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鬼が隠れる庭を眺めながら蕎麦を味わう、五泉市の「手打ちそば鬼七」。

  • 食べる | 2023.10.06

五泉市の住宅街に佇むお蕎麦屋さん「手打ちそば鬼七(きしち)」。お昼どきになると、たくさんのお客さんで賑わう人気店です。手作業で時間をかけて打つ美味しいお蕎麦はもちろん、店内から見える美しいお庭も魅力のひとつです。お店をはじめてからのことやお蕎麦へのこだわりについて、店主の樋口さんにお話を聞いてきました。

 

 

手打ちそば鬼七

樋口 亮 Akira Higuchi

1960年五泉市生まれ。農家の息子として生まれる。北海道で蕎麦打ちを習ったのち、自宅や兄弟弟子のもとで腕を磨く。24年前に五泉市で「手打ちそば鬼七」をオープン。

 

美しい日本庭園に隠れているのは、7つの鬼の置物。

――広いお庭があって素敵なお店ですね。

樋口さん:もともと僕の実家がここで農家をやっていたんです。蔵があったり小屋があったりして、それでこんなに広い敷地なんですよ。でも僕の代ではもう農家をやっていくほどの農地がなくて、家も古かったので建て直さなきゃいけなくなって、住居兼店舗にしようと考えたんです。

 

――店舗にするにしても、お蕎麦屋さんにしたのはどうしてなんですか?

樋口さん:25年近く前、当時福島の宮古という村に行ったとき、農家が営んでいるお蕎麦屋さんがいっぱいあったんですよ。茶の間にテーブルを置いて、そこにお客さんを入れて、お客さんは先祖の写真を見ながら蕎麦を食べるような(笑)。そういうところが流行っていてね。他の業種も考えたんだけど、最終的には「お蕎麦屋さんをやろう」ってことになりました。

 

 

――お蕎麦作りはどちらで学んだんですか?

樋口さん:北海道で学びました。そこの親方は、東京で蕎麦打ちを教わって地元の札幌で開業した方なんです。だから修業したのは北海道でも、打ち方は江戸打ち、東京のお蕎麦屋さんのやり方ですね。

 

――北海道にはどれくらいの期間いらっしゃったんですか?

樋口さん:集中的に、泊まり込みで1ヶ月間行きました。そのあとはこっちに帰ってきて作業場を作って、ああやってみたりこうやってみたりしながら開店の準備をしていました。うまくできるようになるには、数をこなすしかないですから。あとは修業先の兄弟弟子で開業されている方に連絡をとって、行って勉強させてもらいました。

 

――お蕎麦作りを学ぶのは楽しかったですか?

樋口さん:当時は必死ですよ。生活がかかっているし、借金も決まっていたのでね(笑)。子供もまだちっちゃかったから、とにかく一生懸命でした。

 

――人気のお蕎麦屋さんでとても繁盛されていると思いますが、オープン当初からこんな様子だったんですか?

樋口さん:いやいや。今はありがたいことにたくさんのお客さんが来られますけど、はじめたときは素人なのでね。評判もあまり良くなかったですし、暇でしたよ。でも食べていけるくらいにはお客さんが支えてくれましたね。少しずつ常連さんがついてくれて、あとは気に入った方がちょっとずつ増えていって、いつのまにかこんなふうになったっていう感じですかね。

 

 

――「鬼七」という店名ですが、どういう由来があるんでしょう?

樋口さん:うちの屋号が「喜七」だったんですよ。暖簾にも描いてある鬼の絵は、お店をデザインしてくれた方が遊びで描いたものなんです。僕が蕎麦を打っているところをイメージしたらしくて(笑)。「いいですね」って話をしていたら、「喜七」の「喜」を「鬼」に変えて「鬼七」って店にしたらどうだっていうその方のひとことから、この名前になりました。

 

――さっき、お庭に小さな鬼の置物があるのを見つけてしまいました。

樋口さん:こういう名前なので、確かオープンしたときにお客さんからひとついただいたのかな。それをきっかけに「面白いね」って4つ集まって。安田にある「村秀鬼瓦工房」という鬼瓦の工房で作られたものなんです。

 

――今では4つより多く置いてあるようですが……。

樋口さん:7年前にこの庭をリニューアルしたんですよ。そのときに「じゃあ庭のところどころに鬼を置きましょうか」となって置いていたら、お客さんが「あと3つはどこにあるんですか」って言うんですよ。

 

――なるほど(笑)

樋口さん:「鬼七」だから、鬼が7ついると思っているんです(笑)。お客さんが何人もそう言うので村秀さんにあと3つ作ってもらって、今では庭に7ついます。

 

江戸流で打つ、こだわりの田舎そばと更科そば。

――お蕎麦のことも教えてください。江戸流の打ち方をされているんですよね。

樋口さん:3本ののし棒を使って打ちます。乾燥を防ぐためにのしながら巻き取っていって、それを長方形に畳んで切ってお蕎麦にするんです。丸い形のまま畳んで切るやり方もあるんだけど、それだと短い蕎麦と長い蕎麦が出てしまうじゃないですか。それが江戸打ちのやり方だと、綺麗にのせればまったくロスがでないんです。

 

――よく考えられている打ち方なんですね。すべて手作業にこだわられていると思いますが、手打ちの強みってどんなところですか?

樋口さん:手のほうが蕎麦粉の変化にすぐ対応できるというか。その季節の温度とか湿度とかによって、粉の状態を手で見られますよね。加水する量も毎日様子を見ながら変えていて、「少し柔らかいから水を控えよう」とか考えながらやっています。やっぱり経験ですよね。

 

 

――メニューを見ると「更科そば」と「田舎そば」がありますね。

樋口さん:どちらも同じ蕎麦粉なんですけど、田舎そばは蕎麦の実の外側の茶色い皮まで一緒に挽いているので、蕎麦の風味が強いです。更科そばは皮を取って、中心の真っ白な部分だけで打つので、白くて独特の食感がある蕎麦になります。ただうちの場合は「ほんのり蕎麦の香りも欲しいな」と思って、更科粉に蕎麦粉を少しブレンドしています。だから生成っぽい色をしていますね。

 

――どちらも美味しそうです。他にもメニューがたくさんありますが、樋口さんのおすすめはどちらですか?

樋口さん:「天せいろ」、あとは「鴨せいろ」と「鴨南蛮」ですね。天ぷらとお蕎麦は相性がいいですし、鴨を使ったお蕎麦も鴨のうまみがよく出ていて美味しいですよ。

 

 

――つゆにもこだわりはありますか?

樋口さん:うちは削りたての鰹節で出汁をとっているんですよ。そのために削り機を特注で作ってもらいました。本枯れ節、宗田節、さば節の3つの鰹節をブレンドしていて、その出汁から作ったつゆは一品料理の味付けにも使っています。なかでも玉子焼きが評判で、すごくよく出るんですよ。

 

はじめた頃のことを忘れず、謙虚に続けていきたい。

――樋口さんはどんな思いでここまでお店を続けてこられたんでしょうか。

樋口さん:今は私の子どもも一緒に厨房に入っているんです。店をはじめたときは小学校6年生くらいだったらから、「僕の代でなんとかちゃんとした店にして、子どもが『継ぎたい』って言うような店にしたいな」と思ってずっとやっていました。

 

――その思いの通りになったわけですね。

樋口さん:子どもに「他の職業に就いてもいいよ」とは言っていたんだけど、「跡を継ぐんだったら他の飲食の業界で働いておいで」と言ったら、高校を卒業してから飲食業に進んで。7、8年前にうちに入りました。ありがたいですね。おかげさまで繁盛しているんだけど、オープンしたときのことを忘れずに謙虚にいかなきゃなと。いっつもそう思います。

 

 

 

手打ちそば鬼七

五泉市赤海1丁目4-27

TEL 0250-42-5834

営業時間 11:30-14:30/18:00-21:00(土日祝は17:00-21:00)

定休日 月曜日(祝祭日の場合は火曜)、毎月第4火曜日

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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