「RORNO」の遠藤さんが、職人の町・燕市でピッツァを焼く理由。

父と作り上げた窯で焼く、伝統的なナポリピッツァ。

「ピッツァ」と「ピザ」の違いを、ちょっとだけご紹介します。実はこのふたつは別物だってご存じでしたか? イタリアで生まれた「ピッツァ」は、ナイフとフォークを使ってエレガントに食べるもの。イタリアから移民によってアメリカ持ち込まれ、アメリカナイズされた「ピザ」はカジュアルに手を使って食べるもの。成り立ちが違えば、食べ方も違うのです。ちなみに「ピッツァ」の方は、窯で焼いたものしか「ピッツァ」として認められていないのだそうです。さて本日ご紹介する、燕市に店舗を構えるピッツェリア「RORNO(ロルノ)」は、伝統的なナポリ“ピッツァ”を提供しています。オーナーの遠藤さんに、ピッツァとの出会いや魅力などをたっぷりお聞きしてきました。

 

RORNO

遠藤忠彦 Tadahiko Endo

1990年新潟市生まれ。長岡工業高校を卒業、建築系の専門学校へと進み、鉄骨建造物の工場へと就職。不慮の事故をキッカケに飲食業界へ。2018年に「RORNO」をオープン。農家とのコラボ活動も精力的に取り込りつつ、帰宅後は大好きなゲームに没頭。

 

人生に転機をもたらした、不慮の事故。

――まずはじめに遠藤さんがピッツァ職人になろうと思ったキッカケを教えてください。

遠藤さん:正直、ピッツァ職人になろうと思ったのはここ数年の話なんです。以前は夢もなく、なんとなく学校に通い、のらりくらりと工場で働き、何も考えていない人生を送っていたんです。

 

――昔からの夢、ってわけではないんですね。

遠藤さん:そうなんですよ。飲食業に興味を持ったのにはキッカケがあって、工場で働いている時に事故にあったんです。足の指が3本なくなる大怪我をして、しばらく入院していたんですね。その時、なんとなく生きているからこんな事故にあうんだ、ダメだな…って思って、人生について、仕事について考え直したんです。当時は飲食業とはまったく無縁の生活をしていましたが、ある本を読んで一瞬にして飲食業に興味が湧いたんです。

 

――かなりの大怪我…。その本は、どういった本だったんですか?

遠藤さん:簡単にいえば、ある人が飲食店を立ち上げるストーリーです。読んでいて、めちゃくちゃワクワクして、自分もこんなことをしてみたい!って思ったんですよね。

 

――飲食店をしてみたい!って思っても、今まで飲食店の経験はなかったんですよね?

遠藤さん:まったくありませんでした(笑)。なので、地元の友人に声をかけ、「バンドやろうぜ!」ってくらいのテンションで、「飲食店やろうぜ!」って誘ってみました(笑)。

 

友人とともに追いかけ始めた飲食店の夢。

――地元の友人は、唐突な誘いにどう反応したんですか?

遠藤さん:もう、いきなりお店をはじめようかぐらいのノリで、快諾してくれました。でも、自分も友人も包丁すら握ったことのないド素人だったので、一旦落ち着いて、しっかりとスキルを身につけようとなりました。キッカケとなった本はバーを立ち上げたストーリーだったので、僕たちもバーがやりたくて、自分はバーテンダーの修行に、友人はレストランで料理の修行をスタートしました。

 

――はじめの段階ではバーだったんですね。

遠藤さん:本の内容に完全に影響されましたね。ただ、父の仕事の関係で、夢のことで悩んでいた時期もありました。

 

――お父さんの仕事ですか?燕市だと、職人さんですか?

遠藤さん:金属を高温で熱して加工する鍛造(たんぞう)という作業があり、父はその窯を作る工場に勤めていたんです。跡取り問題で、そのとき工場長として勤務していた父が事業継承をする形になって「遠藤築炉工業」としてリスタートしたんです。人手不足が深刻で…見ていられなかったので自分も手伝っていました。長男ってこともあり、継がないといけないのかな…って、夢を追い続けるのか、父の手助けをするのかで迷っていた時期がありました。

 

 

――家族も大切だし、自分と友人の夢も大切ですよね。どうされたんですか?

遠藤さん:胸の内を正直に父に話したんです。そうしたら、「やれよ!」って背中を押してくれたんです。

 

――親心ですね。素敵なお父さんじゃないですか。

遠藤さん:本当にありがたいです。そんなこともあり、父の仕事である窯で何かできないかなって考えて、出た答えが窯を使って焼き上げる“ピッツァ”だったんです。ちなみに「RORNO」のピッツァ窯は、父とふたりで1年間かけてコツコツと作り上げたんですよ。ナポリの伝統的な製法と、父の鍛造で培った技術を合わせて。

 

――ナポリと燕市の融合ですね。なおさら「RORNO」のピッツァがおいしく感じられるストーリーです。

遠藤さん:燕市で作られた窯を使っているので、店名はツバメを意味する「RONDINE」と、窯を意味する「FORNO」を合わせた造語なんです。そして、窯にはナポリの師匠からアドバイスをもらい、ナポリの火山灰を含んだ石を使い、おまじないとして1ユーロを眠らせてあります。

 

考え方が変わった、ナポリでのピッツァ修行。

――「ナポリの師匠」って、ナポリに行かれていたんですか?

遠藤さん:父に背中を押してもらってからすぐ、新潟市内のピッツェリアで修業をはじめたんです。その店長にナポリに連れて行ってもらって、「ナポリピッツァ職人協会認定試験」を受けさせてもらいました。ベテラン職人の前での実技は緊張しましたが、なんとか合格をして。

 

――それじゃ、認定職人なんですね。すごいじゃないですか!

遠藤さん:ただ、合格はしたものの、肌でナポリを感じなければと、あてもなく、言葉も話せないのにそれからまたナポリへ飛んだんです。でも何軒ものピッツェリアに修業を頼みこんでは断られたり、働けたと思ったらナイフを突きつけられたりいじめを受けたり大変でしたね(笑)。

 

――ナイフって…。怖いですね。修業はできなかったんですか?

遠藤さん:言葉も分からない日本人を受け入れてくれる親切な親方にたまたま出会うことができて、修行ができました。ナポリの食文化や考え方、ナポリピッツァとはどのような食べ物なのかなど、とにかくナポリ文化を学ことができた貴重な時間でしたね。

 

 

――ナポリピッツァとは、どのようなものですか?

遠藤さん:気取った星付きの高級レストランで食べるイタリア料理とはまったく違って、誰でも気軽に食べられる大衆食です。安くて、うまくて、お腹いっぱいになる。生活に沿った食べ物だと感じました。その感覚をそのまま日本でも表現しようと思い、「RORNO」では小麦、モッツァレラチーズ、塩、生ハム、トマト缶などの食材をイタリアから取り寄せたりしています。定番のマルゲリータやマリナーラは気軽に食べてもらえるように、限界までリーズナブルにしました。父と作り上げた窯で焼く、大衆食としてのナポリピッツァ。多くの人の日常食になってもらえたらと思います。

 

――「RORNO」でしか食べられないナポリピッツァ。遠藤さんの人生が詰まっていますね…って、忘れていました。一緒にやろうと誘った友人はどうしたんですか?

遠藤さん:彼も日本での修行後にローマで本格的なイタリア料理を学び、「RORNO」のオープンと一緒に合流しましたよ。ちゃんと登場しましたのでご安心ください(笑)。

 

伝統料理を提供しているからこそ、店としての伝統を残したい。

モノづくりの町・燕市の職人技術と、ナポリの伝統から生まれた「RORNO」。父と子のお互いを思いやる気持ちから生まれた窯と、ナポリの伝統を肌で感じたからこそ生まれたナポリピッツァ。これからのことについては、「伝統料理ナポリピッツァを提供しているからこそ、店としての伝統を残していきたい。この場所だからこその新たな取り組みにもチャレンジしていきたい」と遠藤さん。燕市の工業だけでなく、農業にも目を向け、これからは飲食店から新しい農産物も発信していきたいと語ってくれました。地域と地域を結ぶ、新たな取り組みもこれから起きそうな予感がします。

 

 

 

RORNO

新潟県燕市1222

0256-64-7455


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