2000年代に入った頃から地域おこしの取り組みが活発になり、「ご当地アイドル」「ご当地キャラ」「ご当地ヒーロー」などが続々と生まれました。今回紹介する「流星戦士フラスター」は、自然豊かな胎内を守るために戦い続けているヒーロー。紅葉に染まる胎内で待っていたのは「フラスター」本人と、「フラスタープロジェクト」の朝田さんでした。
フラスタープロジェクト
朝田 永二 Eiji Asada
1995年胎内市生まれ。専門学校卒業後、アミューズメント系企業に就職。その傍らで「フラスタープロジェクト」を立ち上げる。特撮ヒーローのなかでは、ウルトラマンマックスや仮面ライダークウガなどが好き。
——おおっ! 「フラスター」まで一緒に来てくれたんですね! ちょっと緊張してしまいますけど、今日はよろしくお願いします。
朝田さん:よろしくお願いします。「フラスター」も張り切ってます(笑)
——「フラスター」を知らない人もいると思いますので、ご紹介をお願いします。
朝田さん:「降り注げ勇気! 咲き誇れ正義! 流星戦士フラスター!」をキャッチフレーズに、胎内を拠点に活動している非公認のご当地ヒーローです。
——そのキャッチフレーズや「フラスター」という名前には、どんな意味が込められているんですか?
朝田さん:咲き誇る花と降り注ぐ星のパワーを宿した戦士なので、「フラワー」と「スター」を掛け合わせて「フラスター」と呼んでいます。
——どうして花と星のパワーなんでしょう?
朝田さん:「フラスター」が守っている胎内市は、毎年「チューリップフェスティバル」が開催されるほどチューリップの栽培が盛んで、「胎内自然天文館」があって「胎内星まつり」がおこなわれるくらい綺麗な星空が見えることで有名なところなんです。そんな胎内市のご当地ヒーローですので、花や星のパワーを宿して活動しています。
——なるほど。だからスーツにもチューリップや星が?
朝田さん:そうなんですよ。マスクには赤いチューリップの花や茎、葉が見られるんですけど、もっとよく見ていただくとチューリップの花は赤い星にも見えてくると思います。同じように、胸にも赤い星とチューリップがイメージされたプロテクターがついているんです。緑の「ガーデニックライン」はチューリップパワーを全身に送り、金の装甲は星の力を結晶化して身を守る「コメットラング」になっています。
——スーツにも胎内からのパワーが込められているんですね。「フラスター」はどんなふうに誕生したんでしょうか?
朝田さん:実は地球で生まれたんじゃなくて、よその星から胎内にやってきたヒーローなんです。大好きな胎内の人情や自然を守るために戦い続け、胎内を知ることで成長していくストーリーになっています。そこは僕たち「フラスタープロジェクト」のメンバーともシンクロしている部分なんです。
——「フラスタープロジェクト」というのは、どういうチームなんですか?
朝田さん:「フラスター」のヒーロー活動を支えるための、僕を含めたチームです。
——その方々のおかげで「フラスター」は、ご当地ヒーローの活動を続けていられるんですね。では、活動をはじめたいきさつをお聞きしてもいいでしょうか?
朝田さん:僕はもともと特撮ヒーローが好きだったんですけど「超耕21ガッター」をはじめとしたヒーローの影響もあって、ご当地ヒーローに興味を持つようになりました。ただ最初は自分だけで実現できるとは思っていなかったので、企画だけを考えて運営はどこかにお願いしようと思っていたんです。
——どうして自分で運営することになったんですか?
朝田さん:僕の話を聞いた高校の先輩や専門学校の友人が協力してくれることになったので、それなら自分たちの手で実現しようということになって「フラスタープロジェクト」が立ち上がりました。
——それは心強いですね。胎内の人々の前に姿を現したのはいつなんですか?
朝田さん:2017年に「胎内スキー場」で開催された「胎内スキーカーニバル2017」というイベントのときです。準備は整ったものの、どうデビューしたらいいのかわからかったので「道の駅 胎内」の駅長さんに相談したんです。そしたらこのイベントをご紹介いただいたんですよ。それ以来、胎内の方々には大変お世話になってきました。皆さんのご協力のおかげで活動を続けてこられたんです。
——胎内には観光PRに前向きな方が多い印象があります。ところで、デビューイベントはいかがだったんでしょう?
朝田さん:とにかく不慣れだったものですから、反省することはたくさんありましたね。なかでも司会進行を務めるMCの方との絡みが上手くいかなくてギクシャクしてしまい、大変ご迷惑をおかけしてしました。「フラスター」は王道ヒーロー路線で行くつもりだったのに、イベントが終わる頃には「ポンコツヒーロー」のレッテルを貼られてしまっていたんです(笑)
——私も「YouTube」でイベント動画を見ましたけど、あれってわざとじゃなかったんですね(笑)
朝田さん:わざとじゃなかったんです(笑)。でも結果としては「ポンコツヒーロー」になったことで、子どもたちに親しみを持ってもらえるので良かったと思っています。
——確かに、子どもたちの楽しそうな笑い声が聞こえるショーですよね。
朝田さん:子どもだけじゃなく大人も一緒に楽しめるショーにしたいんです。毎回同じ観客ではないことも意識して、「フラスター」の設定やストーリーを知らなくても楽しめるように気をつけてショーを考えています。飽きないように笑いを盛り込みながら最初はゆるく心をつかんで、最後は熱く盛り上がるショーになるよう心がけているんですよね。
——誰もが楽しめるショーを心がけているんですね。
朝田さん:そうなんです。「ポンコツヒーロー」と呼ばれてしまったデビューイベントでしたけど、一緒に記念写真を撮影した保育園児が「フラスター」に「これからも応援するから、がんばってね」と言ってくれたんです。その言葉が今でも活動の励みになっていますね。
——「フラスター」はどんな敵から胎内を守っているんですか?
朝田さん:まず「カソラス」。美しい胎内をゴミで人が住めないように汚して過疎らせ、誰もいなくなった街を独り占めしようと企むカラスの怪人です。「ダッジャ〜レオン」は胎内の環境破壊を恐れるあまり、寒いダジャレで自然を凍結させて永久保存しようと企んでいるライオンなんですよ。
——みんな力づくで胎内を奪おうとはしないんですね(笑)
朝田さん:回りくどいですよね(笑)。たとえ敵キャラであっても、子どもたちには嫌ってもらいたくないんですよ。あと、やっていることは悪いことなんだけど、みんな根底には胎内への愛があるんです。
——言われてみるとそうかも(笑)。子どもたちにとっても、親しみやすい敵役になっているんですね。ところで、ずっと気になっていたんですが、「フラスター」が持っているのはいったい何ですか?
朝田さん:これは「ぽっかぽカリバー」と「めでたシールド」という武器や防具です。「米粉フェスタinたるが橋」っていう、米粉を使った商品を集めたイベントに参加した際、せっかくだから米粉にちなんだストーリーにしようということで生まれました。
——のぼり旗かと思ったら武器だったんですね……(笑)
朝田さん:米粉を使った鯛焼きやたこ焼きを提供している「ぽっかぽか」というお店にちなんで「ぽっかぽカリバー」「めでたシールド」が生まれたんです。「めでたシールド」はそのお店の人気商品「めでたい焼き」をモチーフにしています。そのショーを見ていた女の子が、手作りの「めでたシールド」持参で次のショーに来てくれたんです。「子どもたちに夢を与えることができている」と実感できて嬉しかったですね。
——それは嬉しいですね。それにしても、けっこう地元のお店とがっつりコラボしているんですね。
朝田さん:「にぼにゃん」というラーメン店とコラボして、4コマ漫画を連載していたこともあります。その漫画の作風が好評だったので、コラボ期間が終わった後も登場人物を流星戦士フラスターのキャラクターだけに絞って連載を続けています。でもヒーローショーより漫画に人気があるのは、正直言って複雑な心境ですね(笑)
——漫画というスタイルが、多くの人にとって親しみやすいのかもしれませんね。今後はどんなふうに活動していきたいと思っていますか?
朝田さん:全国どころか胎内での知名度もまだ低いので、「胎内のヒーローは?」と聞かれたら誰もが「フラスター」と答えてくれるよう、胎内を代表するキャラクターにしていきたいですね。そのためにも「継続は力なり」という言葉を信じて、できることをやりながらキャラクター活動と胎内の発信を続けていきたいと思っています。
——何か夢はあるんですか?
朝田さん:イメージソングのCDを作ったり、胎内の観光スポットを紹介する動画コンテンツを立ち上げをしたりしたいんです。そして、ゆくゆくは「フラスター」をテレビドラマ化できたら嬉しいですね(笑)
流星戦士フラスター