盆栽の魅力を、世界に広める。
針金で盆栽を作る「静影庵」
ものづくり
2026.05.25
日本の伝統的な文化のひとつ、「盆栽」。海外からも注目を集める一方で、後継者の不在や愛好家の高齢化が課題となっているんだとか。そんな中、新潟を拠点に盆栽を広めようと活動しているのが「静影庵(せいえいあん)」さんです。驚くことに盆栽は盆栽でも、針金を使った盆栽を作っているんです。いったいどんな盆栽なのか、どうして針金で盆栽を作りはじめたのか。いろいろお話を聞いてきました。
静影庵
新潟県を拠点に、針金を使って盆栽を作っている。昨年の10月ごろから制作を開始し、現在は新潟県外でも展示を行っている。
自分の理想の盆栽を作るために。
使っていたのが、針金だった。
――今日はよろしくお願いします。早速なのですが、針金で盆栽をつくりはじめたきっかけを教えてください。
静影庵さん:もともと、趣味でリアルの盆栽を作っていたんです。10年くらいになりますかね。「糸魚川真柏」っていう盆栽界ではとても有名な品種があるんですけど、それに興味を持ってから、盆栽を育てはじめたんです。盆栽の枝を曲げるとき、針金を使いながら樹のかたちを変えていくんですけど、これが結構難しくて。はじめたての頃は、しょっちゅう枝を折ってしまっていたんです。
――思ったように枝を曲げるのって、とても難しそうです。
静影庵さん:それを繰り返していくうちに、もったいないなと思いはじめて。でも「こんなふうに曲げたい」っていうのを練習はしたかったので、かたちを変えるときに使っていた針金を使って理想の盆栽を作りはじめました。それを見た家族が、これをただの練習台として終わらせるのはもったいないと思ったらしく「これをアート作品にするのはどう?」って言ってくれて。そこから作品としてつくりはじめましたね。
――練習から、こんな素敵な作品が。本物の盆栽と針金盆栽では、作り方が全然違う気がします。
静影庵さん:でも、最初からそんなに難しさは感じていなかったですね。以前からよく家のガレージでDIYをしていたので、そういう工作の延長線上みたいな感覚で針金盆栽を作っていました。
――針金盆栽は、どんなふうに作られていくのでしょう。
静影庵さん:まずは盆栽の色を決めます。それから「こんな色がいいな」っていうイメージを、AIを使って作ります。実際に作ってから色のバランスを見ると、とても時間がかかってしまうので、AIの技術を活用させてもらっています。イメージが固まったら、盆栽のパーツを作って、それを合わせてかたちを整えて完成です。
――本物の盆栽では見ることができない配色、すごく気になっていました。
静影庵さん:『エヴァンゲリオン』をモチーフにした盆栽を今日は持ってきました。こういう現代のアニメとかけ合わせることができるのも、針金で作る盆栽ならではかなと思っています。今は『鬼滅の刃』のキャラクターをモチーフに盆栽を作っても面白そうだなって考えています。


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本物に忠実に。
影も楽しめる、針金盆栽。
――「静影庵」が作る盆栽の特徴はズバリ、どんなところにあるのでしょう。
静影庵さん: 盆栽を育てている人からも「ちゃんとしているね」って言われるような盆栽を意識して作っています。実は盆栽にはある程度ルールがあるんです。正面を決めて作ったり、樹の流れや枝の順番を考えたり、その盆栽特有のルールをおさえて、本物の盆栽に負けず劣らずのものを針金で作るようにしています。
――それにしても、盆栽の葉の部分、とても細かいですよね。これ、どうやって作っているんですか?
静影庵さん:まっすぐな針金を端からひとつずひとつ丸めて葉っぱを作っています。ただ、ひたすらこれを繰り返すだけなんです(笑)。針金1本で1枚の葉ができるのですが、大きい盆栽だと70枚くらい使うので、結構時間がかかるんですよ。
――とても骨の折れる作業なんですね……。
静影庵さん:集中していると、これが永遠にできちゃうんですよ(笑)。ゾーンに入るっていうか。この作業を黙々とやっているのが楽しいんですよね。このパーツを作っているとき、これがどんな盆栽になるか、まだわからないんです。完成した針金盆栽を想像しながら、ワクワクした気持ちで作れています。
――制作風景が思い浮かびます(笑)。作品の中で、見てほしいポイントを教えてください。
静影庵さん:針金盆栽の細かいところもぜひ見ていただきたいんですが、光を当てたときにできる影もすごくかっこよくて。自然光とライトでは、また違う影ができるのも見どころのひとつかな、と思っています。針金だからこそ、本物の盆栽よりも影がはっきり浮かぶので、この影も作品のひとつとして楽しんでもらえたら嬉しいですね。
――「静影庵」という名前がぴったり、というわけですね。
静影庵さん:そうですね。この針金盆栽を見て落ち着いたり、和んだりするような静けさをお届けしたい、というのと、針金盆栽の影の表現も見てほしいっていう思いからこの名前にしました。盆栽だし、和の要素を入れた名前にしたかったので、「庵」という字を入れて、ロゴも筆で書いてもらいました。


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盆栽の魅力を知ってもらうきっかけに。
「静影庵」のこれからのこと。
――ところで、「静影庵」の作品はちょっと変わったものもありますよね。針金盆栽を瓶に巻き付けたり、ハサミに巻き付けたり……。
静影庵さん:普段使っている日用品を見て、針金盆栽と組み合わせたら面白いんじゃないかなと思って作ったんです。新潟といえば日本酒かな、と思って日本酒の四合瓶に飾る針金盆栽を作ったんですけど、いつか「酒の陣」に飾ってもらえたら、なんて夢見ています。ハサミに飾る針金盆栽は、東京の美容関係の方に作品を買ってもらったのがきっかけで、作ってみました。
――日常の生活の中から、作りたいものが浮かんでくるんですね。ちなみに、次に作ってみたいものは?
静影庵さん:革靴の靴紐とか、古いカメラを使って作ってみたいですね。動物の頭蓋骨みたいなものを組み合わせてもいいなって思っています。目の間から盆栽を出してみたりして(笑)。ちょっと尖っているのを作るのも面白いかなって考えています。
――新作がとても楽しみです。それにしても、作品を見ていると盆栽のことをもっと知りたくなります。
静影庵さん:「静影庵」として作品をつくりはじめたのは、本物の盆栽に興味を持ってほしいと思ったっていうのもあるんです。盆栽って、手入れが難しいイメージがあったり、渋い趣味みたいなイメージが強いのかなって思って。せっかく新潟には「糸魚川真柏」っていう世界に誇れる盆栽があるのに、それを知る機会がないのは本当にもったいないと思うんです。「静影庵」の作品から、盆栽のことに少しでも興味を持ってもらって、新潟が持っているよいものを広めていきたいです。
――昨年の10月ごろから活動をはじめられたと聞きました。今までの活動を振り返ってみていかがですか?
静影庵さん:社会人として仕事をしていたら絶対に会えなかった人に会えたり、行けなかった場所に行けたり、すごく世界が広がっているんです。自分の今の年齢になっても、こんなにワクワクするんだって正直驚いています。この活動をやっていてよかったですし、今すごく楽しいですね。
――針金盆栽が「静影庵」さんをいろんなところに連れて行ってくれるんですね。最後に、これからの目標を教えてください。
静影庵さん:針金盆栽を通じて、本物の盆栽の業界で有名な方にも作品を見ていただける機会があって。それもすごく評価してくれているので、励みになりますね。僕が憧れていた人に会いたいですし、一緒になにかできたらいいなって思ってもいます。あとは、海外にもこの針金盆栽が届けられるようにしたいし、実際に針金盆栽を作るワークショップもやってみたいんです。これからもこの活動を楽しんで、盆栽の魅力を発信していきたいと思います。


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