見附市の商店街に素敵なパン屋さんがあるとの噂を聞いて、SNSを駆使して捜査を開始。すると、定休日前には買いだめをするお客さんがいたり、毎日のように通いつめるお客さんもいたり、日常に欠かせないとっても魅力的なパン屋さんだということが分かりました。しかもどの投稿も美味しそうなパンばかり。……ということで、さっそくThings編集部、「picto(ピクト)」にお邪魔して店主の宮島さんからお話を聞いてきました。
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宮島 順子 Junko Miyajima
1987年栃尾市生まれ。横浜にある国際フード製菓専門学校を卒業後、京都や東京、フランスで修行。2018年に「picto」をオープン。玉子サンドが大好きな働き者。
――宮島さんは、どんなキッカケでパン屋さんになろうと思ったんですか?
宮島さん:中学生のときに、なんとなくパンの本を買って作ってみたんです。でも「さっくりと混ぜる」とか、経験しないと分からない説明についていけなくて、材料を集めて配合しただけになっちゃったんです。しかも膨らまないし、美味しくないし……失敗に終わって。それで、しばらく放置していたんですけど、高校で進路を決めるときにやりたいことを考えていたら、ふと、中学時代の悔しさを思い出したんです。「あのときにできなかったパン作りをしてみよう」って。それでパン屋を目指して進学したんですよね。
――じゃあ、高校卒業後は専門学校に?
宮島さん:そうですね。内申点だけで合否が決まる専門学校を横浜に見つけて(笑)。そこを卒業してからは、京都にある「ラミ デュ パン」に就職して、約2年間お世話になって、それからワーキングホリデーを利用して渡仏したんです。
――渡仏? え? フランスに行ったんですか?
宮島さん:はい。フランスの郊外にあるパン屋さんで働かせてもらっていて。でもビザの関係で約1年で帰国しなければいけなくなって。日本に戻ってきてからは東京で働いていました。その後は研修ビザを取得できたので、再渡仏したんです。
――なかなかアグレッシブなんですね(笑)。再度、フランスに渡ってからもパン屋さんで働いていたんですか?
宮島さん:そうですね。今度はパリにあるパン屋さんで、1年半ぐらい働きました。で、またビザが切れたんですよね(笑)
――ビザって期間があるから大変ですね。その後は日本に?
宮島さん:いえ、フランスに留まり、知り合いからレストランのパティスリーの仕事を紹介してもらって、ビザも労働ビザで申請して暮らしていました。でも「何のためにフランスにいるんだろう。パン屋としての仕事ってどうなんだろう」って、いろいろ悩んでいた時期でもあったんですよね。
――ほうほう。
宮島さん:でも、「もう一度、パン屋としてチャレンジしてみよう」と思えて、今度はアルザスにあるパン屋さんで働きはじめました。「ここで働いてみて、ダメならダメなんだ」くらいの気持ちで。
――アルザスが宮島さんのターニングポイントだったんですね。どうでした?
宮島さん:どこよりも濃くて、充実した時間でしたね。日本だとパンは嗜好品に近い存在だと思います。でも、フランスだとパンを毎日食べているから、パン屋の仕事って日常の大切な根っこの部分なんです。そんなことを見て、感じることができたからこそ、日本で「picto」を開けたんだと思います。
――「picto」のベースを作れたってことですね。ちなみに、パン作りの面はどうでしたか?
宮島さん:ん~……今振り返ってみると、いい意味で働かされていたというか、言われた通りにベーシックに働いて日々をこなしていたというか……。ただパンの仕事をしているだけでした。だから、自分のパンというものを作れていなかったんですよね。でも、アルザスにいた頃にバゲットの大会に参加したら、自分のクセみたいなのが分かってきて、「こうやって作っていこう」が自分の中で生まれたんです。この経験があったからこそ、自分のパン作りができるようになったと思っています。
――それでは「picto」についても教えてください。どんなパン屋さんですか?
宮島さん:簡単に説明すると……フランスの良いとこ取りをしたパン屋です。フランスのパン屋ではパティスリーが一緒になっているからタルトなども販売されているし、お店によっては総菜も得意でキッシュなんかも並んでいます。だからそんな要素を自分ができる範囲で取り込みながら、日常使いで楽しんでもらえるような、バゲットやクロワッサン、サンドウィッチなどをメインに提供していますね。
――ふむふむ。
宮島さん:あとは、なるべく焼き立てやそれに近い状態を食べてもらいたいから、ちょっとずつ焼いて、焼き貯めしないように心掛けています。ひとりでお店をやっていると良い物をたくさん作ることができないから、なるべく良い物をいい状態で提供したいんですよね。
――その心遣い……近所に「picto」があったら毎日通っちゃいますね。フランスの日常も感じられるし。
宮島さん:フランスの日常って、どうしても日本では非日常にしかなれないんです。でも、それを楽しんでもらえて、ちょっとでも日本での日常の一部になってくれたら嬉しいと思って、毎日パンを焼いています。そして、自分の手で作れて、自分の身につく、そんなパン作りの魅力も感じてもらいたいんです。「パン屋さんって大変だよね」じゃなくて、「パン屋さんってカッコイイよね」って。
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新潟県見附市新町1-17-25
0258-86-8924