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クリエイターがより高め合える場へ、「新潟アートディレクターズクラブ」。

デザイナーやカメラマンなど、新潟のクリエイターが参加する「新潟アートディレクターズクラブ」。クリエイター同士が互いに切磋琢磨し合うことを目的に、その年に制作された広告などのデザインの審査会を毎年開催しています。今年6月には、審査会当日の様子や出品作品を収録した年鑑「新潟ADCデザインアワード2022」が刊行されました。今年度の運営委員長を務める「ぴろ式デザイン事務所」の高橋さんに、「新潟アートディレクターズクラブ」の活動や、これからの方針について聞いていきました。

 

 

ぴろ式デザイン事務所

高橋 洋貴 Hiroki Takahashi

1985年新潟市生まれ。長岡造形大学を卒業後、就職を機に上京。その後横浜や高知などで勤めた後、新潟に戻り実家である「たかはし住宅設計事務所」で2年間広報を担当。2022年に独立し「ぴろ式デザイン事務所」を立ち上げる。自主制作では洒落やとんちから着想を得たユニークな作品の製作にも取り組む。奥さんが営む新潟市東区の「マアルク」のデザインは高橋さんが制作している。

 

新潟のクリエイティブシーンを盛り上げる、クリエイターのクラブ。

——まず、「新潟アートディレクターズクラブ(以下/新潟ADC)」とはどんな組織なのか教えてください。

高橋さん:新潟のクリエイターたちの横のつながりを作ったり、情報共有をしたり、輪を広げていくというのがひとつの目的としてあります。入会するために審査はないんですけど、「新潟在住の方」というのが今の入会条件です。その中で年に1回、その年のデザインを一堂に集めて、著名なクリエイターやアーティストの方に審査してもらうという審査会を開催しています。審査会としては今年で16年目です。

 

——クリエイター同士で刺激を与え合う場になっているわけですね。

高橋さん:それに、フリーランスでやっていると「自分のデザインって果たしてどうなんだろう」と思うことがあるんですけど、そういうふうに切磋琢磨できる環境があったり、賞をいただけたりすると自信にもつながるんですよね。

 

 

——審査会のほかには、どんな活動をされているんですか?

高橋さん:審査会をやって、その結果を年鑑にまとめて、年明けの1月に展示会をやって、というのが今の流れですね。展示会では審査会で入選・入賞した作品を展示するんですけど、毎年開催することにしたのは2年前からです。去年は新潟市美術館の市民ギャラリーで、今年は新津美術館の市民ギャラリーで開催しました。

 

——展示会を毎年開催することにしたのにはどんな理由が?

高橋さん:審査会も一般の方が入れるようなオープンな空間ではあるんですけど、「新潟ADCデザインアワード」といわれても、何をしているのか届きにくいところがあるんですよね。だから一般の方に向けて、新潟にもクリエイターやデザイナーがいることを知ってほしくて開催しています。

 

——年鑑は書店でも販売していますよね。それも「一般の方の手に取ってもらいたい」という思いからなんでしょうか。

高橋さん:そうですね。以前はただ年鑑を作って終わっていたんですけど、最近はこの本を一般の方にどう届けるかっていうところを考えていて。去年はトークイベントを開いたり、今年も「SANJO PUBLISHING」さんと「SAN」さんでイベントを開いて、そこで年鑑を販売したりしました。そういう販促イベントにも力を入れていこうという動きが出てきています。全国にADCがある中で、書店で年鑑を販売しているところは珍しいそうです。

 

これまでとは大きくかたちを変えた、年鑑「新潟ADCデザインアワード2022」。

——お話を聞いていると、会の在り方を少しずつ変えようとしているように感じます。

高橋さん:僕は去年初めて運営に入らせてもらったんですけど、当時の運営委員長だった方とお話していて「ただ年鑑を作るだけじゃだめなんじゃないか」とか、そういう気づきがあったんですね。15年もやっていると、やっぱり時代に合わせていかなければいけないところがあって……。

 

——それは例えばどんなところですか?

高橋さん:入会条件も「新潟在住の方」と決められていますけど、新潟出身の方が東京で活躍されている場合もありますし、今は2拠点で活動されている方も多いですから、そういう方も入会できるように制限を緩和していきたいと思っています。

 

——そういう方たちが入会できるようになることで、どんな影響があるんでしょう?

高橋さん:そういう方が審査会に参加することになれば、クリエイター同士の輪も多角的に拡がりますし、作品のバリエーションも豊かなものになって、さらに切磋琢磨できる環境になっていくと思うんです。そういうふうに少しずつ変えていければいいなっていうのは、今年の運営で話し合っていることですね。

 

 

——年鑑はどなたが作っているんですか? クリエイターの集まりなら、作ろうと思えば皆さん作れちゃいそうですが……。

高橋さん:基本は運営主導で作るんですけど、例年、グランプリの方が翌年の年鑑を作るという流れがありました。それがグランプリの特権というか。だけど2021年にグランプリを取られた白井さんという方と運営委員で協議をして、2022年は新人賞を取った角田さんが年鑑のアートディレクションを担当することになりました。十数年続いてきた流れがそこでちょっと変わったんです。

 

——へ~、じゃあ仕様もこれまでの年鑑とは変わったんでしょうか。

高橋さん:これまでA4サイズだったものが今年からB5サイズになって、手に取りやすい大きさになりました。あとは構成が昨年までとは大きく変わっていて、これまでは最初にグランプリを掲載した後、準グランプリ、新潟ADC賞、入選作品……といった流れだったんですけど、今回は審査会の一日の流れを落とし込んだような構成になっていて、審査がはじまってからグランプリが決まるまでの時系列になっています。

 

 

——読んでいて、グランプリが決まるまでの緊張感が伝わってきそうですね。

高橋さん:それと作品だけを掲載するのではなくて、運営委員の座談会があったり、上位4名のクリエイターの方たちに話を聞く企画があったり、雑誌のように読む人を飽きさせないような仕掛けを角田さんが作ってくれて。販売して1ヵ月くらいですけど、明らかに反応がいいなって感じています。

 

若いクリエイターが「新潟で活動したい」と思えるような機運を高めていきたい。

——今年度の運営委員長として、高橋さんの目標はありますか?

高橋さん:大きなテーマなんですけど、15年間続けてきたことを30年、50年、100年と続けていくために、変化させていくことは必要かなと思います。そういう流れや姿勢を示しながら、来年再来年に僕らが示した流れを汲んでくれるような人を育てつつ取り組んでいきたいですね。

 

——今後も継続させるためにも、この流れを途切れさせないことが大事なわけですね。

高橋さん:あとは入会の制限を緩和することで、会員数を増やしていきたいという思いもあります。審査会当日は、長岡造形大学や新潟デザイン専門学校の学生さんもスタッフとして関わってくれているんです。だけど就職を機に東京とか県外に出たり、地元に戻ったりしてしまう人が多くいて、それは新潟のクリエイティブシーンとしてももったいないことだなと感じていて……。

 

——確かにそうですね……。

高橋さん:せっかく新潟に来てくれたのであれば、こういう会社があるんだ、こういうデザイナーがいるんだっていうことを知ってもらって、「自分も新潟で活動してみようかな」と思ってもらえる機運を少しでも高められたらいいなと思います。僕も学生時代から審査会を見させてもらっていたので、ある種恩返しじゃないですけど、少しでもいい会にできるようにしていきたいですね。

 

 

 

新潟アートディレクターズクラブ

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