漫画やアニメの世界に楽しく触れられる「新潟市マンガ・アニメ情報館」。
カルチャー
2023.10.17
「マンガ・アニメのまち にいがた」と呼ばれる新潟市は、数多くの人気漫画家やアニメーターを生み出してきました。「ガタケット」「がたふぇす」といった漫画やアニメのイベントも盛り上がりを見せています。その新潟市を漫画やアニメの力で盛り上げるために作られた施設が、万代シテイBP2にある「新潟市マンガ・アニメ情報館」です。今回はスタッフの近藤さんに案内してもらいながら、いろいろなお話を聞いてきました。


新潟市マンガ・アニメ情報館
近藤 康宏 Yasuhiro Kondo
1987年新潟市北区生まれ。愛知県の大学在学中に漫画を描くことに目覚め、新潟に戻り「日本アニメ・マンガ専門学校」に入学。漫画の技術を磨く。卒業後もフリーターをしながら漫画を執筆し、2017年より「新潟市マンガ・アニメ情報館」で働きはじめ、広報やマンガ講座の管理を担当。バットマンやキャプテンアメリカなどのアメコミヒーローが好き。
「マンガ・アニメのまち にいがた」にあるふたつの施設。
——まずは「新潟市マンガ・アニメ情報館」の紹介をお願いします。
近藤さん:新潟ゆかりの漫画家やアニメーターの紹介はもちろん、人気キャラクターと遊んだり、声優体験ができたり、描き方や作り方を学べたりして、漫画やアニメの世界を体験できるミュージアムになっています。古町にある「新潟市マンガの家」も私たちで管理している施設なんです。
——もうひとつの「新潟市マンガの家」はどういった施設なんですか?
近藤さん:新潟にゆかりある漫画家の作品世界を楽しく体験することができる施設で、1万冊のコミックを読むことができます。それから漫画制作講座「マンガのいっぽ」を、予約なしで体験することもできるんです。

——古町と万代のふたつの施設に分かれているのは、スペースの問題があるからですか?
近藤さん:古町と万代の間で人の流れを循環させたいという狙いがあります。ついでに観光やグルメも楽しんでほしいんです。
——なるほど、新潟市全体の観光についても考えられているんですね。近藤さんは、こちらでどんなお仕事を?
近藤さん:来館者への対応をはじめ、企画展示の設営やアンケート集計、広報業務を担当しています。あと「新潟市マンガの家」で体験できる漫画制作講座「マンガのいっぽ」の企画立案や、講師の指導にも携わっています。出張漫画教室の講師として小中学校を訪問することもあります。

大学で描いたファンタジー漫画がきっかけで、漫画家を目指す。
——もしかして、近藤さんも漫画が描けるんですか?
近藤さん:ここで働く前は漫画家を目指していました。
——そうだったんですね。いつ頃から漫画家を目指すようになったんでしょうか?
近藤さん:大学時代に教室でイラストを描いていたら、それを見た先輩から「イラストだけじゃもったいないから、漫画を描いて読ませてくれよ」と言われたんです。その言葉でちょっと調子に乗ってしまって、漫画を描いてみたんですよ。そしたら、すっかり漫画を描く楽しさにハマってしまいました(笑)
——そのときに描いた作品を覚えていますか?
近藤さん:魔王が倒された後の世界が舞台になっている、魔王の息子が主人公のファンタジー漫画でした。自分で漫画のストーリーを語るのって、なんだか恥ずかしいもんですね(笑)
——その作品をきっかけに、漫画家を目指しはじめたわけですね。
近藤さん:大学卒業後に1年間フリーターをしながら学費を貯めて、新潟にある「日本アニメ・マンガ専門学校」に入学したんです。そこで2年間漫画の勉強をしてから、アルバイトのかたわら漫画を描き続けました。

——漫画家になるために、やっていたことはあるんでしょうか。
近藤さん:東京にあるいくつかの出版社に原稿を持ち込みました。目の前で編集者が原稿を読むんですけど、慣れていることもあって読むスピードがとても速いんです。その間、ドキドキしながら待っているんですけど、あまりの緊張でせっかくのアドバイスもほとんど頭に入ってこないんですよ(笑)
——それは緊張しますよね(笑)。編集者って怖いイメージがあるんですけど……。
近藤さん:そんなことないですよ。昔のドラマや漫画に出てくる編集者みたいに、原稿を目の前でビリビリ破いたり、ゴミ箱に捨てたりなんてことはないです(笑)。むしろ、しっかり対応してくれますし、丁寧にアドバイスをしてくれます。出版社も新しい漫画家を育てたいという思いがあるんでしょうね。

気軽に楽しく漫画に触れ、興味を持ってほしい。
——漫画家を目指していた近藤さんが「新潟市マンガ・アニメ情報館」で働くことになったのはどうしてなんでしょう?
近藤さん:「日本アニメ・マンガ専門学校」でお世話になった先生から「マンガの知識や技術を生かして働いてみないか」と誘っていただいたんです。僕も30歳を迎えるタイミングだったので、自分のなかでけじめをつけようと思って「新潟市マンガ・アニメ情報館」で働くことにしました。
——漫画家への未練はありませんでしたか?
近藤さん:自分の夢を諦めるのは辛かったんですけど、僕たちが手がける施設を通して漫画に興味を持ってくれる人が増え、そこから未来の人気漫画家が生まれたら嬉しいなという思いもあるんです。
——漫画に興味を持ってもらうために、どんな工夫をしているんでしょうか。
近藤さん:ガチで漫画家やアニメーターを目指す人だけを対象にして、専門的なことばかりやっていては、間口が狭くなるばかりだと思うんです。それよりも、バラバラのパーツを組み合わせることで顔が作れる福笑いといった展示のように、誰もが気軽に漫画に親しんだり、ものを作ることを楽しんだりできる企画や展示を考えました。

——具体的にはどんな企画や展示でしょうか。
近藤さん:「新潟市マンガの家」で体験できる漫画制作講座では、ロボットや妖怪、宇宙人といったキャラが描かれた100枚ものカードを用意して、それを砂漠や宇宙なんかが描かれた背景シートの上に並べてもらって、ストーリー性のある相関図みたいなものを作ってもらうんです。それぞれのキャラの間には「ハート」や「バチバチ」など、関係性を表すパーツを置いていきます。こうして、絵が描けない人でも漫画の世界を作れるような企画をやってみました。
——遊びながら世界観を作るワークショップといった感じですね。小中学校への出張講座では、どんなことを教えるんですか?
近藤さん:限られた時間のなかで教えるので、漫画を描くことの「さわり」の部分だけを教えます。顔や体のバランスの描き方を教え、最後に4コマ漫画を作ってもらうんです。でも丸ごと考える時間もないので、3コマ目までは描かれていて4コマ目の落ちだけを考えて空欄を埋めてもらうんですよ。最後は周りの人が作ったものと見比べてもらって「誰ひとり同じ結末を書いている人はいませんよね。これからも、それぞれが持っている個性を大事にしながら漫画を描いていってくださいね」と言って結びます。
——本当に教えたいのはそこなんですね。
近藤さん:とにかく気軽に楽しく学んでいただいて、漫画の世界に興味を持ってくれる人が増えると嬉しいですね。一方で、いつかは漫画を1本プロデュースして、自分がくじけた経験も生かしつつ、漫画家を目指して頑張っている人の応援もしていきたいです。
——「新潟市マンガ・アニメ情報館」や「新潟市マンガの家」をきっかけに漫画に目覚めた人が、いつかは超人気漫画家になったら素晴らしいですね。
近藤さん:そうなったら「今の自分があるのは、近藤先生のおかげです」って言ってほしいです(笑)
——最後に漫画の魅力について教えてください。
近藤さん:アニメをはじめとした映像作品は受動的なメディアですけど、漫画は自分の頭のなかでセリフを読んだり物語を描いたりする能動的なメディアだと思うんです。だから漫画を読んでいるときって、止まっているはずの絵が動いているように感じるんですよ。そういった意味では、漫画っていうのは読み手も作り手になれるメディアなんじゃないでしょうか。

新潟市マンガ・アニメ情報館
新潟市中央区八千代2-5-7 万代シテイBP2 1F
025-240-4311
11:00-19:00(土日祝日は10:00-)
1月1日(展示替えによる臨時休館あり)
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