あつあつの真っ赤なタッカルビを、とろとろの黄色いチーズにつけて食べる韓国料理「チーズタッカルビ」。スパイシーなタッカルビと濃厚なチーズのコクがバランスよく、ごはんにもお酒にも合います。新潟市万代にある「コリアンダイニングぽちゃ」は、韓国から来たご主人・鄭さんが腕をふるう本場韓国料理のお店。ご主人のお母さん直伝の「チーズタッカルビ」が自慢メニューです。今回は鄭さんにいろいろお話を聞いてきました。
コリアンダイニングぽちゃ
鄭 賢眞 Jeong Hyunjin
1992年ソウル市生まれ。作曲の専門学校を卒業後、軍隊生活を経て日本語学校で日本語を学ぶ。その際、講師のボランティアをしていた、のちに奥さんとなる春香さんと出会う。2016年に来日し東京の日本語大学へ入学。新潟市に移住したのを機に2017年「鄭家(ちょんか)のタッカルビ」をオープンし、2019年には店舗を万代に移転し「コリアンダイニングぽちゃ」としてリニューアルオープン。
——以前は新潟市中央区の新和にあった「鄭家のタッカルビ」というお店でしたよね?
鄭さん:はい。前の店「鄭家のタッカルビ」があった住宅街は、交通の便がいい場所とは言えませんでした。常連さんたちからはずっと、料理と一緒にお酒も楽しみたいので、車じゃなくても来れるような交通の便のいい場所で営業してほしいと言われてたんですよ。それで「コリアンダイニングぽちゃ」は駅からもバスセンターからも近いこの場所で営業することになったんです。
——移転するだけじゃなくて店名も変えたんですね。
鄭さん:「鄭家のタッカルビ」だと日本ではあまりなじみのない「鄭」という漢字を使っているので、ちょっと覚えにくいかなと思いまして…。もっとたくさんの人に知ってほしいので、カタカナとひらがなだけの親しみやすい「コリアンダイニングぽちゃ」という店名に変えました。ちなみに「ぽちゃ」というのは韓国語で「居酒屋」という意味なんです。
——なるほど。確かに親しみやすくなりましたね。店名の他にも変わった所はあるんでしょうか?
鄭さん:場所柄お酒を楽しむお客さんが増えると思い、単品メニューを減らしてコース料理の種類を増やしました。また韓国のお酒も取り揃えています。韓国のお酒が飲める店は新潟ではめずらしく、万代エリアでも2〜3軒くらいなんじゃないでしょうか。
——こちらのお店ではどんな料理が楽しめるんでしょうか?
鄭さん:まず「チーズタッカルビ」。これは前のお店「鄭家のタッカルビ」でも看板メニューだったものです。私の母は韓国で20年以上チーズタッカルビ専門店をやっていて、その母から教わった直伝の味なんですよ。食材には鶏肉のほかにサツマイモやキャベツといった野菜が入り、そのほかに「トッ」という韓国のお餅も入ってます。20種類以上のスパイスで味つけしていて、そのほとんどは本場韓国から輸入したものを使ってるんです。
——「チーズタッカルビ」のオススメの食べ方ってありますか?
鄭さん:「チーズタッカルビ」を食べ終わったら、「ポックンパ」という韓国風のチャーハンを、具材のうま味がたっぷりしみたタレに入れ、〆のご飯にして食べると美味しいですよ。「ポックンパ」に使っているお米は、村上市にある妻の実家で作っている「岩船産コシヒカリ」です。
——この鍋は日本であまり見かけない鍋ですよね?
鄭さん:タッカルビとチーズが混ざらないように分かれている鍋です。ソウルにある厨房品専門市場から直輸入したものなんです。できあがったタッカルビをかき混ぜ、お好みで周りにあるチーズをつけながら食べてもらいます。鶏肉はヘルシーで美容にもいいので、「チーズタッカルビ」は女性に人気のある料理ですね。
——もう一品出て来ましたね。こちらはなんという料理ですか?
鄭さん:これは「サムギョプサル」です。豚のバラ肉とキムチ、ナムル、目玉焼きを一緒に焼いて、味つけ味噌といっしょにサンチュやサニーレタス等で巻いて食べる料理です。うちの「サムギョプサル」は「長岡ポーク」というプレミアムな豚肉を使っているのが特徴なんです。「長岡ポーク」は、クリーンな環境で、コシヒカリやミネラルウォーターを与えて育てられたアスリート豚なんです。以前より分厚い豚肉を使っているので、ぷるぷるの食感もお楽しみいただけます。
——鄭さんは日本に来る前は何をしていたんですか?
鄭さん:私は音楽が好きで、ソウルにある作曲の専門学校に行ってたんです。でも、その後、日本に留学して日本語を学びたいと思うようになって、ソウルの日本語教室で約半年、それから日本の新宿にある日本語学校へ半年留学して、日本語の勉強をしました。そのとき、ソウルで日本語講師のボランティアをしていた妻と出会ったんです。
——おお!日本じゃなく韓国で知り合ったんですね。
鄭さん:2016年に日本に来て東京の日本語大学に入学しました。その2ヶ月後に妻も日本に帰国して、婚約したんです。韓国に戻るんだったら音楽を仕事にしようと思っていましたが、日本で暮らす決心をしたのでお店をやることに決めました。新潟にやって来たのは、妻が村上市の実家で出産するためだったんです。その時に、妻のお父さんが新潟市内で空店舗を見つけてくれたので、そのまま新潟市でお店をやることになったんですよ。
——新潟に来てカルチャーショックだったことはありますか?
鄭さん:私が新潟に来た年は大雪の年だったので、まず雪の多さに驚きました。ソウルには雪が降らないんですよ。あと、お米に対するこだわりの強さ。韓国ではあまりお米にこだわることがないんです。それから、ソウルには海がなかったので、海のある土地で暮らすのも新鮮でした。新潟には魚を使った食べ物が多いので、食べられなかった苦手な魚を食べられるようになりました(笑)
——新潟の人についてはどんな印象を持ってますか?
鄭さん:人に対しての気遣いができて、心の温かい人が多いですよね。これは新潟の人だけではなく日本人すべてについて言えると思います。
——どんなお店を目指したいと思っていますか?
鄭さん:料理の味を日本人や新潟の人向けに合わせて提供する韓国料理店もあるようですけど、私は本場韓国の味をそのまま提供して、日本の人たちに韓国料理の美味しさを伝えていきたいと思ってます。新潟で韓国料理の店といえば「コリアンダイニングぽちゃ」って言われるようになりたいですね。それから、お店の雰囲気ももっと韓国のイメージに近づけたいと思ってます。お店に一歩足を踏み入れた途端、韓国を感じられるような…。「新潟から最短で行ける韓国」を目指したいですね(笑)
タッカルビ専門店をやっていたお母さんをはじめ、お父さんもおばあさんも韓国で飲食店を営んでいる中で育ったという鄭さん。新潟の人たちに本場の韓国料理の美味しさを伝えたいという思いで、奥さんと共に「コリアンダイニングぽちゃ」をオープンし、「チーズタッカルビ」や「サムギョプサル」などを提供しています。これからも新潟の人たちに、美味しい本場韓国の味を伝えてほしいです。