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「越乃雪本舗大和屋」のお干菓子で感じる、伝統的なお菓子の魅力。

  • ものづくり | 2024.02.24

1778年創業の老舗銘菓「越乃雪本舗大和屋」。日本三大銘菓のひとつである「越乃雪」を作り続ける傍ら、近年では干菓子の可能性を広げるような「おさとうのまほう」というシリーズや、パッケージにもこだわったお菓子を展開し、県内外問わず注目を集めています。昨年11月には長岡市にある本店をリニューアルし、店舗奥にカフェスペースを新設しました。専務取締役の岸さんに、カフェをはじめた経緯や作られているお菓子への思いなどを聞いてきました。

 

 

株式会社 越乃雪本舗大和屋

岸 佳也 Yoshiya Kishi

1980年秋田県生まれ。大学進学を機に新潟へ。大学院を修了後「朝日酒造株式会社」に就職。社内の茶道部で「越乃雪本舗大和屋」の次女である奥さんと出会い、12年前に「越乃雪本舗大和屋」に入社。現在は11代目として専務取締役を務める。

 

お干菓子の魅力を広く伝えていくためにはじめた、新しいシリーズ。

――まず「越乃雪本舗大和屋」さんのはじまりを少しだけ教えてもらえますか?

岸さん:その昔、長岡のお殿様である牧野忠精公が、参勤交代でお疲れで伏せられてしまいまして。そのとき手元にあった和三盆糖でお菓子を作って献上したのがはじまりです。お砂糖は薬みたいなところがあるので、元気になられたんですね。それから忠精公がお菓子に「越乃雪」という名前を付けて、「お土産として広く売り広めなさい」と言って広まっていきました。その前までは金物屋をやっていて、しばらく金物と和三盆菓子を並行して作っていたみたいです。

 

――「越乃雪」からはじまって、徐々にお菓子の種類を増やしていったんでしょうか。

岸さん:種類がこれだけ増えたのは先々代、先代くらいのときだと思います。それまでは「越乃雪」一本でやっていたんですよ。紙の資料が戦争で焼失しているので口伝でしか伝わっていないんですけども、上生菓子とか、これだけいろいろやるようになったのはここ100年くらいの話になるのかなと思います。

 

――岸さんが「越乃雪本舗大和屋」に入られたきっかけも教えてください。

岸さん:ここに入る前は「朝日酒造」で酒を作っていたんですけども、そこに茶道部がありまして。そこで出されるお菓子を納品しているのがこの店だったんですね。そのつながりもあって、「大和屋」の次女である妻と知り合うきっかけになりました。妻と結婚する段になって会社を辞めさせてもらって、12年前にここへ入りました。私で11代目になります。

 

 

――ここ数年で発売されたものだと「おさとうのまほうシリーズ」がかなり注目されていますよね。キラキラしてかわいくて、ずっと眺めていたくなります……。

岸さん:ありがとうございます。もともとうちは「越乃雪」という干菓子をメインにやっていますので、皆さん召し上がる機会ってなかなかないと思うんですよ。その魅力をどう伝えていったらいいのかなっていうのは、ずっと考えていました。

 

――特に若い方だと干菓子に触れる機会は少ないでしょうね。

岸さん:そんなときに百貨店さんの催事にお声がけいただいて、それを機に「おさとうのまほうシリーズ」をデビューさせることにしました。そのシリーズを入り口に、伝統的なものの良さに目を向けてもらえたら嬉しいなと思ってはじめたんです。

 

 

――あくまで昔から作り続けてきたお干菓子の延長線にあるものなんですね。

岸さん:「おさとうのまほうシリーズ」を見て「かわいい」と言ってくださるのはとても嬉しいんですけど、そういう可愛さの根本にあるのは「日本的な価値」というんですかね。例えばカラーリングですとか、「パステル」といってもパステルとは違うわけで。必ず伝統的なものと地続きになるように作っているので、「お干菓子はもともと可愛いものですよ」ということに気づいてもらうための入り口でありたいと思っています。

 

――写真映えしますし、発売されてからは反響も大きかったと思います。

岸さん:お干菓子自体がインスタ向きといいますか。立ち位置的にお皿の中で景色を作って楽しむものですので、そういった楽しみ方をしてくれるお客様が多いのはとっても嬉しいですね。うちがSNSでどれだけ投稿しても、やっぱりお客様が楽しそうに撮った写真をアップしてくれることには敵わないので、これからもお気軽にアップしてもらえると非常に嬉しいです(笑)

 

訪れた方をもてなす、ゆったりとお菓子を味わえるカフェ。

――昨年11 月のリニューアルで、カフェが新設されました。カフェのオープンは、以前から考えられていたことだったんでしょうか。

岸さん:ずっと考えていました。カフェが収益の柱になればいいんですけれど、そこがいちばんの目的ではなくて、あくまでも「お客様に対するおもてなしがしたい」っていう思いがありました。

 

――「おもてなし」というのは?

岸さん:「おさとうのまほうシリーズ」をはじめてから特に多いんですけど、県内外問わず遠くからお客様が来てくださるんですね。そのときに何のおもてなしもできずに、ただお菓子を買っていただいて終わりだったので、それはあまりにも申し訳ないというか。そういうお客様に対して精一杯できることとなると、やっぱりこういうカフェの席を作るのがいいのかなと思いました。

 

 

――お客さんにとっても、「大和屋」さんのお菓子をゆっくり味わえる場所があるのは嬉しいですね。メニューはカフェならではのものが用意されているんですか?

岸さん:そうですね。ぜんざいですとか、あずきアイスセットとか、いろいろ作ってはみたんですけども、結局皆さんご注文なさるのが季節の上生菓子と温かいお抹茶のセットなんですよね。そういう基本的なところに注目してくださっていることがすごく嬉しいです。お客様のことをもっと信じていいというか、うちに求められている立ち位置がよく分かりましたし、そういうふうに見ていただけているのはありがたいですね。

 

――カウンター席では、職人さんが直接お菓子を振る舞ってくれるそうですね。

岸さん:予約が必要になるんですけど、職人が目の前でそのときだけの上生菓子をお作りして、お抹茶と一緒に味わっていただけます。なるべくゆっくりしていただきたいと思っていますので、気兼ねなくおしゃべりして、職人にいろいろ質問していただいてもけっこうですし、お気軽に楽しんでもらいたいですね。

 

いいと思うものをかたちにして、ちゃんと伝えていく。

――このお仕事をされていて、いちばん喜びを感じるのはどんなときですか?

岸さん:やっぱり「美味しい」と言ってもらえることがいちばん嬉しいです。特にこういうカフェだったり、あとは百貨店さんのイートインコーナーだったりで、お菓子を食べているお客様の顔を見たときですよね。一口食べたときの「美味しい」っていう顔。あれを見ると「やっていてよかったな」って思います。美味しくて笑っちゃうときってあるじゃないですか。これからもそういうふうに笑顔になれるものを作っていたいですね。

 

 

――今後も「大和屋」さんを続けていく中で、大事にしていきたいことがあれば教えてください。

岸さん:「とりあえずやってみる」っていうところですかね。あとはガチガチにコンセプトから作り込んでいって、しっかりマーケティングをしてっていう規模の会社でもないですし、逆にいうと「うちはこう考えていて、こういうものがいいと思う」ということをちゃんと伝えさえすれば、刺さる人には刺さりますし。それぐらいの規模感でやれる大きさの会社ではあるので、「ちゃんと伝えていく」ということでしょうかね。そういう意味で、お客さんに寄り添っていきたいと思います。

 

 

 

越乃雪本舗大和屋 本店

長岡市柳原町3-3

TEL: 0258-35-3533

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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