味と空間で心地よい時間をささえる
古町に開店した「すし 黒衣」。
食べる
2025.12.23
以前ご紹介した、新発田市「鮨 和食 ながしま」の店主が、新潟市の古町で新たに「すし 黒衣(くろご)」を開店しました。そこにはどのような思いがあったのか、居心地のいい和モダンなお店にお邪魔して、店主の長嶋さんからお話を聞いてきました。
長嶋 直人
Naoto Nagashima(すし 黒衣)
1993年新発田市生まれ。「鮨 和食 ながしま」4代目店主。新潟調理師専門学校を卒業後、亀田の日本料理店と古町の人気寿司店で修業し、2019年に家業である「鮨 和食 ながしま」に入る。2025年には新潟市中央区で「すし 黒衣」を開業。休日は飲みに出かけるのがルーティーン。
新発田の「鮨 和食 ながしま」を出て
古町で「すし 黒衣」を開業した理由。
――このたびはオープンおめでとうございます。「鮨 和食 ながしま」の記事ではお世話になりました。
長嶋さん:ありがとうございます。こちらこそ、お世話になりました。今日もよろしくお願いします。
――早速ですが、どうして新しく「すし黒衣」をはじめたんでしょう?
長嶋さん:東京で日本料理の修業をしてきた弟とふたりで、家業の「鮨 和食 ながしま」をやっていたんですけど、僕は寿司で弟は日本料理というように道が違うので、いずれは別々に店をやろうと話していたんです。
――そうだったんですね。でも「鮨 和食 ながしま」で、そのまま寿司店をやらなかったのはどうしてなんですか?
長嶋さん:同年代の料理人たちが自分の力だけで開業する姿に刺激を受けていたので、僕も親から受け継いだ店ではなく、自分の力で開業することに挑戦してみたいと思っていたんです。
――腕を試したいという気持ちがあったんですね。新発田ではなく古町を選んだのも、そういう意図があったんでしょうか?
長嶋さん:そうですね。知り合いの多い地元の新発田より、古町で勝負してみようと思いました。とはいうものの、古町の寿司店で修業していたから馴染みの深い街ではあるんですけどね(笑)

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店主の思いが込められている
「すし 黒衣」という店名。
――店名は何と読むんですか?
長嶋さん:「くろご」と読みます。歌舞伎の舞台で役者の演技が円滑におこなわれるよう、裏方として補助する人のことなんです。僕の握る寿司や店の雰囲気が、黒衣みたいにお客様の楽しい時間の手助けになればいいなという思いで名付けました。「美味しかった」と言っていただけるのはもちろん嬉しいんですけど、「楽しかった」と言われる店を目指しています。
――では、お店の雰囲気づくりも大切にしているわけですね。
長嶋さん:僕にも経験があるんですけど、ネタケースのない寿司店って緊張してしまうと思うんですよ。
――それ、すっごくわかります(笑)
長嶋さん:「緊張して味がわからなかった」と言われるのがいちばん嫌なので、はじめてのお客様にも入りやすいカジュアルな雰囲気を心掛けています。
――そのために、実践していることはあるんですか?
長嶋さん:威圧感を与えないように、できるだけ笑顔で接するようにしています(笑)
――長嶋さんは物腰が柔らかいので、威圧感を感じることはないと思います(笑)
長嶋さん:ありがとうございます(笑)。寿司店は飲食店のなかでもお客様との距離が近いんですよ。調理師でありながら、ソムリエでもありサービススタッフでもあるんですからね。お客様の様子に気を配りながら、心地よい接客ができるよう心掛けています。

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お客さんには気づかれないよう
さりげなくかける、ひと手間。
――お寿司のこだわりを教えてください。
長嶋さん:ただ握るだけではなく、どの寿司にもひと手間かけるようにしていますが、それを主張しないさりげなさも大切にしています。アジの握りには、すり下ろしたニンニクと生姜をつけるんですが、それはお客様には見えないよう、ネタとシャリの間に挟むんです。
――粋ですねぇ(笑)。他にもこだわっていることはありますか?
長嶋さん:やっぱりシャリでしょうか。使うお米は上越の生産者につくってもらっているコシイブキで、コシヒカリに比べると水分が少なめで寿司によく馴染むんです。新米だと水分が多いので、あえて収穫から半年経った米を使って、炊く際もぎりぎりの水分で固めに炊くよう気をつけています。
――そこまでするんですね。
長嶋さん:あと日本酒にもこだわっていますよ(笑)。メニューには7種類しか載っていないんだけど、その他に「隠し酒」があるんです。なんなら「隠し酒」の方が圧倒的に充実しています(笑)。僕の飲みたいお酒をどんどん仕入れてしまうので……。
――「隠し酒」には、どんなお酒があるんですか?
長嶋さん:おすすめしたいのは県外の燗酒ですね。紹興酒みたいに熟成したお酒が多くて、新潟の地酒とは違った味わいが楽しめます。気軽に聞いてくだされば、おすすめの日本酒を提案させていただきますよ。

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他の店とのコラボイベントを通じて、
仕事の幅を広げていきたい。
――新発田の「鮨 和食 ながしま」のときと「すし黒衣」を営業している現在では、どんなところが違いますか?
長嶋さん:以前とは違って収納スペースに限りがあるので、仕込みをする量に気を使っています。でも、それ以上に自分で経営することの大変さが身に沁みますね(笑)。良くも悪くもすべてが自分の責任ですから……。それだけに、やりがいを感じているんです。
――開店してからの感触はいかがでしょう?
長嶋さん:若い方から年配の方まで幅広いお客様がお見えになります。クチコミで来てくださる初めてのお客様も多くて嬉しいですね。
――クチコミで来てくれるのは嬉しいでしょうね。
長嶋さん:ずっと寿司だけで勝負したかったので、それがお客様に喜んでいただけるのは嬉しいです。今まで新発田でやってきたことが、無駄ではなかったと感じています。
――今後やってみたいことがあったら教えてください。
長嶋さん:今までもワインバーや日本茶専門店とコラボして、ペアリングイベントをおこなってきました。他ジャンルとコラボするのはお客様にも喜んでいただけるし、自分自身も仕事の幅を広げるための勉強になるので、これからも続けていきたいと思います。

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