日本海のシーサイドライン、マリンピア日本海や西海岸公園など海岸スポットが集中するエリアに、アパレルショップ「STUD(スタッド)」はあります。まるでアメリカ西海岸のようなゆったりとした雰囲気のなかで、男臭くファッショナブルなアパレルを展開。スラングで「カッコイイ男」を意味する店名に込められた思い、セレクトセンスなど、オーナーの渡邉さんに、ビシッと芯の通ったこだわりを聞いてきました。
STUD
渡邉敬樹 Hiroki Watanabe
1978年新潟生まれ。東京の文化服飾学院、スタイリスト科出身。ロックバンド時代などの経歴を経て、アパレルショップ「STUD」現オーナー。アメカジからストリートまで、カッコイイ男のスタイルを提供している。
――本日は、よろしくお願いします。唐突ですみません、アパレルに興味を持ったキッカケを教えてください。
渡邉さん:昔からアパレルには興味があって、ショップに通ったりしていましたね。高校生の時に進学で悩み、結果、東京の服飾専門学校「文化服飾学院」へ進学したんです。そのスタイリスト科で学びました。美容師もいいかなって思ったんですが、でもおっさんの髪は切りたくないな…って(笑)。
――興味を持ったというよりは、昔から好きだったんですね。卒業後は、スタイリストに?
渡邉さん:当時、めちゃくちゃハーレーに乗りたくて、給料の高いバイク便の仕事に就きました。そしたら事故っちゃって。膝付近から骨が飛び出して、全治1年半の大怪我を。もちろんクビになり、それからはバンドをしていた兼ね合いもあり知り合いのライブハウスでお世話になりました。
――バンドもされていたんですね。ハードコアとかですか?
渡邉さん:この容姿なのでよく言われますけど(笑)、エモっぽいような音楽で、ロックバンドでしたね。歌詞があって、聞かせる感じの。
――ちょっと想像と違いました(笑)。そこからまたアパレルへと向かったのは…。
渡邉さん:同じ新潟出身で、1つ上の先輩がいたんですね。「新潟でアパレルショップを出そうと計画しているから」と自分に声をかけてくれたんです。洋服はずっと好きだったし、音楽、バイクなどのアパレルを取り巻くカルチャーも好きだったので。新潟に帰る良いキッカケでもあるなと思い、話に乗っかりました。
――「STUD」のはじまりってことですね。当初はどのようなブランドがメインでしたか?
渡邉さん:今でもメインブランドである「TENDERLOIN(テンダーロイン)」や「CORE FIGHTER(コアファイター)」など5ブランドからスタートしました。2004年に新潟市中央区の西堀で10坪の小さなショップをオープンして。5年くらい経ったころには倍の10ブランド程になっていましたね。
――幅広くされていたんですね。
渡邉さん:ショップに買いに来てくれる人は、大人が多くて。新潟って車社会じゃないですか? 駐車場問題が深刻になってきたので、今の日本海を望めるこの場所に、2009年に移転してきました。もうちょっとで10年が経ちますね。早いなぁ…。
――もう10年になるんですね。渡邉さんは現在オーナーとしてお店を運営されていますが、いつからその立場に?
渡邉さん:前オーナーは彫師なんですよ。手彫りといって、ひとつひとつ時間をかけて機械に頼らずに彫っていくスタイルで。その文化をヨーロッパに伝えたいと、ベルリンへ旅立ったんです。店を引き継ぐかどうするか、いろいろと悩みました。でも取り扱っているブランドは気に入っているし、元々ショップもしたかったし、不安はありましたがオーナーになる決意をしました。今から7年前くらいですね。
――そうなんですね。渡邉さんが洋服をセレクトする時はどのような基準がありますか?
渡邉さん:店名の「STUD」は英語のスラングで、「カッコイイ男」を意味しています。「大人なアメカジ」をコンセプトにスタートしているので、根本的にはこれを貫いています。ただ、アメカジをメインに取り扱っていても、時代の流れによってブランドの路線がストリート寄りになってしまったり、デザイナーも年を重ねて洋服も変化したり、そういうことはありますね。もちろん、芯はブレないですが。基本はブレないかっこよさですね。
――時代の流れで、業界的にも変化してきているんですね。
渡邉さん:ファストファッションをはじめ、いろいろなブランドが増えていますからね。そんな時代でも、しっかりと洋服を作っているブランドを「STUD」は取り揃えています。ブランドとして、デザインとしてセレクトする自分が気に入るかはもちろんですが、生地にこだわったり、長く着られるスタンダードな洋服も置いたり。最近おすすめしているブランド「AND FAMILY’S(アンドファミリーズ)」がそうです。メイドインジャパンにこだわり、しっかりしているんですよ。そしてカッコイイ!
――スタンダードでありながらも、その洋服を着る理由があると素敵ですよね。
渡邉さん:もちろん人と被らないような、個性のある洋服だってありますよ。自分が好きだからって理由だけでセレクトしないで、第三者目線で冷静に手に取ってもらえるか、カッコイイと思ってもらえるかを考えています。根本はかっこよくなってもらいたいんですよね。
――もうちょっとで10年が経ちます。長年アパレルショップを生業としてきて、今思うことはありますか?
渡邉さん:お店に立っているからこそ、いろいろな職種、人種の人たちと出会うことができました。こうやって、インタビューを受けて知り合うことも。何かをする時には協力してくれたり、助けてくれたり、もちろん助けたり。そんな関係を築けてきたからこそ、最近ではいろいろな活動ができるようになりました。
――人との繋がりから生まれた活動って、具体的にありますか?
渡邉さん:この前、「STUD」の店内でイベントを開催したんです。DJブースからは音楽が流れ、バーバーや彫師の友人がデモンストレーションをしてくれて、飲食ブースがあって、うまいビールが飲めて。これもヒトの繋がりがなかったらできなかったことだね。本当に感謝してます。
――異業種が一挙に集結したイベントですね。自分ひとりだけだったり、お店単体では難しいことですよね。これから先、どのようなアパレルショップで在りたいですか?
渡邉さん:地産地消じゃないけど、日本の工場で、日本人が作った洋服を着て欲しいです。デザインはもちろんだけど、どんな人が、どんな思いで作っているのか。一着の洋服の裏側を知って、かっこよく着てもらえるような提案をしていきたいですね。売る側だから気にすることかもしれないけれど、そんなことを言う店があってもいいんじゃないかなって。
――裏側や背景まで背負って着こなせたら、本当にカッコイイ大人ですね。
渡邉さん:正直、日本製となるとちょっと値段が張るかもしれない。食器にしても、家電にしても、大金持ちでなければ最高級なモノを揃えることは難しいですよね。でも、クオリティは確かなものがあります。シチュエーションによっては「コレを着たい」と思って、背伸びをして良いモノを長く着る。自分と同世代だったり、家族を持った同じ環境のお父さんでも、たまにはそういうこともできるんです。そんな風に考えたときに、洋服を買いに行くときに「STUD」を選択肢に入れてもらえたら、それだけで嬉しいですね。
お父さんのタンスから90年代のスポーツブランドを引っ張り出し古着ファッションをミックスするスタイルが流行ったり、スニーカーブームが再来したり。過去を受け入れそれを現代風に再構築しながら変化していくアパレル業界。その変化に従いながら、でも根底にはちゃんと「カッコイイ男」のスタイルを貫いている「STUD」。以前に比べ、家族を持つお客さんも増えた。それは渡邉さん自身も同じだ。ちょっと強面な渡邉さんだけれど、奥さんのデザインしたオリジナルキャラクターを家族で着られるようにキッズサイズ展開する、優しいお父さん。カッコイイ大人で、カッコイイ親でもある渡邉さんに、カッコイイ男になるための洋服を教えてもらおう。
STUD
新潟県新潟市中央区水道町1-5939-33 SEAWEST2
025-225-3410