今年4月、新潟市西蒲区に「OC garden(オーシー ガーデン)」という名前のお店がオープンしました。幅広い種類の草花を扱うフラワーショップに、カフェ&バーを併設した複合施設です。こちらをはじめたのは、洋らんの生産や販売を中心に、ガーデニング・造園業などを50年以上続けてきた「株式会社OC garden(旧小原洋らん園)」。今回は社長の小原さんに、複合施設をはじめた背景や、運営するなかで大切にしていることについてお話を聞いてきました。
OC garden
小原 康人 Yasuto Obara
1981年生まれ新潟市西蒲区生まれ。「株式会社OC garden」代表取締役社長。東京で空間の装飾デザインの仕事を経験した後、13年前に祖父の代から続く「小原洋らん園」を継ぎ、「株式会社OC garden」へと名称変更。2023年4月に新潟市西蒲区で複合施設「OC garden」をオープン。自ら現場に行き、剪定なども行う。
——「株式会社OC garden」はもともと洋らんの生産を行う会社なんだそうですね。
小原さん:以前は「小原洋らん園」という名前で、ずっと洋らんの生産販売や出荷、輸出入をしてきました。この複合施設は4月にオープンして、草花の取り扱いに加えて、カフェやスポーツバーを設置したり、ドライフラワーの取り扱いをはじめたりしました。
——「小原洋らん園」自体はいつから続くお花屋さんなんでしょうか。
小原さん:50年以上前です。もともとは祖父の趣味からはじまったんですよ。祖父は医者をやっていたんですけど、花が好きで、趣味で洋らんの栽培をしていたんです。それをビジネスにしようと、今の会長である僕の父が祖父とふたりではじめたのが洋らんの生産販売です。
——小原さんが3代目として継がれたのは?
小原さん:13年前です。継ぐつもりはなかったんですけど、祖父が倒れてしまったので家族全員が介護に入って、洋らん園の仕事が手つかずになってしまったんです。それなら僕がやらなきゃなと。
——植物の知識はあったんでしょうか?
小原さん:僕は東京で空間の装飾デザインの仕事をやっていて、花を扱うことはあったんですけど知識はまったくなかったので、2年間は修業のようなかたちで「小原洋らん園」で働かせてもらいました。それに時代が変わるにつれて従業員の方たちの生活も守らなきゃいけないし、資金も調達しなければいけなかったので「OC garden」と名称変更して、株式会社にしました。
——この複合施設をはじめたのには、どんな背景があるんでしょうか。
小原さん:もちろん花の文化は古来からあるものなのでなくならないですけど、そこから細分化された洋らんとか、ひとつのものでずっと生計を立てていくって不可能に近いんですよね。それに花を好きな方って年配の方が多いので、若い方たちを含めたどんな世代の方にも足を運んでもらえる仕組みを作りたいなと思いました。それでこの場所をはじめたんです。
——お店の奥には植物がたくさんありましたけど、洋らんはないようですね……?
小原さん:今、洋らんはネットでの販売を中心にしています。らんってなかなか買わないでしょうし、もっと親しみがあることをして地元に根付くお店にならきゃだと思って、僕の代から草花の生産と販売をはじめました。
——なるほど。カフェを併設しているのも、植物に興味を持ってもらうための入り口を作るためなんですね。
小原さん:そうですね。入り口としてコーヒーを置いています。文化を学びながら新しいことを取り入れていくという、温故知新を大事にしていて。すべての年代性別の方に来てもらえるような場所にしました。
——じゃあ男性が入りやすくなるための工夫もされている?
小原さん:花って女性が好きなイメージが強いと思うんですけど、自家焙煎してこだわって淹れたコーヒーも用意していますし、夜はスポーツバーにもなるので、ビールを飲みながらスポーツ観戦をすることもできます。他にも、すべての層のお客様に来ていただけて、どんな方にも満足していただけるような仕組みをたくさん作りました。
——空間デザインのお仕事をされていた経験が生かされているわけですね。例えばどんな仕組みを作ったんでしょう?
小原さん:ひとつは、カフェの隣のスペースを区切って、企業の社長さんが集える場所を作りました。日々苦労されている社長さんにゆっくりしていただくために、月会費をいただいて、プライベートで特別間のある空間にしています。
——ご自身も社長さんだからこそ思いつくことですね。
小原さん:あとは施設全体をバリアフリー化していて、年配の方でも気楽に来られるように駐車場から店内奥まで段差がないようにしていますし、温暖化が進んでいるので店内は完全断熱で作っています。
——SNSでのお店の発信にも力を入れているようですが、それはどなたが?
小原さん: SNSはあえて担当をひとりに決めずに、スタッフみんなで教え合って運営してもらっています。20代から50代までのスタッフがいるので、幅広い年代の方の考え方を取り込むことができるんです。いつでもチームの意見が最優先ですね。
――意見を取り入れてもらえるっていうのは、従業員の方のやりがいにつながりますよね。
小原さん:キッチンの専門スタッフはいるんですけど、今日はキッチン担当でも明日には花の担当に入ることができますし、逆に今日は花の担当でも明日にはキッチン担当に入ることもできます。そういう、全員で支え合うチームを作っているんです。売上よりも従業員の生活がいちばん。もしも夢があれば僕が叶えていくし、一秒でも一緒に働いていたいですよね。
——カフェのメニューはどなたが考えているんでしょう?
小原さん:僕がメニューの大枠と使って欲しい食材を伝えて、そこから担当が見た目や味をブラッシュアップさせていきます。その後、スタッフ全員の意見を取り入れるために試食会を何度もしてメニューを作っていきます。
——「使って欲しい食材」というのは、例えばどんなものを?
小原さん:タイムリーなものですよね。初夏はイチゴ、秋は栗とか。うちは花屋なので、フォーシーズンいろんなものでお客様を楽しませなければいけないと思っています。既に秋冬のメニューの準備もしています。
——じゃあ季節ごとにメニューが変わるんですね。おすすめはありますか?
小原さん:「マキシカンライス」は予想以上にヒットしましたね。巻の野菜とお米を使って作ったメキシカンライスです。
——それで「マキシカンライス」なんですね(笑)。使う食材は地元のものにこだわっているんでしょうか。
小原さん:基本的に地元のものを使っています。ここは竹野町という地域で、僕もここで生まれ育ったんですけど、めちゃくちゃいい町なんです。お米にしても、僕が小さいころからお世話になっている方が作ったものを使っていますし、野菜もこの地域で採れたものを使っています。
——こちらをオープンされて数カ月ですが、何か思うことはありますか?
小原さん:花屋って普段使いされないんですよ。だけどここをはじめたことで、それまでは来る用事がなかった方たちの来る用事ができて普段使いしてもらえるっていうのはやっぱり嬉しいです。
――最後に、「株式会社OC garden」として今後計画していることがあれば教えてください。
小原さん:僕のなかではたくさん計画を作ってあるんですけど、まだ言えません(笑)。人との出会いによって、何を発動させるかっていうところですね。花というコンテンツは両親が作ってきた世界なので、それを細分化したいいものは作っていきながら、時代に合わせて変化していきたいと思います。
OC garden
新潟市西蒲区竹野町2506
0256-72-6357