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老舗菓子店のDNAを受け継ぐ洋菓子店「patisserie ROOTS」。

オーナーは燕市の老舗菓子店「白根屋」の4代目。

JR燕三条駅の近くに、「patisserie ROOTS(パティスリー ルーツ)」という洋菓子店があるのをご存じですか? 実はこのお店、燕市で大正13年から続いている老舗菓子店「白根屋(しろねや)」の4代目がやっているお店なんです。とはいえ、「白根屋」とは違って和菓子はなく洋菓子のみ。どうしてわざわざ「白根屋」を離れて洋菓子のお店を始めることにしたのか、どんな思いでお菓子を作っているのか、オーナーの更科さんにお聞きしました。

 

 

patisserie ROOTS

更科 賢祐 Kensuke Sarashina

1983年燕市生まれ。東京の大学を卒業後、横浜の洋菓子店などでお菓子作りの修行を積む。新潟に帰ってからは家業の白根屋で洋菓子を担当し、2017年三条市にpatisserie ROOTSをオープン。音楽好きで、HI-STANDARDやTHE BLUE HEARTSなどのパンクロックが好み。

 

老舗菓子屋の「跡取り」と呼ばれて、でも本当になりたいのか悩んで。

——更科さんは燕市の老舗菓子店「白根屋」の4代目なんですよね?「白根屋」ってどのくらいの歴史があるんですか?

更科さん:大正13年創業です。初代が白根市の出身だったので、燕市にあるのに「白根屋」っていう店名にしたそうです。和菓子から洋菓子まで幅広いお菓子を作っていますよ。

 

——私も取材先で「『白根屋』で修業した」っていう人に何人も会いましたよ。更科さんは「白根屋」を継ごうと思っていたんですか?

更科さん:小学校の卒業文集に将来の夢を「お菓子屋さんになりたい」って書いたり、昔から常連のお客さんたちに「跡取り」と呼ばれたりしてました。でも高校卒業が近づいて進路を考える頃になると、自分が本当に菓子屋になりたいのか悩んでしまったんです。

 

——ご両親からは「家業を継いでほしい」というようなお話はなかったんでしょうか?

更科さん:父親は和菓子の仕事に誇りを持っていましたが、これからの時代を考えるとあまり勧められないという感じでしたね。ただ菓子屋をやるにしてもやらないにしても、一度東京に出ていろんなものを吸収した方がいいというふうに言われたので、とりあえず東京の大学に進学することにしたんです。

 

——お菓子の仕事をやろうと思うようになったのは、どうしてなんですか?

更科さん:2つ上の姉が神奈川の菓子屋に勤めていたんです。私は姉と仲が良くてお互いお菓子が好きだったので、都内の菓子屋を一緒に食べ歩いたりしてたんですよ。そうこうしているうちに、だんだん自分でもお菓子を作る仕事をしたいという思いが強くなってきたんです。

 

先輩の仕事を盗み見て覚えた、修業時代。

——お菓子作りはどこで修行したんですか?

更科さん:大学3年のときに菓子屋の求人を探してみたんですが、どこも求人を出していなかったので、大学の近くにあった菓子屋に直接飛び込みでお願いしたんです。そこの菓子屋は人手が足りているということで断られたんですが、代わりに横浜にある知り合いの店を紹介してくれたんです。そこで大学に通いながら研修生として1年間お菓子作りを学びました。

 

——行動力ありますね。で、菓子職人の修行はどうでしたか?

更科さん:朝早くから夜遅くまで働くのが当たり前だったから大変でしたね。私はお菓子作りの経験がまったくなかったんですけど、私が修行した菓子屋は作り方を一から十まで教えてはくれないんですね。やってみて、できないと、「俺の仕事を見てなかったのか?」って言われるから、チラチラと先輩の仕事を盗み見るようにするんですよ。そうすると今度は「よそ見してないで自分の仕事に集中しろ!」って言われちゃったりして(笑)。

 

——なかなか厳しいですね(笑)。

更科さん:でも、そのとき盗み見ていた作業を映像として覚えているから、自分が作るときにちゃんと役立っているんですよ。手取り足取り教えてもらってたら、かえって記憶に残ってなかったかもしれないですね。

 

——なるほど。その後は新潟に戻って来たんですか?

更科さん:はい。実家の「白根屋」で、辞めた職人に代わって。ただ、実家に帰ってきたものの、両親からは「これからは洋菓子の時代」と言われて。店を継ぐというよりも「自分で店をやった方がいい」と勧められました。自分としても洋菓子の専門店をやりたいと思っていたので、2017年にこの「patisserie ROOTS」をオープンしたんです。

 

「ROOTS」という店名に込めた思いとは。

——三条でお店をオープンしたのはどうしてなんですか?

更科さん:実はこの場所って、自分が中学生か高校生の頃に、両親が買っておいてくれた土地なんですよ。まだお菓子屋をやるかどうかも決まってなかったのに。本当にありがたいですよね。当時はまだ田んぼばかりだったんですけど、周りにいろいろできて今ではとてもいい場所になりました。

 

——なんと。すごいご両親ですね。お店の名前はどうやって決めたんですか?

更科さん:最初は「白根屋」の屋号を使うことも考えたんですけど、洋菓子店だったら横文字の方が合うかなと思いました。「ROOTS」には根源とか根っこといった意味があるんです。90年以上燕の地に根ざしてきた「白根屋」のように、自分も三条の地に新しい根を張っていきたいという思いを込めました。あと「白根屋」の「根」にも引っ掛けてあるんです。

 

——あ、なるほど。それでマークも切り株の根っこなんですね。

更科さん:そうなんです。リスと一緒に描かれているフォークは金属加工の街・三条を表しているんです。最初は包丁やナイフも考えたんですが、ちょっと殺伐としちゃうのでフォークに落ち着きました(笑)。

 

——自分でお店をやってみてどうでしたか?

更科さん:「白根屋」のファンの方もたくさん来てくれるんですけど、比較されることもあるのでプレッシャーは大きいですね。そんなお客様にも認めていただけるよう、いい仕事をしていきたいと思います。あとは経営者としての責任を感じることも多くなりました。これまではスタッフとして働くだけでよかったんですけど、今ではお店の売上げを意識しなければなりませんからね。

 

燕三条への地元愛と自分の作りたいお菓子へのこだわり。

——お菓子を作るときのこだわりってありますか?

更科さん:最初の頃って、お客様のニーズに合わせたお菓子を作っていたんです。でも合わせてばかりいると自分たちが楽しくないんですよ。だから最近は合わせるよりも、自分たちが食べたいと思うようなお菓子を作るようにしています。たとえば、自分はショーケースの中のケーキよりも、ファーブルトンやカヌレみたいな焼き菓子が大好きだから、そういうものを作り続けてきました。最初は全然売れなかったんですけど、だんだん人気が出て売れるようになってきたんです。自分を信じて続けていればお客様もついてきてくれるって確信を持ちましたね。

 

——それは大事なことかもしれませんね。他にこだわっていることってあるんですか?

更科さん:地元の燕三条が好きなので、お菓子作りにも意識して取り入れるようにしています。地産地消ということで地元食材を使うのはもちろん、自分はお菓子作りの道具も燕三条製品を使っています。カヌレの焼き型まで燕三条で作ったものなんですよ。使うことで地元の経済が回って少しでも地域に貢献できたらいいなって思ってます。あとはお菓子を通して燕三条の発信もできたらと思ってます。

 

 

——燕三条を発信するようなお菓子ってあるんですか?

更科さん:金属加工の街・燕三条を表している、クギとかフォークとかの形をしたクッキーがあります。燕三条のお土産におすすめです。あと、イチゴ、イチジク、ル・レクチェといった地元素材で作ったジャムもあります。最近は甘くないジャムが流行ってますけど、自分のジャムの定義としては保存食として糖度が高く日持ちするものなんです。だから甘くて濃厚なジャムを作っています。

 

大好きな焼菓子を充実させていきたい。

——今後やってみたいことってありますか?

更科さん:自分はケーキより焼き菓子が好きなので、もっと焼き菓子に力を入れていきたいんです。もう焼き菓子だけの店でもいいくらい(笑)。まあ、それは極端なので、現実的にはもう少し焼菓子の種類を増やしていきたいですね。そして「白根屋」みたいに、三条に根を張って長く親しまれるようなお店にしていきたいです。

 

 

燕市で長い間愛されて来た老舗菓子店「白根屋」のDNAを受け継ぎつつ、燕三条への地元愛あふれるお菓子作りをしている「patisserie ROOTS」の更科さん。その名の通り三条市にしっかりと根を下ろして、地元の人たちから長く愛されるお店になってほしいです。

 

 

patisserie ROOTS

〒955-0092 新潟県三条市須頃1-31

0256-47-1075

10:00-19:00

火曜休

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