ。それで、飲食店なんてもうやらない、って挫折して新潟に帰って来たんだよね。

 

――18歳で店を任されるのは、なかなか厳しいですね。

佐藤さん:とりあえず働かないと生活ができないから、求人誌でアルバイトを探していたんだ。とにかく時給重視で。一番高かったのが、まだオープンして2ヶ月の「Soi」。万代にある超人気居酒屋だよね…って、結局、飲食店に戻ったんだ。

 

――「Soi」は、いつ行っても満席ですよね!どのくらい働いていたのですか?

佐藤さん:アルバイト初日から激混みでさ。はじめは調理場と雑務をこなしていたんだけど、なんだかんだと16年間もお世話になったね。まぁ料理人としてのスランプもあったり、死んでいた時期もあって。紆余曲折あったけど、本能的に「Soi」が大好きで、この16年は一瞬だったかな。この店で働いていなければ「煮込みと酒と錦弥」は、なかっただろうね。

 

「煮込みと酒と錦弥」を純粋に知りたい。どんなお店なんですか?

――「煮込みと酒と錦弥」は万代の入り口とあって、とても良い立地ですよね。

佐藤さん:そうなんだよね。角地だし、光を放っているし、とても気に入った立地だね。でもこの場所に出会うまでは物件難民でさ。楽しい時も辛い時も万代で過ごしてきたから、自分の店は万代に出したいと思っていて。たまたま、話が舞い込んで。見てみたら、笑い声がしている雰囲気が見えたから、即決めたよね。

 

――お店のコンセプトはどうやって決めたんですか?

佐藤さん:とにかく自分が感動したものを伝えたい。コンセプトだけ80%作って、あとは足していこうって決めてスタートしたね。飲んでみてうまさに感動した、山形のワイナリー「GRAPE REPUBLIC(グレープリパブリック)」のナチュラルワインとか、店名にも入っている煮込み料理の「ツラミ煮込み」を主体にさ。週3回来れる居酒屋を目指して、気軽に楽しんでもらえるように考えたね。

 

 

――メニューを見ると、新潟市内のお店の名前がちらほらと出ていますね。

佐藤さん:誰かが作ったもの、教えてもらった料理。そんなのもたくさんあるよ。どこかのお店の料理でも、自分が感動したら伝えたいし。だから教えてくださいって、教えてもらうんだ。本当に周りの尊敬できる人たちのおかげで「煮込みと酒と錦弥」は成り立っていると思う。感謝しかない。

 

店名に込められた母への思い。忘れられないために。

――店名にある「錦弥」というのは、何かの名前ですか?

佐藤さん:これは死んだ母が芸者をしていた時に使っていた名前なんだ。店名にすることによって、「錦弥っておいしいよね」みたいな会話で自分の母をよく言ってもらえるように頑張りたいから。いろいろな場所で「錦弥」の名前が出たら、どこかに存在してるってことじゃん? 大切な仲間が言っていたんだけど、「人は2回死ぬ。1回目は身体が死んだとき。2回目は忘れられたとき」って。そんなことを言ったやつも死んでしまったんだけど、俺は彼の話もどんどんして、「錦弥」も多くの人に知ってもらって、忘れられない存在にしていきたいんだ。

 

――とても大切な思いが込められた店名なんですね。

佐藤さん:「錦弥」という店の一部が、佐藤静也。自分とスタッフもリンクしていると考えているから、いっぱい旅行して、遊んで、食べて、感動して、そしてどんどん成長して、「煮込みと酒と錦弥」はもっといい店になっていくと思うんだ。そうすることで、たくさんお世話になってきた人たちへの恩返しをしていきたいね。

 

 

煮込みと酒と錦弥

新潟県新潟市中央区弁天2-4-1

025-288-5149


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