普段知ることのできない工場の内部を見学する企画「僕らの工場。」今回の舞台は新潟市江南区にある両川工業団地、敷地面積およそ7万平方メートルに及ぶ広大な本社・工場を構える株式会社北村製作所さんです。皆さんは、道路で見かけるトラックのコンテナに「Kitamura」のロゴを見たこと、ありませんか? 意識して見てみると…あっ!あれも、これも!とけっこうよく見かけるんですね。そう、実はそのトラックのコンテナ部分こそ、北村製作所さんで作られた「アルミバンボディー」なのです。業種や用途ごとに設計してオリジナルで作るアルミバンボディー。その製造現場にお邪魔してきました!
株式会社北村製作所
小川 雅博 Ogawa Masahiro
代表取締役社長。新潟生まれ。県内の大学経て1978年に一般社員として入社。最初の配属先は製造部のコストダウンチーム。画板を持ち歩き各作業工程のチェックから作業効率改善案を策定し、作業の効率化を図る。その後、生産部門の統括責任者を経て、2019年11月に創業家ではない初の代表取締役として就任。
ーー今日はよろしくお願いします。
小川さん:よろしくお願いします。私、新潟弁なんで聞き取りづらいかもしれないけど、そうだったら勘弁ね(笑)
ーー大丈夫です(笑)。まず、北村製作所さんについて教えて下さい。創業時からコンテナを作っていたんですか?
小川さん:昔、創業者である前の会長が東京での修行のあと、新潟に戻り車の板金工業としてはじめたのがきっかけですね。ここまでが、私がお聞きしていた創業までの経緯ですね。そして、私が入社したきっかけですが、昭和53年にさかのぼります。当時は、 長男が家を継ぐのが普通でしたが、兄が東京の大手企業に就職してたもんだから、私が家を継ぐことにしました。その流れで、新潟で就職先を探し、 大学を卒業してから北村製作所に入社しました。
ーー入社当時はどんな仕事をされていたんですか?
小川さん:これがね、当時、同期が5人一緒に入社したんだけど、やっぱり設計が人気でそこに5人中3人が配属希望を出したんだけど、私は製造のコストダウンチームに希望を出したんですよ。そしたら、周りから「なんでそんなとこ行くんだ」って(笑)。でも私の性分として、設計もいいけどやっぱり現場の方がみんなと一緒に和気あいあい仕事ができるし、楽しいと思ったから製造を希望しました。
ーーコストダウンチームっていうのは、具体的にどんなお仕事だったんですか?
小川さん:画板っていう大きなバインダーみたいのを持って、各作業工程の部署を回って、現場観測するの。作業の流れを確認したり、そこに無駄な動きがないか?作業の効率化を図るにはどうする?とかね。でも、とにかくジーっと見るから、その作業をしてるときは。当時の塗装工場の先輩がすごく怖くてね(笑)。「なに見てんだぁ」って怒られたしてね、もう、怖かったぁ。でも、やっぱり顔を合わせていくから、最終的には仲良くなってね。そういう仕事をしてたんですよ。それをしばらくやらせてもらって、それから輸出の担当とか、生産部門の責任者とかを経験しましたね。
ーー会社としては新しい事業、沢山のチャレンジをされてきた印象を持っているのですが、それについてはいかがですか?
小川さん:新規事業というか、「お客さんの要望から新しいモノを作る、それを形にするためにチャレンジをする」って認識のほうが強いですね。例えば、お客さんの要望で「カセットボディー」っていって、車に積むんだけど足が4本あって車両から独立して自力で立つボディーとか、今もあるけど「リンボーバン」は積み荷に合わせて高さを変えられたり、高さ制限があるガード下・地下駐車場にも対応できるボディーとかね。もう本当に業種ごと、用途ごとに使い方があるからそれを1つ1つオリジナルで作って行く。この会社の方針として、お客様の要望への「チャレンジ」という意味でどんどんやっていって、新しい事業が生まれる。という流れがありますね。
ーーなるほどですね。お客さんのリクエストで、できることが増えていくわけですね。でも要望の中には「これはできない…」っていうこともありそうですが。
小川さん:それはね。お客様に迷惑がかかるから本当にできないときは、「できません」って言うこともあると思います。ただ、それはほとんどないかなぁ。とにかくチャレンジする。お客様が満足いくまで徹底的にお付き合いをする。それでダメだったらウチが全部買い取る。そう言う覚悟を持ってやるのがキタムラだと私は思っているので、まずは「やっていこう」と。
ーー…それ、めちゃくちゃ、かっこいいですね。
小川さん:でもね。失敗もありますよ。それでも正直に説明しに行くんですよ。これでは、お客様にお納めできないからね。そもそも、使う素材、構造から変更するからもう少しお時間をいただきたいってね。もちろんお金もがっつりかかりましたけど(笑)。それでも、当時担当していた設計が「やりきった」ってほうが嬉しかったんでね。お金の問題じゃないんですよ。もちろんクレームは出してはいけないのだけれども、どうしても新いモノを作るときには起こりうる可能性があるから。お客様には誠意を持ってお付き合いをさせていただく。それが、現会長からの「クレームからは逃げるな」「お金はかかってもいいからチャレンジを恐れるな」それがこの会社なんだってね。これは、これからも大切にしていきたいことですね。
ーーチャレンジを恐れないスタイルだと、現場の人はものすごくやりやすい環境ですね。
小川さん:中にはいるんですよ。いい意味でのバカが(笑)。「簡単なものはやりたくない」「面白くない」って言うの。
ーー挑戦することこそが仕事、って感じで頼もしいですね。
小川さん:彼が新しいものを作る特殊車両事業部の設計の長をやってるんですけどね。でも、だからこそ安心してチャレンジを任せられるというか。彼につられてその部署の設計はどんどんチャレンジしますから、そういう意味では嬉しいですよね。
ーー特殊車両事業部で作ったもので何かこれというものはありますか?
小川さん:特殊車両事業部は本当に今まで無かったものを作ることが多いので、例えば沢山のメディアに取り上げられた「移動銀行窓口車(ATM搭載車)」とか「検査車両」とかね。チャレンジングな仕事ですね。
ーー箱を作るということを通して、他にもいろいろ事業を展開されてますよね。
小川さん:そうですね。「洗浄装置」を用途に合わせてオリジナルで設計する産業機械事業とか、基地局の箱を作る通信事業があります。通信事業は大手通信会社さんの携帯基地局で使われる箱で、これもその場所や地域によって大きさや仕様を全部オリジナルで作って、沖縄から北海道まで10,000個くらい作らせていただきましたね。
ーーそれもやはり、お客様の声を大切にされてきたから、これだけ幅広い分野で活躍されていると思うのですが、今後の目標などあればお聞かせ下さい。
小川さん:売上げを無闇に伸ばそうとは考えてはいません。それは、「自分達のオリジナルの商品を作ろう」とか「新規事業を起こそう」とか、技術的裏付けのないことは、無理してやらないという意味ですね。高望みしてかえってお客様に迷惑をかけてしまうことは、やっぱり違うと思いますし。それよりも、今まで以上にお客様の要望を大切に、チャレンジして、「キタムラなら形にしてくれる、やってくれる」と言っていただける企業でありたいと思っています。あとはその一方で、社員の「やりたい」という気持ち、「やりがい」も大切にしていきたいですね。キタムラスピリッツといいますか、社員がイキイキと働ける環境は必ずお客様にも伝わってくれますから、そういう環境づくりも進めていきたいですね。
――だから工場の雰囲気がいいんですね。社員さんがすごく羨ましいです…!今日はいろいろ親切に教えていただき、本当にありがとうございました。
株式会社 北村製作所
新潟県新潟市江南区両川1丁目3604番地12
025-280-7120(代)