長岡市小国町を拠点に活動する「オリガミデザイン」の池山さん。手漉き和紙を使い、カードケースやランプシェイド、帽子など日常生活で使えるアイテムを作っています。どんな視点でものづくりをしているのか、いろいろとお話を聞いてきました。
オリガミデザイン
池山 崇宏 Takahiro Ikeyama
1977年長岡市生まれ。長岡造形大学を卒業し、金型の製造メーカーに6年間勤務。工業デザインを学び直すために、長岡造形大学大学院へ進学。2011年に生活拠点を小国町へ移し、「オリガミデザイン」としての活動をスタート。
――池山さんは、大学卒業後にしばらく会社勤めをされていたんですね。
池山さん:長岡市の金型製造メーカーに勤めていました。当時、金型は「日本のものづくりの心臓部」と言われていたんですよ。でも、だんだんと生産拠点が海外に移ってしまって。そのうち仕事がなくなっちゃうのではと思い、会社を辞めて、長岡造形大学の大学院に入り直したんです。改めて工業デザインをしっかり勉強するつもりでした。
――作家を目指していたわけではないんですか?
池山さん:というより「工業デザイナー」を仕事にしようとしていたんですね。ただ会社に所属することは考えていませんでした。大学院在学中に「小国和紙」の製品デザインをやってみたいと思っていて、あわよくばそれを生業にできないものかとは考えていました。それから15年くらい、手漉き和紙を使った商品を作り続けています。
――池山さんが長岡市小国町に拠点を移されたきっかけを教えてください。
池山さん:手漉き和紙の生産拠点である小国町で創作活動をしたいと思っていました。手漉き和紙に限らず、伝統工芸みたいに日本の文化を象徴するものづくりは全国各地にありますよね。その肩入れをしたかったといいますか。私が勉強した「工業デザインの手法」を各地の技術に応用できないものかと考えていたんです。
――それは例えばどんなふうに?
池山さん:大学院時代からシート状のものを折ったり、切ったりしていました。わかりやすいものとしては、折り紙的な作り方をしたカードケース。それを「小国和紙生産組合」さんに見てもらったのがはじまりです。
――ということは、工業デザイン的な発想で小国和紙の使い方を提案したって感じですか?
池山さん:考えとしては、「小国和紙をいっぱい売れるようにしたいと思った」という感じです。要するに、どういう製品がいいかなと、紙の特性を生かした上で「用途開発」をしようと考えたわけです。しかも、生活の中に溶け込む道具がいいなと思いまして。「手漉き和紙」を使った日用品は昔も今もありません。でも紙製の日用品としては、あかり障子や、水に強い揮発性の油を塗った雨具、防寒着などがあります。とすると「手漉き和紙」だって、日常生活に取り入れられるだろうと思ったんです。
――それで、「小国和紙生産組合」さんにアイディアを持って行ったときは、どんな反応だったんですか?
池山さん:反応は薄かったですね(笑)。カードケースは自分でも大好きで、「いい道具だな」って自信満々でしたけど、それほど大きな反応ではなかったです。
――でもその後に小国町に引っ越されたくらいですから、双方の関係が深まる何かがあったのでは?
池山さん:「小国和紙生産組合」を運営していらっしゃる今井さんご夫婦をはじめ、小国の皆さんのお人柄に惹かれたんですね。
――「オリガミデザイン」さんの商品は、小国町の手漉き和紙を使っているのでしょうか?
池山さん:小国町で作られたものでないと「小国和紙」ではありません。「小国和紙」の唯一の生産拠点は、「小国和紙生産組合」です。もちろんそこで作られた「小国和紙」も使っていますが、「佐藤さんの紙」も使っています。小国でずっと働いていた佐藤さんが栃尾に工房を構えて、そこで和紙を漉いているんです。私はその和紙を「佐藤さんの紙」と呼んでいます。
――どんなものを作っているのかもう少し知りたいです。
池山さん:以前からの定番はカードケースにライト、ブックカバーなどです。去年の夏に、動物をモチーフにしたランプシェードを作りはじめました。ランプシェードはオブジェでもあるけど、道具でもありますよね。
――動物は最近作られたものなんですね。折り紙といえば動物みたいなところがあるから、意外に思いました。
池山さん:動物はですね、難しいので作らずにいたんです(笑)。開発に時間がかかるので、ずっと避けていたんですよ。
――何かきっかけがあったんですか?
池山さん:しばらく前までクラフトフェアへの出店を積極的にしていました。そこでお客さまに商品を手売りしていたんです。でもコロナ禍と育児が重なって、そういったイベントに参加できなくなって。昨年あたりからコロナ禍が落ち着いてきたので、「また新作をお見せしたいな」と動物の折り紙を作りはじめたんです。だって折り紙って、折る作業と完成品を楽しむものですもんね。やっぱり折り紙のメインストリームは動物なんですよ(笑)
――創作には、どんな思いを込めていますか?
池山さん:ひとつは、手漉き和紙が日常のワンシーンで使われるといいなという思い。もうひとつは、日本的なことに身を置いていたいという思いです。戦後にアメリカの文化が入ってくるようになってから、昔からある「日本的な要素」が薄れているように思うんです。
――そういう点で確かに、折り紙は日本らしい文化です。
池山さん:日本的な折り紙を商品の要素として入れているのは、そういう理由です。折り紙的な発想で、工業製品だって作れるだろうという考えで取り組んでいます。
――ものづくりをされているから「作家さん」という肩書きでお呼びしたくなりますが、お考えはまさしく「工業デザイナーさん」ですね。
池山さん:自分で制作している理由は、予算の問題と事業の規模が小さいからです。自分の手で作ることに特別意味はないんですよね。他の方が作ることも、まったく問題ないと思っています。ただ「大量生産するものではないか」と自分の手を動かしているだけなんですよ。そもそも手漉き和紙を使っている以上、大量には作れないわけですけれども。
オリガミデザイン
新潟県長岡市小国町横沢2163-1