服作家「SAGE**」が仕立てる、思いやりと愛情の詰まった服。
ものづくり
2024.10.21
服作家の「SAGE**(セージ)」さんが仕立てる服は、見た目の可愛らしさはもちろん、作り手の思いや優しさが細部に表れています。一度試着しただけでも、その着心地のよさにうっとりしてしまうんだとか。昨年、東京から新潟へ拠点を移したそうで、新発田の「seats」で開催されていた個展へお邪魔してきました。セージさんと一緒に出迎えてくれたのは奥さんの昭子さん。服のことやおふたりのことなど、いろいろなお話を聞いてきました。


服作家
セージ
1980年新潟市北区(旧豊栄市)生まれ。高校卒業後、文化服装学院へ進学。卒業後はパタンナーとして企業に勤める。退職後はフリーランスのパタンナーとして活動し、妻の昭子さんとの出会いをきっかけに、2014年より服作家「SAGE**」として活動をスタート。昨年3月に新潟へ戻り、新発田市でアトリエを構える。「出張!なんでも鑑定団」に出演し、地上波で婚約発表をした。
手仕事の美しさを感じる、物語のある服。
――セージさんは以前は東京を拠点に活動されていたそうですね。新潟にはいつ来られたんですか?
セージさん:昨年の3月です。それまでは妻の昭子さんとお店をやっていたんですけど、そこを閉めて、ふたりで住む家を東京で新しく建てることにしたんです。それで、家ができるまでの2年間の新婚生活を、僕の地元である新潟で過ごそうと思って戻ってきました。今も東京に家があるんですけど、こっちにアトリエを構えて行ったり来たりしています。
――ちなみに東京ではどんなお店をされていたんですか?
セージさん:僕の服と、妻が作っている「そばがら枕」がメインのアイテムで、あとは知り合いにものづくりをしている方がたくさんいるので、その人たちが作ったものを紹介するお店をやっていました。
――今回の個展もセージさんの服と一緒に、他の作家さんたちの作品が並べられていますよね。
セージさん:今後も東京の作家さんを今回のような個展で紹介していきたいと思っていますし、逆に新潟で新しく知り合った方たちのことも東京で紹介するような役割を担えたらいいなと考えています。24年ぶりに新潟へ帰ってきたので、この「seats」さんみたいに、おしゃれな場所が新発田にあるって知らなくて。他にも新発田を盛り上げている同世代の方たちがいることを知って、すごく面白い街だなって思います。

――セージさんが作っている服のことについて教えてください。どんなところからアイディアを得て仕立てているんですか?
セージさん:僕は手仕事が残っている時代の服にとても惹かれるんです。例えば、ナポリの職人が仕立てたビスポークシャツ。すべてをミシンで縫っているわけではなくて、部分的に手仕事を入れて仕立てられているんです。そういうものにとても影響を受けています。
――手仕事だからこそのあたたかみがありますよね。
セージさん:特に好きなのは100年ぐらい前のフランスの服です。「ファーマーズメイド」と呼ばれる、農民たちが自分で着るために仕立てていた服があって、長方形の布を組み合わせて作られているんです。

――長方形の布からでも服になるんですね。
セージさん:反物の耳から耳まで使って、足りないところには三角や四角の布をはめ込むことでゆとりを持たせて運動量を作るような服で。それまでは曲線の型紙の世界に身を置いていたので、ファーマーズメイドの服を見たときに、まったく知らない宇宙があったっていうことに気づかされました。
――服を通して時代背景や当時の人の暮らしぶりが見えてくるのは面白いですね。
セージさん:それから、ひとつひとつの服に物語があるんです。例えば今回展示している「ピナフォア」は、19世紀の女の子のエプロン。「アンという名の少女」という「赤毛のアン」を題材にしたドラマに登場する女の子がこのエプロンを着ていて、その当時のことを想像して仕立てた一着です。
――そういうストーリーを知るとすごくときめきます。仕立てられている服はどれも女性用なんですか?
セージさん:昭子さんをモデルに服を仕立てているので女性ものなんですけど、コートとか、大きいサイズのものは男性でも着られます。実際、今日のロングシャツとかは女性用のものを袖丈だけ直して着ています。
――へ〜! どの服も昭子さんをイメージして仕立てているんですね。。
セージさん︰昭子さんが着たら似合うだろうなっていう服を考えているんですけど、「私は着ない」って言われることもあります(笑)

昭子さんとの出会いから、服作家の道へ。
――そもそも、セージさんが服に関わるお仕事に興味を持ったきっかけってなんだったんでしょう。
セージさん:高校生のとき、おしゃれが好きで新潟市内の洋服屋さんに通っていました。当時はパリコレクションの最新の服が新潟で買えるような状態だったんです。「マルタン・マルジェラ」とか「ラフ・シモンズ」とか。そういう最新の服を目にする機会があって、興味が湧きました。
――新潟で、世界の最先端の流行に触れられる時代だったわけですね。
セージさん:僕が通っていた高校は女子だけ被服科があったんですよ。僕は普通科なのに被服科の先生のところに行って「服の勉強がしたいと思っています」って相談をして。そしたら文化服装学院っていう学校があると教えてもらったんです。行ってみたいなと思って、高校卒業後は文化服装学院で3年間、服の勉強をしました。

――「SAGE**」として服作家の活動をはじめられたのはいつからなんでしょう?
セージさん:活動をはじめたのは2014年ですね。もともと「パタンナー」と呼ばれる服の型紙を引く仕事をしていたんですけど、会社を辞めて、フリーランスのパタンナーになったんです。自宅で仕事をするようになると休憩時間に外に出ようという気持ちが出てきて、そのとき喫茶店で知り合ったのが昭子さんでした。
――あら、素敵な出会い方ですね。
セージさん:昭子さんの前の旦那さんが俳優の方なんですけど、その方が亡くなられた後で、自宅に居場所がなくて気分転換に出かけていたそうなんです。そのタイミングで知り合ったので、彼女はこれからどうやって生きていこうか悩んでいましたし、僕もちょうどフリーランスとして生きていくという岐路に立ったタイミングでした。
――おふたりとも人生に大きな変化があったタイミングで知り合われたと。
セージさん:その頃僕は自分で仕立てた服を着ていたんですよ。そしたら昭子さんは「すごくいいから服を仕立てて売ったらいい」って言ってくれて。それで僕は「昭子さんがモデルをやってくれるんだったら作れるよ」って。それをきっかけに服作家として活動をはじめることになりました。

――昭子さんとの出会いが服作家としての道を歩みはじめるきっかけになったわけですね。
セージさん:その頃から背中を押してくれているんです。昭子さんがいるから作家になれたし、この10年、ふたりのパートナーシップで生きてきたって感じています。
昭子さん:私は彼より19歳上なんですよ。それだけ違うと価値観の違いで喧嘩になることもあったんですけど、話し合えば話し合うほど、求めている世界は一緒なんだなと分かって。時間はかかりましたけど、全部を一緒に歩んでいきたいなって思いました。
――昭子さんから見て、セージさんが仕立てる服はどういう印象ですか?
昭子さん:この人は愛情深い人なんです。それは誰に対してもですけど、服を仕立てるときにもその愛情が表現されていて、縫い目の裏が肌にあたっても痛くないようにされているんです。
――セージさんの人柄が服の細部に表れているんですね。
昭子さん:服の曲線もすごく体に優しいし、着心地がよすぎて羽とか雲をまとっているみたいで。でもそれは着てみないと分からないんです。だから手に取ってくれたお客様には「買わなくてもいいからとにかく着てみて」ってすすめます。一度着てみると、みんな目がハートになっちゃうから(笑)
セージさん:身にまとったらキュンってして、連れて帰らざるを得ないっていうところまで持っていくのが僕の仕事なんですよ(笑)

――おふたりの関係性が素敵で、お話を聞いていてほっこりします。
セージさん:昭子さんは芸能人の奥さんだったこともあってか、人生には波があるっていうことをすごく理解して応援してくれているなって感じます。彼女と出会ってから、のるかそるかのときは「のる」っていう人生を歩んでいます。一度の人生なので面白いことがあったら絶対そっちに曲がろうって。
昭子さん:才能ある人の背中を押す癖があるんですよ。「いけ!」みたいな(笑)
――最後に、セージさんはどんなことを大切に服の仕立てを続けたいですか?
セージさん:服っていうのは単純に、人の気持ちを上げることができるツールだと思っているんです。なので僕が仕立てた服を身にまとうことによって、ちょっと気持ちが落ちていたり気分が乗らなかったりするときも胸を張って歩けるようになれたらいいなって。セージの花を煎じて飲むと嫌な思い出を忘れることができると言われているんです。そういう服でありたいですね。

SAGE**
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