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蔵づくりのお菓子屋さん、新潟市東区の「マフィンと焼菓子のお店 マアルク」。

新潟市東区の細い路地を入ったところに、古そうなひとつの蔵が建っています。よーく見ると暖簾のようなものが風になびいていて、そこには赤い丸の模様があしらってあります。実はここ、今年の6月にオープンした「マフィンと焼菓子のお店 マアルク」というお店なんです。今回はオーナーの高橋さんに、お店をはじめたいきさつやこだわりを聞いてきました。

 

 

マフィンと焼菓子のお店 マアルク

高橋 貴羽子 Kiwako Takahashi

1987年新潟市西区生まれ。横浜の大学で管理栄養士の勉強をし、東京の専門学校でカフェやパティシエについて学ぶ。都内のベーカリーでケーキ製造を担当した後、新潟に戻って2023年に「マフィンと焼菓子のお店 マアルク」をオープン。「Snow Man」が好きなジャニオタで、担当は目黒蓮。

 

お菓子作りをはじめたきっかけは、小学校の図書館にあった絵本。

——高橋さんがお菓子作りの仕事に興味を持ったのはいつからですか?

高橋さん:小学生の頃、図書館にあった「わかったさん」という絵本シリーズが大好きで、そこに載っていたお菓子のレシピをノートにびっしりと書き写していたんですよ(笑)。思えば、あの頃からお菓子作りに興味を持っていたんだと思います。

 

——じゃあ、高校卒業後はパティシエになるための専門学校に進んだんでしょうか?

高橋さん:ところが親からの強い薦めがあって四年制の大学に進むことになったので、高校3年の半ばから大学受験に向けて猛勉強する羽目になりました(笑)。でも大学では栄養学を学んで管理栄養士の資格を取ることができたので、結果的には大学に進んでよかったと思っています。

 

 

——大学卒業後はどうされたんでしょう。

高橋さん:改めて東京にある専門学校でカフェやパティシエの勉強をしました。高校を卒業したばかりの若い子ばかり集まっていると思っていたので、歳が違って浮くのが嫌だなと思っていたんです。それで最初はお菓子作りを諦めて栄養士になろうかとも思ったんですが、諦めきれずに入学してみたら様々な年代の人がいて安心しました(笑)

 

——思い切って入学してみてよかったですね。その後はどんなお仕事を?

高橋さん:東京にあるベーカリーのケーキ部門で働きはじめました。私が入ったときには先輩が辞めることが決まっていて、入ったばかりなのにケーキ作りをすべて任されることになったんです。短期間でケーキ作りのノウハウをいろいろと叩き込まれましたね。

 

 

——新潟へはいつ頃帰ってこられたんですか?

高橋さん:ベーカリーで働いて3年くらい経った頃、心配した親に呼び戻されました(笑)。というのも、ベーカリーでの仕事がとにかくハードで、睡眠時間も休憩時間もなく働いていたんですよ。私自身、もう東京にいる必要はないのかなと思っていたので、新潟に戻ってきてビストロでアルバイトをはじめました。

 

——創作居酒屋では調理の仕事を?

高橋さん:主にホールを担当していましたが、調理から接客までいろいろと勉強させていただけましたね。私はあまり人と上手く話せないと思っているので接客にはまったく自信がなかったんですけど、この仕事を通して少し自信を持てるようになりました。

 

——いろいろなお店での経験が今に生かされているんですね。自分のお店を持ちたいというのは、ずっと思っていたことだったんでしょうか。

高橋さん:ずっと憧れていたし、周りからも「お店をやってみたら?」と薦められていたんですけど、自信がなくって自分にはハードルが高いと思っていました。

 

——それなのにお店をオープンすることにしたのは、どんなきっかけがあったんでしょう?

高橋さん:きっかけは、この店舗の元になった蔵なんです。ここは私のおばあちゃん家の蔵で、物置として使われていたんですけど、夫に「ここをリノベーションしてお店にすればいいじゃん」と言われたんです。最初は蔵がお店になるのか心配でしたけど、住宅設計事務所をやっている夫の実家にも協力してもらってお洒落な店舗が完成しました。

 

蔵をリノベーションしたお店で楽しめるマフィン。

——蔵を店舗にリノベーションするにあたって、こだわったことを教えてください。

高橋さん:ただでさえ細い路地なのに、入口が裏側にあるんですよ。だから通りに面して大きな窓をつけて、カウンターが見えるようにしました。イメージは「魔女の宅急便」のポスターで、カウンターのなかで佇んでいるキキです(笑)

 

——明確なビジュアルイメージですね(笑)

高橋さん:あと蔵の面影は残したかったので、梁や階段はそのまま使っています。扉もインテリアとして壁に埋め込みました。2年前にはリノベーションが終わっていたのに、私がなかなか手をつけられなくてずっと放置していたので、地元の人たちは「あそこは何だろう」って不思議に思い続けていたようです。

 

——2年も放置されていたんですね(笑)。蔵でお店をはじめてみて、いかがですか?

高橋さん:訪れたお客様も喜んでくださいますし、蔵が勝手にお店の個性を出してくれますから、本当に良かったと思っています。

 

 

——「マアルク」っていう店名も個性的ですね。

高橋さん:夫と話しているなかで生まれた店名なんです。私は人からよく「丸い」というイメージで例えられることが多いので、四角でも三角でもなく、やっぱり丸だろうということで(笑)。「美味しいおやつを食べて、毎日をまあるい気持ちで過ごしてほしい」という思いも込めました。

 

——いい店名ですよね。……なぜ図形しばりなのかは謎ですが(笑)。ロゴタイプも丸をモチーフにしていてお洒落ですね。

高橋さん:「ぴろ式デザイン事務所」を立ち上げてグラフィックデザイナーをやっている夫が作ってくれたんです。円だけを使って「マアルク」という文字を表現してくれています。

 

 

——高橋さんがお菓子を作るときに、こだわっていることがあったら教えてください。

高橋さん:毎日でも食べたくなるようなお菓子を目指しています。近所の子どもやお年寄りにも安心して食べていただきたいので、使う素材にはこだわっていますね。自分の子の離乳食を作るようになってから、食べ物に使われている材料を一段と気にするようになったんです。バターは使わず植物性の油を使ったり、精製した白砂糖ではなく甜菜糖を使ったり、身体に優しい自然素材を使うように心掛けています。

 

 

——誰でも安心して楽しむことができますね。

高橋さん:あと、食材を組み合わせることで生まれる美味しさや面白さも追求しています。今のイチ推しは「紅茶にキウイ」ですね。紅茶に合わせるとなると、一般的にはレモンやオレンジじゃないですか? それじゃ当たり前すぎて面白味に欠けるので、キウイと合わせてみたんです。ハマったときは嬉しいですね。

 

——それに対して、お客さんの反応はいかがですか?

高橋さん:「えっ、なんでキウイ?」みたいな反応も多いです(笑)。そうした反応を見ていると「あんまり意外性のある組合せはみんな嫌がるのかな」と思ったりしますけど、当たり前のお菓子を作るのも面白くないし、なかなか悩ましいところではありますね。

 

 

——それって、よくわかります(笑)。ものを作る人のジレンマですよね。他にも難しいと思うことってありますか?

高橋さん:私ひとりでお菓子を作っているので、商品の数には限りがあるんですよ。自分が考えていた以上に早く売り切れてしまうので、お客様に申し訳ないんですよね。開店してから1時間で完売しちゃったこともありました。

 

——大人気ですね。

高橋さん:私としてはお客様との会話も楽しみたいんですが、忙しいと会話している暇もありませんからちょっと寂しいですよね。お客様のなかにはご近所の人も多いので、ローカルトークが弾むような場所になれたらいいなと思っています。落ち着いてきたらイートインメニューの充実も予定していますので、ぜひお立ち寄りいただきたいですね。

 

 

 

マフィンと焼菓子のお店 マアルク
新潟市東区河渡本町8−48

10:00-16:00

日月火曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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