僕らの工場。#4 美しいステンレスの器「株式会社トミタ」

金属加工の技術で、料理とテーブルを美しく彩るショープレートの開発秘話。

新潟の燕・三条エリアといえば、有名な金物。今回の工場見学でご紹介するのは、金属加工の技術でテーブルを飾るショープレートを製造する「株式会社トミタ」さんです。ショープレートとは、料理をのせる金属の板。つまり、金属のお皿。でもただのプレートではなく、その表面はアーティスティックで幻想的な模様が施されている特別なもの。きっとこれは相当な技術が詰め込まれているのでしょう。早速、見学にお邪魔してきました。

 

株式会社トミタ

冨田 雅俊 Masatoshi Tomita

株式会社トミタ代表取締役社長。考えながらモノづくりをすることを大切にする職人でもある。「自分だったら」の発想からオリジナルの企画、アーティスティックな研磨技術を表現する。

 

研磨の専門業から、製品製造をワンストップで行える工場へ。

「株式会社トミタ」さん1971年、現社長(雅俊さん)の先代の手で創業しました。当時の金物製造業は分業制が主流だったため、何かひとつの商品を作るにも、「板金加工はあの工場」「研磨はこの工場」というように、工場ごとに専門的な技術に特化していたそうです。そんな中、株式会社トミタは当初、研磨業を専門とした工場でした。しかし、手先がとても器用だった先代の社長さんは、「研磨だけじゃなく、製品化そのものができる工場の体制をつくろう」と考えます。そして当時としては珍しい、プレス、板金、研磨などワンストップでできる工場をつくっていったのです。

 

その頃、現社長の雅俊さんはまだ子ども。家が工場と隣接していることもあり、幼い頃から工場にもぐり込んで遊んだり、手伝いをしていたとか。漠然と、将来は工場を継ごうと考えていたそうです。しかし、そんな雅俊さんが実際に工場に入ったのは26歳のとき。さて、ここから今回の取材がスタートです。

 

 

「自分だったら…」考える職人として、父親の工場で新たな挑戦。

――工場に入られる前は、雅俊さんは何をされていたんですか?

雅俊さん:前職では、金属加工製造の営業の仕事をしていました。当時、この業界は営業なんてしなくてもひっきりなしに仕事が入ってくる状態だったんです。でも、先々のことを考えると絶対に営業の人間は必要になるし、やり方も変化すると思っていたんですね。なので、いろいろと営業面での勉強をしていました。

 

――営業というと、何をどう売っていくか、という話ですよね。当時と比べて、商品のニーズというのは変わったのでしょうか。

雅俊さん:実際、今では海外の製品が入ってきて、本当に安価な商品と、付加価値の高い特別な商品は生き残るけれど、中途半端な商品って難しくなっているんです。前職では流通やものを売る仕組みをすごく勉強させてもらいましたね。

 

――お父様が社長を務めるこの工場に入社されたのは、キッカケのようなことがあったんですか?

雅俊さん:昔この工場で勤めていた熟練工の方が、体調を壊されてしまって。そこで社長であった父親から相談されてこの工場に入社することになりました。前職では、金属加工の製造にも関わっていましたが、その会社は鍋とか一般消費者向けの製造が主で、でもうちの会社でやっていることは、お客様から図面をいただいて、オーダーメイドで工業製品などに使われるような金物の加工をすることがメインだったので、工場に入ってから新しくまたいろいろと勉強をさせてもらいました。

 

――営業としてもそうでしょうけれど、職人としても、やっぱり環境が変わって、考えることや感じることがありますよね?

雅俊さん:こうやって板から1つの商品を作らせてもらってると、「自分だったら…」って考えることが多くなりますね。そうなってくると、やっぱり自分でも製品を作ってみたいって思って。それで挑戦という意味も含めて、にいがた産業創造機構(NICO)が運営する「百年物語」という企画に応募することに決めました(※「百年物語」は新潟県の優れたプロダクトが選定されて参加できるブランド企画)。そこではプロダクトデザインに関わる審査員の先生がいるんですけど、とにかくクオリティが高くないと審査が通らないほど難しいものでして…。

 

 

ステンレスを使った器で「百年物語」にチャレンジするも…。

――どんな企画で挑戦したんですか?

雅俊さん:まず企画書から作って審査に臨むんですが、私の中では「ステンレスを使った器を作る」という方向性が決まっていたんです。それは、私たちがステンレスの加工を得意とすることもありましたが、現状として、ステンレスの器は海外から安い製品が出回っている状態で、例えば100均なんかにもステンレス製品があるくらい、そのステンレスのイメージは「安いもの」みたいになっていたから。だから、そこを覆せるものが作りたかったんです。

 

――なるほど。それでは実際に完成したのは…。

雅俊さん:最初に考えたのが『こぼれない器』でした。これは器の縁を加工で工夫して、例えばチャーハンのようにパラパラしているお米をスプーンですくって食べるときに、最後食べずらかったり、こぼすことってよくあると思うんですけど、そういうことの解決ができる器を企画しました。

 

 

陶器に負けない、飲食店で使える誰も見たことのない器を。

――審査員の方々の反応はどうだったんでしょうか。

雅俊さん:企画を出したとき、審査員の先生から「そういう機能もいいと思うけれど、(競合がいっぱいいるという意味で)ステンレスが厳しいことは知っていますよね?それであれば、そこをひっくり返すくらいのものを作っては?」と、アドバイスをいただきました。「下手な小細工はいらないよ」みたいな感じで(笑)

 

――これでは通らないと…。

雅俊さん:そう、今までの企画は一般消費者に向けて考えていたんですけど、ステンレスの器でいったい何ができるだろうと改めて考え直したときに、だんだん目線が「シェフの目線」になっていったんです。そういえば、お店で使う器を考えたら、ステンレスの器ってないな、って思って。それなら陶器に負けない、誰も見たことのないような器を作ろうって方向性が定まっていきました。

 

――そしていよいよ、「艶麗-enrei プレートシリーズ」が生まれるわけですね。

雅俊さん:器のデザインについては、研磨を特徴にしたデザインにしようと考えていました。研磨ってピカピカにするかマッドな仕上げにするか、均一のとれた仕上げにすることが基本なんですけれど、これはそうじゃないものに。以前から「研磨でもっと面白い表現ができる」と考えていたので、それをこの器で表現しよう。それでできたのがこの模様ですね。形も色々と思考錯誤しましたが、結局はシンプルな形がいいなと思って。で、完成したのがこの「艶麗-enrei プレートシリーズ」です。

 

 

海外からの反応も上々。これからも研磨技術でさらなる挑戦を。

――評価はどうだったんでしょうか。

雅俊さん:実際にできたものを見せて、「いいものができましたね」って先生からも言われましたし、そのあと「百年物語」でドイツで開催される大きな見本市「アンビエンテ」に参加して、言葉はよくわからないけれど、この商品を見てくれた方がすごくいい笑顔になってるのを見て、とても嬉しく思いました。実際に今では国内のお店だけじゃなく、海外でも取り扱ってもらっています。

 

――大成功だったわけですね。これからの展開のプランなど、もしあったら聞かせてください。

雅俊さん:そうですね、今後の展開としては、この研磨技術を建築にも使えないか、そういうことに挑戦していきたいと考えています。あとはやはり、チャレンジすること、考えてものづくりをすることで、それを使ってくださる人たちが喜ぶようなものづくりを継続していきたと考えています。それが未来のものづくりにとっても大切なことだと信じています。あとは、こういった活動を通してものづくりに興味を持ってもらえる若い人が増えてくれるといいなと考えています。私たちの工場でもそういう若い人達を育てて行きたいですね。

 

 

株式会社トミタ

燕市大曲2602番地

0256-62-5962


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