賑わいのある商店街のために。吉田の新しい拠点「Toko Toko」。
カフェ
2022.01.17
最近、吉田の商店街では様々なイベントが開催されるなど、なんだか楽しそうなことがたくさんあるのだとか。そんな噂を聞きつけて吉田を訪れ、商店街をぶらぶらしていると、早速、かわいらしいお店を発見しました。空き家をリノベーションした建築士さんが、自らはじめたお店だそうです。コンセプトは「人と町を繋げるカフェ」。いったいどんな思いが込められているんでしょうか。「Toko Toko」の店長であり、設計事務所を経営する蓮沼さんにいろいろとお話を聞いてきました。


Toko Toko
蓮沼 知大 Tomohiro Hasunuma
1976年燕市吉田生まれ。「蓮沼建築設計事務所」代表。4年前、お子さんが生まれたのを機に新潟市から地元である吉田に戻る。2019年4月、奥さまやご友人と一緒に吉田駅前の商店街でカフェ「Toko Toko」をオープン、店長を務める。
商店街の人たちが喜んでくれるから、頑張れる。
――本日はよろしくお願いします。蓮沼さんは設計事務所を経営されているんですよね? メインは設計の方ですか?
蓮沼さん:カフェよりも設計の仕事の方がメインではあるんですけど、この店をやることでの相乗効果を感じています。たまたまカフェに来たお客さんが、設計事務所だとわかって新築の依頼をくれたり、「このお店がかわいいから」と言って店舗設計を頼んでくれたりすることもあるんですよ。
――そもそも、設計のお仕事をされながらこちらのお店をはじめたのには、どんなきっかけが?
蓮沼さん:4年前まで新潟市に住んでいたんですけど、結婚して子どもが生まれたので、地元である吉田に帰ってきて設計事務所を立ち上げたんです。でも最初は仕事も無いし、もともと地元の商店街が好きだったのと、20代の頃から「いつか商店街でお店を出したい」と思っていたので、そのタイミングでカフェもはじめることにしました。

――蓮沼さんは、商店街のどんなところに魅力を感じられていたんでしょうか。
蓮沼さん:建築の仕事をしているのもあって、古民家とか町屋が好きで。15年ほど前、ちょっと放浪していた時期に京都にいたんですよ。京都ってゲストハウスとか、ブックカフェとか、町屋をリノベーションしたお店がいっぱいあるじゃないですか。当時の新潟にはそういう場所がなかったので、僕がやろうかなって思ったんですけど、当時はいろいろあってできなかったんです。
――じゃあ念願叶ったわけですね。そういえば、この建物は空き家からセルフリノベーションされたって聞いたんですけど……。
蓮沼さん:そうですね。最初は建築士5人ではじめようとしたんです。でも忙しさとかで疎遠になっていって、ひとまず僕と妻のふたりでやることになりました。それからまた仲間が増えていって、みんなで完成させました。セルフリノベーションって最近は多くなりましたけど、お店を作りはじめた当時は珍しかったんですよ。だから「どうやってやってるんだろう」って、視察に来る人もいました。
――最初に集まった5人の方たちは、どういう経緯で集まったメンバーだったんでしょうか。
蓮沼さん:最初から「商店街を盛り上げよう」という思いでやってたわけではなくて。「お店をやる」っていうよりも、「週末5人で集まってお酒を飲めるような場所を作ろう」ってはじめたんですよ。みんな建築関係だしリノベとかやってみたいよね、とかそんな感じでした。実はまだ電気も水道もないときからイベントをやっていて、そのたびに100人くらいお客さんを呼んでいたんですよ。そしたら商店街とか行政の人たちがだんだん騒ぎはじめて……。
――100人も!? それは話題になりますよね(笑)
蓮沼さん:「なんでこんなところにこんなに人が来るの!?」みたいな(笑)。そうしていくうちに商店街の人と仲良くなって。うちらが街を盛り上げることでみんなが喜んでくれるのが嬉しかったんです。自分のためっていうよりも、人のためにお店をやってみようかなって思いました。

――お店をやる目的は後から生まれていったんですね。商店街の方たちはどんな方たちなんですか?
蓮沼さん:よそ者でも受け入れてくれるし、「頑張って盛り上げて」って言ってくれる人が多くて。イベントを開いてお客さんを呼ぶと、ほんとに喜んでくれるんですよ。その人たちのために何かできればいいなって。自分たちだけのためだったら、とっくにやめているかもしれないですね。今まで継続できているのもそこが大きいと思う。
――コンセプトである「人と町を繋げるカフェ」というのも、商店街の人たちへの思いが込められているように感じます。
蓮沼さん:そうですね。うちに来たお客さんが商店街のみんなともつながれたらいいな、というイメージで「人と町を繋ぐ」というコンセプトにしました。

――商店街を盛り上げるための拠点、ということですが、カフェにしたのはどうしてですか?
蓮沼さん:どうしたら商店街の人が喜ぶかな、町が盛り上がるかなって考えたときに、内輪だけでやるよりも他から人が来て小売の場所になったほうがいいと思ったのと、かっこいいからカフェにしようってなりました(笑)
――カフェメニューでこだわっているところはありますか?
蓮沼さん:コーヒーの豆はオリジナルで作っていて、誰でも飲みやすい味にしています。「カフェ」って言ってるんですけど、ドリンクとかスイーツにはそんなに力をいれていなくて、ドリンクがあったほうが人が来やすいかなと思って置いています。
――雑貨も販売していますね。
蓮沼さん:吉田に帰ってきてから、妻が「やってみたい」って言って、突然タイルの雑貨を作りはじめたんですよ。そしたら人気が出て、それが天職だったんでしょうね、そのうちハンドメイドのイベントにも出るようになったんです。そのときに、いろいろなものづくりをされている方が各地にいるということを僕も初めて知りました。そこで交流が生まれて、知り合った人たちに声をかけて、その人たちの作った雑貨をここで販売することになりました。
――ものづくりをされる方たちが交わる場所にもなっているんですね。週末は店舗を持っていない方にスペースを貸して、「間借りカフェ」もされていると聞きました。
蓮沼さん:改装しているときに、「一緒にお店をやりたいんですけど」っていう方が何組か来たんですよ。「じゃあ一緒にやりましょうよ」って言ってはじめたのがきっかけで、それは今もずっと続いています。

自分たちの力で、商店街を人でいっぱいにしたい。
――オープンされてから2年経って、商店街の様子だとか、蓮沼さんから見て変わったなと思うことはありますか?
蓮沼さん:「Toko Toko」をはじめた当初と今じゃ大きく違っていて、すごくいい方向に向かっているのを実感しています。11月に商店街の通りを使って「トコマルシェ」っていうマルシェをやったんですけど、800人くらいの人が来ました。
――大盛り上がりじゃないですか!
蓮沼さん:それがきっかけになったのかは分からないんですけど、「これだけの人が呼べるなら、うちもここでお店を出そうかな」っていう人が来てくれて。他にも、この辺りに新しいお店ができそうなんですよ。ずっと頑張ってやってきたからこそ、みなさん動きはじめたんだなって思うと、僕的には感無量です。ちょっとふわふわしています(笑)

――それは感動しますね。蓮沼さんはどんな夢を持って今の活動をされているんでしょうか?
蓮沼さん:10年後か20年後、この商店街が日常的にたくさんの人で溢れるようになっていてほしいです。それを自分たちが成し遂げたらすごいし、そうなるといいなと思って頑張っています。マルシェをやれば人が来るし、吉田を知ってくれるし、お店を出す人も増えるかもしれない。マルシェをやること自体も楽しいんですけど、その先を見たいんです。
――私もそんな吉田の町を見てみたいです。今後はどんなイベントが?
蓮沼さん:4月には「トコマルシェ」の倍の規模のマルシェを開催する予定です。8月は飲食メインのイベント、秋はプロのミュージシャンの方を呼んでフェスをやろうかなと考えています。楽しみですよ。

蓮沼さんのお話を聞いているだけで、私もワクワクした気持ちになりました。「商店街の人たちに喜んで欲しい」「町をもっと盛り上げたい」と、ブレない思いを持って活動を続けられてきたからこそ、その姿に感化された人たちが今少しずつ動きはじめているんだと思います。「Toko Toko」を中心にして吉田の町がどう変化していくのか、これからの活動に目が離せません。

Toko Toko
燕市吉田上町4-28
0256-77-8652
10:00-16:00
水・日曜定休
Advertisement
関連記事
カフェ
加茂の魅力を発信する拠点を目指す「BBC Kamo Miyagemono Center」。
2022.04.11
カフェ
コーヒーを愛する気持ちは誰にも負けない。「ホシノテラス」の星野さん。
2019.05.30
カフェ
自分の好きな過ごし方ができる、柏崎の「cafe confine」。
2022.09.21
カフェ
居心地いいスペースで、オーナーのお気に入りを楽しむ「alegre」。
2021.09.14
カフェ
「Days Coffee Roaster」の選べるコーヒー豆。
2021.07.28
カフェ
阿賀野市産小麦に牛乳も。地元素材を生かす「あがの酪農カフェ」。
2025.02.28
新しい記事
食べる
米粉と平飼い卵で作る優しいおやつ。
「みんなのおやつ i ppu ku」
2025.12.05
Things写真館
[Things写真館]滝沢写真館 photographerタキザワフミオ #02
PR | 2025.12.05
カルチャー
地域をつなぐ、力強い音。
今年で45周年を迎えた「飛燕太鼓」
2025.12.04
カフェ
幼稚園だった建物を再利用した
レトロな雰囲気の「喫茶ショパン」。
2025.12.03
ものづくり
ワクワクする形を、紙で表現。
「のの製作所」の清野さん。
2025.12.02
食べる
元パティシエの女性店長がつくる
「麺匠 一鶏」の鶏ラーメン。
2025.12.01


