季節感を大切にしたお菓子づくり。
上古町の老舗「美豆伎庵 金巻屋」

食べる

2025.12.16

text by Kazuaki Yamazaki

古さと新しさが混ざり合う新潟市の「上古町商店街」。「カミフル」の愛称で親しまれ、町歩きを楽しむ人も多いこの地で、長く営業を続けてきたのが「美豆伎庵 金巻屋(みずきあん かねまきや)」という老舗菓子店です。和の風情が感じられる店内で、五代目の金巻さんからお菓子のこだわりについてお話を聞いてきました。

Interview

金巻 隆史

Takashi Kanemaki(美豆伎庵 金巻屋)

1993年新潟市中央区生まれ。京都の製菓専門学校を卒業後、滋賀の有名和菓子店で3年間修業を積み、2015年より「美豆伎庵 金巻屋」に就業。体を動かすことが好きで「新潟シティマラソン」や「スパルタンレース」にチャレンジしている。

「美豆伎庵」という言葉に込められた
和菓子に対しての思い。

――こちらのお店は上古町のなかでも老舗の印象が強いですけど、創業はいつ頃なんですか?

金巻さん:明治4年に「金風堂(きんぷうどう)」という店名で創業しました。私で五代目になります。

 

――創業154年ですか! ちなみに、当時はどのようなお店だったんでしょう?

金巻さん:冠婚葬祭に用いる式菓子をつくっていたようです。店頭販売をするようになってからは、「磯の花」という落雁をはじめ「中花まんじゅう」「本煉羊羹」などの看板商品がありました。

 

――いろいろなお菓子が並んでいたんですね。

金巻さん:そうですね。戦後間もなくすると、さらに商品は豊富になって洋菓子なんかも製造販売していました。こちらの本店だけではなく、新潟市内のスーパーやデパートにも当店の商品が並んでいたんです。

 

――そうだったんですね。今は洋菓子は?

金巻さん:滋賀にある和菓子店での修業から戻ってきた父が、お客様に喜んでいただけるのはどんな店なのかを考えて、商品を絞って和菓子に打ち込む道を選んだんです。それに合わせて店舗を改装し、店名を「美豆伎庵 金巻屋」と改めました。

 

――「美豆伎庵」って、どういう由来のある言葉なんでしょうか?

金巻さん:修業先から受け継いだ「美味しい小豆のなせる伎(わざ)」という言葉の通り、餡子を大切にしたお菓子づくりをしていこうと、店名に使わせていただきました。

 

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修業をした滋賀の和菓子店で、
自然と向き合ったお菓子づくりを学ぶ

――金巻さんは最初から「美豆伎庵 金巻屋」を継ごうと思っていたんですか?

金巻さん:はい、京都の製菓専門学校で学んだ後、父もお世話になった滋賀の和菓子店で3年間修業してきました。有名な和菓子店だったので、北は青森から南は大分まで、全国から和菓子店の跡取りが修業に集まってきていたんですよ。今でも連絡を取り合って、情報交換している仲間もいます。

 

――全国から和菓子の修業に集まるって……すごいお店なんですね。金巻さんはどんな修業をしていたんですか?

金巻さん:大きなお店だったので仕事も分業制だったんです。私はひたすらに餡子を炊く「餡炊き」を担当していました。「餡子は和菓子の命」と言われて重圧を感じながら仕事をしていましたね(笑)

 

――かなり難しい作業なんでしょうね。

金巻さん:小豆も生き物ですから、数値で測ることができないんです。だから塩梅を見ながら炊いていました。「餡子と会話できるようになれ」と言われていましたが、なかなか難しかったですね(笑)

 

――修業先で学んだなかで、今でも大切にしていることってあるんでしょうか?

金巻さん:素材にこだわる姿勢を学ばせていただきました。修業先のお店は自然と向き合い、その恵みに感謝しながらお菓子づくりをしているんです。そのため街なかではなく、自然豊かな里山のなかに工場がありました。そうした自然をリスペクトする気持ちを、私も大切にしているんです。

 

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季節感を大切にしながら
五感で楽しめる心豊かなお菓子。

――どのようなお菓子づくりを心がけているんでしょうか?

金巻さん:「心豊かなお菓子づくり」を店の合言葉にして、ひとつひとつ丁寧に手づくりしています。季節感を大切にしながら、味だけではなく見た目や香りなど、五感すべてで楽しめるお菓子づくりを目指しています。そのためには製菓技術を磨くだけでなくて、四季折々の自然からも多くのことを学ぶようにしています。

 

――それが「心豊かなお菓子づくり」なんですね。どんなお菓子がおすすめなのか教えてください。

金巻さん:「米万代(こめばんだい)」という、ひと口サイズのよもぎ饅頭です。しっとりした饅頭ともっちりした餅の食感を併せ持ったお菓子で、賞味期限が長いのでお土産にもおすすめですね。もちろん材料にはこだわっていて、糸魚川産の柔らかいよもぎを使っています。

 

――パクパクいけそうなサイズですね(笑)。他にもおすすめはありますか?

金巻さん:アーケードの改修工事が行われた際に、新しくなった上古町商店街を記念して発売されたのが「カミフルポッポ」です。歩きながら食べることができる、町歩きのお供として誕生しました。「きなこ」と「さつまいも」の二種類を定番としてご用意していますが、季節のよっては期間限定の「カミフルポッポ」もお楽しみいただけます。

 

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若い世代の人たちにも
和菓子の魅力を知ってほしい。

――「カミフルポッポ」って、若い人も気軽に買えそうなお菓子ですね。

金巻さん:和菓子を買いに来られるのは、どちらかといえば年配のお客様が多いので、もっと幅広く若い方にも親しんでいただきたいと思っているんです。若い方のなかには、和菓子を食べたことがないという方もいらっしゃるんです。そのためにも「カミフルポッポ」のような商品を生み出したり、和菓子の魅力を伝えたりしていきたいですね。

 

――そのために、どのようなアピールをしていきたいと思っていますか?

金巻さん:カフェ感覚でお立寄りいただけるよう、喫茶スペースを充実していけたらと考えています。白山神社やりゅーとぴあへお越しの際は、ぜひ足を伸ばしていただきたいですね。町歩きのご休憩にもご利用ください。

 

美豆伎庵 金巻屋

新潟市中央区古町通3-650

025-222-0202

8:30-18:00

不定休

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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