長岡市の栃尾にある「toriaezu bagel(トリアエズ ベーグル)」は、カフェ利用もできるベーグル専門店。自家製酵母と国産小麦、地元食材を使った変わり種ベーグルを提供しています。今回は、オーナーの高橋さんにベーグルに対するこだわりと、地元・栃尾に対する想いを聞いてきました。
toriaezu bagel
高橋 遥 Haruka Takahashi
1991年長岡市栃尾生まれ。高校卒業後、金融関係の企業に就職。小さな頃からお菓子やパンづくりが趣味で、退職後はイベントや間借り出店でベーグル販売を行う。2024年6月に「toriaezu bagel」をオープン。趣味は食べること。特にスパイスを使った料理が好き。
――本日はよろしくお願いします。
高橋さん:よろしくお願いします。これだけは先に絶対に伝えておこうと思っていたんですが、私がお店を出すきっかけになったのは、Thingsの記事なんです。
――え!そうなんですか?
高橋さん:いつかベーグルのお店を持ちたいってぼんやり考えていたときに、たまたま「INDIGO BAGELS」さんの記事を読みました。それまでは、お店をはじめるにはいろんな資格が必要で、すごく難しいんだろうと思っていたんです。でも記事を読んで希望が見えてきて、踏み出すきっかけをいただきました。
――それはよかったです! ところで高橋さんはなぜベーグルを?
高橋さん:これまで、趣味の範囲ですがいろんなお菓子やパンをつくりました。そのなかで上手くいかなかったのがベーグルだったんです。
――上手くいかなかった、のは味に納得がいかなかったということでしょうか?
高橋さん:食感です。本当に噛めないくらい硬かったんですよ。でもつくった以上もったいないから食べるしかないじゃないですか。それがすごく悔しくて、執着したんだと思います。
――そこから、どのように工夫されたのでしょうか?
高橋さん:ベーグルが硬くなったときはイースト菌を使っていたんですけど、次は自家製酵母を試してみようと思ったんです。それで、せっかくだし自分で酵母をつくってみたら、それがうまくいったんですよね。
――酵母ってつくれるものなんですね!ちなみに、酵母って何からできているのでしょうか。
高橋さん:レーズンです。比較的発酵力が強いっていわれている果実種を使ってみたら上手くいきました。柔らかな、ふかっともちっとしたベーグルが焼き上がったとき、もう本当に嬉しくて。そこからずっと自家製酵母でベーグルをつくり続けています。
――「toriaezu bagel」の食材のこだわりを教えてください。
高橋さん:北海道産の小麦粉を使っています。これはちょっと恥ずかしいんですけど、選んだ理由は直感というか、名前が可愛かったからなんですよね。
――ちなみに名前って⋯⋯。
高橋さん:「春よ恋」です(笑)。自分が春生まれなので、小麦自体にどんな特徴があるのかよりも、名前で決めてしまいました。でも使ってみたらベーグルにぴったりだったんです。
――直感で選んで正解だったんですね(笑)。小麦以外の食材にはどんなこだわりがありますか?
高橋さん:小麦以外の食材は、なるべく地元のものを使うようにしています。たとえばプレッツェルベーグルの塩は「与板越乃塩」、焙じ茶あんこのほうじ茶は栃尾の「尾張屋」さんのものです。春は栃尾で採れたふきのとうを使ったベーグルを出したこともあります。
――聞いているだけで美味しそうです。変わったメニューが多いですが、どのように考えていらっしゃるのでしょうか?
高橋さん:私自身、変わり種が好きなんです。そのお店の特徴を感じられるものが好きで、プレーンよりは個性のある方を選びがちです。いただいた食材と組み合わせて面白そうなものとか、あんまり食べたことないけど「合いそう」と思ったものは試していますね。あ、食材をくださった方のイメージでつくっているものもあるんですよ。
――人をイメージしてつくるベーグル、どんなものがあるのでしょう。
高橋さん:今日並んでいる「和栗とコーヒーあんクリームチーズ」は、栗をお裾分けしていただいてつくったもので、その方の好きなカカオニブを表面に散らしています。最初は栗あんにしようと思っていたんですけど、栗を蒸して食感を残し、あんをコーヒーにすることでカカオニブの風味を引き立たせました。インスピレーションというか、何を合わせたら美味しいかな、面白いかなって思いながらつくることが多いですね。
――「toriaezu bagel」の名前の由来を教えてください。
高橋さん:悩んでいたときに「とりあえず」つくってみようと思ったのがきっかけです。ベーグルづくりを本当に続けられるのか、そもそもベーグルでいいのか迷っていた時期がありました。でも、きっぱりやめることもできなくて……。今までみたいに人に食べてもらう前提ではなく、自分が納得できるベーグルをつくることに重きをおいて、SNSの鍵付きのアカウントをはじめました。そのアカウントの名前が「toriaezu bagel」です。
――将来のことを模索している最中の言葉だったわけですね。
高橋さん:最初の名前の由来としては、ちょっとネガティブな要素ですが(笑)。投稿をゆるく続けていたら、声をかけてもらうことも増えてきて、間借り販売やイベント出店時に名前が必要だったので、そのときつけていた「toriaezu bagel」を使うようになりました。
――高橋さんはSNSでも積極的に栃尾の紹介をしていますね。
高橋さん:ベーグル屋をはじめたのも、このまちが好きだったからなんです。栃尾って、何もないって思われがちなんですけど私はそうは思っていなくて。ずっと「それって知らないだけなんじゃない?」って思ってるんです。
――栃尾の魅力があまり伝わってないということでしょうか?
高橋さん:けして「知ろうとしてないじゃん!」と言いたいわけではなくて、知るための情報がないんだと思うんです。でもベーグル好きな人がうちを見つけてくれて、栃尾まで足を運んでくれることはありますよね。うちのベーグルが栃尾に興味を持つきっかけになったら嬉しいなと思います。ベーグル屋であり情報屋、みたいな存在になりたいんです。
――栃尾の情報屋さん!
高橋さん:そうなるために、うちのベーグルをもっと知ってもらいたいんです。店舗販売に限らず、名前を覚えてもらえるようにイベントにも積極的に参加して、これからも栃尾や県内の食材をたっぷり使った美味しいベーグルをつくり続けていきます。いろんなひとが「toriaezu bagel」をきっかけに栃尾に遊びにきて、このまちの魅力を知ってくれたら嬉しいです。
toriaezu bagel
長岡市栃尾宮沢1705-18