店舗のないお菓子屋さん、村松の「Patisserie ありがとう」。
食べる
2023.06.04
旧村松町に工房のある「Patisserie(パティスリー) ありがとう」。普段はInstagramとTwitterで予約を受け付け、週末は催事等に出店するというちょっと謎めいた(?)お菓子屋さんです。いったいどんな方が営んでいるのか気になってSNSで連絡してみると、とても丁寧なお返事をいただきました。気づかいにあふれて笑顔が似合う山﨑さんに、いろいろとお話を聞いてきました。

Patisserie ありがとう
山﨑 めぐみ Megumi Yamazaki
五泉市(旧村松町)生まれ。新潟の専門学校を卒業後、東京・神奈川のフランス菓子店に勤める。東京と神奈川でレストランや居酒屋など様々な飲食店を経営する会社に転職し、20代後半で地元に戻る。新潟でも飲食店に勤めた後、2021年に「Patisserie ありがとう」をオープン。休日は美味しいもの巡りをするのが好き。

知る人ぞ知る、「ありがとう」のお菓子に出会えるいくつかの方法。
——「ありがとう」という名前のお店、かわいらしいですね。このシンプルな言葉にはどんな思いが込められているんでしょう?
山﨑さん:お店に関わってくれる皆さんが「ありがとう」って笑顔になれるお店にしたくって。幸せな気持ちになって欲しいという願いを込めました。分かりやすい言葉だから覚えてもらいやすいですよ。
——ちょっと変わったお店の運営をされているんですよね。
山﨑さん:店舗販売はしていなくて、InstagramもしくはTwitterで予約を承って工房でお渡ししています。土日はショッピングモールなどの催事に出店していて、五泉市の「たのしいスーパー エスマート」さんには商品を卸しています。
——店舗を持たずに営業されているのはどうしてですか?
山﨑さん:当面の間はひとりでやりたいと思っているからなんです。お店を持つと接客も自分でしなくてはならないですし、それだと手が回らなくなってしまうので。目の行き届く範囲でやって行こうと決めました。

——おひとりだと、お菓子作りにイベントにと忙しいのではないですか。
山﨑さん:ちゃんとお休みもいただいているので大丈夫です。それに美味しいものを食べるのもお菓子を作るのも好きだから、忙しくてもあまり気にならないんです。お菓子の本を読むのも好きですしね。
——どんなお菓子があるのか教えてください。
山﨑さん:ご予約いただけるお菓子は、デコレーションケーキ、チーズケーキ、クッキー、パウンドケーキです(※商品変更の場合あり。詳細はSNSでご確認ください)。催事会場ではクッキーやパウンドケーキなどの焼菓子を中心にチーズケーキも用意しています。
——ショートケーキみたいな王道のカットケーキはないのでしょうか?
山﨑さん:生ケーキは崩れやすいので、出店先まで持って行けないんですよ。でも月に1度開催する「工房販売日」には生ケーキもいくつか用意しています。先日は苺のショートケーキやロールケーキ、ガトーショコラなども作りました。

食べた人が笑顔になることを想像し、作り上げる。
——素材選びや仕上がりなど、いろいろとこだわりがあると思います。
山﨑さん:シンプルな無塩バターで素材を引き立てるクッキーもあれば、発酵バターを使うクッキーもあるし、商品ごとに材料をチョイスしています。もうすぐ旬が終わってしまいますけど、デコレーションケーキ用の越後姫は、地元の「農園小嶋屋」さんの苺をご予約の度に朝いちばんに取りに行って使っていました。「農園小嶋屋」さんの越後姫、私がいちばん美味しいと思う苺なんです。
——贅沢なデコレーションケーキですね。美味しそう……。
山﨑さん:きっと皆さん食事を終えてからお誕生日ケーキを召し上がると思うので、重たすぎないあっさりとしたデコレーションケーキに仕上げているんですよ。ペロッと食べていただけるように。
——でもSNSで注文管理するって、ちょっと面倒じゃありません?
山﨑さん:お客さまにはご不便をおかけしているかもしれませんが、私はむしろ嬉しい思いをさせてもらっています。予約の段階でSNSでのやり取りがあるので、ケーキと一緒にご家族の写真を送ってくれる方もいるんです。お子さんが喜んでいる姿、80歳のおばあちゃんが笑っている姿にこちらも嬉しくなります。

大好きだった職場に別れを告げ、生まれ育った村松に恩返しをするため帰郷。
——オープンしたばかりの頃はどんな感じでした?
山﨑さん:手探り状態で何をしたらいいのやら、さっぱり分かりませんでした(笑)。でも以前働いていたお店のお客さまが「職場のみんなに配るから」ってたくさんお菓子を買ってくれて、それから今度は「職場でもらって美味しかったから」という方が来てくれました。本当にありがたかったですね。今は「デッキー401」「駅ビルCoCoLo」「新潟市中央卸売市場」に出店させていただくことが多いんですが、それも同級生からの紹介がきっかけなんです。皆さんから助けられているんですね。本当に出会いに恵まれているなと思います。
——しばらく東京で腕を磨かれていたそうですが、以前から新潟に戻ろうと決めていたんですか?
山﨑さん:いつかは地元に帰ってお菓子屋さんをやりたいとは思っていました。でも東京で勤めていた会社がすごくいいところで。尊敬できる上司ばかりだったし、大好きな同僚も多くって。だから会社を辞めるのにはすごく勇気がいりましたね。

——大きな決断だったんですね。新潟に戻られてからはどうされたんですか?
山﨑さん:すぐに独立するのには不安があったので、新潟でもどこかで働くつもりでいたんです。ちょうど知人からの誘いがあったので、何年かお世話になりました。地元でのつながりや応援してくれる方とも出会えたのでが出来たので、誘ってもらったことに感謝しています。
——そこでもご縁があったんですね。では独立のきっかけになったのは?
山﨑さん:実際にお店を経営するってすごく大変だと肌で感じていたので、会社員のままでいるつもりだったんです。でもコロナ禍となって、改めて自分自身の人生を振り返って「やっぱり独立したい」という思いが強くなりました。どうなるか分からない人生、やりたいことに挑戦したいって。
——山﨑さんの地元、村松に工房を構えたのはどうしてでしょう?
山﨑さん:前職は「生まれ育った町の人たちに恩返しがしたい」という理由から、ひとつの駅の周辺に10店舗も系列店があるような会社だったんです。そんな「地域の皆さんに喜んでもらえるお店にしよう」ってポリシーにとても感動しました。それで私も新潟に戻ったら村松に工房を持って、生まれ育った町の皆さんに恩返ししようと思ったんです。

——独立してから大変だったことはありますか?
山﨑さん:車の運転ですかね(笑)。ペーパードライバーだったので、冬の雪道が怖かったです。
——意外な答えでした(笑)。さて最後の質問です。やっぱりいつかはご自身の店舗を持ちたいとお考えですか?
山﨑さん:今のやり方が現状のベストだとは思っています。でも何年先になるか分かりませんが、いつかは店舗を持ちたいと思っています。お店を持ってからやりたいことがたくさんあるんです。それまで自分も楽しみながら、お客さまに飽きられないように新しい商品をご提供していきたいと思います。

Patisserie ありがとう
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