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山で出会った生きものを刺繍する「itomici 山と刺繍」。

  • ものづくり | 2023.08.07

「山」をテーマにした刺繍作品を作る「itomici 山と刺繍」。登山と刺繍が趣味の伊藤さんが、山で出会ったタヌキやテン、ライチョウなどの生きものを刺繍して作品にしています。今回は伊藤さんが「itomici 山と刺繍」として活動をはじめたきっかけや、作品を作る上でのこだわりについてお話を聞いてきました。

 

 

itomici 山と刺繍

伊藤 道代 Michiyo Ito

大阪府生まれ。大阪教育大学中学校教員養成課程の美術コースを卒業後、中学校と高校で約3年間美術を教える。その後、滋賀の美術館に教育普及担当として勤め、子ども向けにワークショップや展覧会での展示解説などを行う。2年前に新潟市に移住し、昨年6月より趣味の登山と刺繍を組み合わせた「itomici 山と刺繍」としての活動をはじめる。

 

趣味の登山と刺繡が合わさってはじまった「itomici 山と刺繍」。

——伊藤さんはどんなきっかけで「itomici 山と刺繍」としての活動をはじめたんでしょうか。

伊藤さん:もともと登山が趣味で6年くらいやっているんですけど、北アルプスの燕岳(つばくろだけ)に登ったときに、植物とかを見ていて「山のものを刺繍してみたいな」と思ってこの活動をはじめました。山に行くとポジティブな気持ちをもらえるので、自分が感じた気持ちを表現したくなるのかなって思います。

 

——実は私、最近、登山に興味があって……。

伊藤さん:そうなんですね! 燕岳は山頂でケーキが楽しめますし、日本アルプスは食べものに力を入れている山小屋が多くてそれぞれ名物があったりと、そういうところも楽しいですよ。私も「山でこんなに美味しいものが食べられるんだ」って驚きました(笑)

 

——山頂でケーキって最高ですね! また後で教えてください(笑)。ところで、伊藤さんは刺繍も以前からやっていたんですか?

伊藤さん:刺繍は登山をはじめる前から趣味でやっていました。今はライチョウとかテン、タヌキとか、私が山で出会った生きものを中心に、刺繍ブローチを作っています。ムササビのように、まだ出会ったことのない生きものの刺繍もあるんですけどね。リクエストとかイベントに合わせて作っています。

 

 

――動物たちを作品にするときに何か気をつけていることってありますか?

伊藤さん:できるだけ嘘がないようにしています。私の作品はデフォルメした動物を刺繍しているんですけど、動物が好きな人から見ても「ちゃんと観察して作っているんだな」と思ってもらえるようにしたくて。あんまりキャラクター化しないようにしています。これからは植物も刺繍しようと思っているんですけど、それも「花びらの数が少ない」とかならないように気をつけたいです。

 

——作品を手に取った人にも、伊藤さんの動物愛が伝わりそうですね。

伊藤さん:夫が仕事で生きものの調査をしていて動物に詳しいんですけど、特にタヌキが好きなので、作品にもチェックが入るんです(笑)。例えば、タヌキのしっぽってしま模様で描かれることがありますけど、しま模様なのはタヌキじゃなくてアライグマなんですよね。そういうところも、見る人が見ると気づくと思うんです。だからかわいいだけじゃなくて、ちゃんと観察していますよっていうことも伝えたいですね。

 

大好きなライチョウを守るため、少しでも自分にできることを。

——刺繍やグッズにもされている「ライチョウ」って、絶滅危惧種にも指定されている貴重な鳥なんですよね。

伊藤さん:ニホンライチョウは1,700羽しかいなくて貴重なんだそうです。実は新潟にもライチョウがいるんですよ。生息地の日本最北限が新潟で、妙高の方にある火打山という山に20羽ほどいるんです。だから新潟の方にももっとライチョウに興味を持っていただけたら嬉しいですね。

 

——新潟でもライチョウに出会えるんですね。私も写真を見ましたが、なんだかぽってりしていてかわいい鳥ですね。

伊藤さん:そうなんですよ。とことこって歩くし、ニワトリくらいのサイズでかわいいんです。

 

——もしかして伊藤さんはライチョウを見たことが?

伊藤さん:北アルプスの双六岳(すごろくだけ)と立山(たてやま)で、2回だけ見たことがあります。時期にもよりますし、晴れた日には現れなくて、天候が悪い日に現れたりするんです。いつか雛も見てみたいなって思っています。

 

 

——最近だとオリジナルポストカードの売り上げを「ライチョウ基金」に寄付する、という活動もされていましたよね。

伊藤さん:ライチョウを撮影している写真家の森勝彦さんという方がはじめた「ライチョウエイド」という、クリエイターがライチョウのオリジナルグッズを発売して、その売り上げすべてを「ライチョウ基金」に寄付する活動があるんです。「ライチョウ基金」は「富山市ファミリーパーク」が立ち上げた基金なんですけど、私も「ライチョウエイド」のクリエイターをさせていただくことになって、そのきっかけで基金のことを知りました。

 

——じゃあその「ライチョウエイド」の活動として「ライチョウ基金」へ寄付を?

伊藤さん:今回は「まずは自分でやってみよう」と思ってライチョウのポストカードを作って販売してみたらありがたいことに完売したので、その売り上げを「ライチョウ基金」に寄付しました。購入してくださった皆さんのおかげでできたことですね。

 

——伊藤さんご自身もライチョウがすごくお好きなんですね。

伊藤さん:今年も立山ですごくたくさんのライチョウに出会えて、すごくかわいくて、ますます大好きになったんです。だけどどんどん数が減ってきてしまっているので、「私にできることってないのかな」と思って寄付をしました。今後も続けていけたらいいなと思っています。

 

夢は、山小屋やアウトドアショップで刺繍作品を扱ってもらうこと。

——登山のエッセイマンガも描かれていましたよね。イラストがかわいいです。

伊藤さん:実はマンガを描いたきっかけがあって。高尾山の近くに「Mt.TAKAO BASE CAMP」というお店があって、そこで年に1回「アウトドアの手作り本展」というイベントが開かれるんです。そのイベントに出て刺繍ブローチを販売したいと思ったんですけど、本を出さないと参加できないみたいで。そしたら主催者の方が「本が一冊でもあれば参加できますよ」と言ってくださったので、思い切って描いたマンガなんです(笑)

 

——じゃあマンガを描かれたのははじめてですか?

伊藤さん:そうなんです。だけど描いてみたら楽しくて、興味を持ってくださる方も多かったので、今年もまた本を作って参加しようと思っています。

 

 

——これからはどんな作品にチャレンジしていきたいですか?

伊藤さん:山の道具……バッグパックとかピッケルとか、テントとかも刺繍で作っていきたいですね。あと今は小さい作品を作っているんですけど、もう少し大きくて飾って楽しめるようなサイズで、山とかライチョウを刺繍したいと思っています。作品展ができるくらいのものを作りたいな。それからこれは夢なんですけど、山小屋とかアウトドアショップとか、山にまつわるお店で作品を取り扱ってもらえたらいいですね。

 

 

 

itomici 山と刺繍

撮影場所・Toko Toko

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