戦国時代に携帯保存食として生まれたといわれる、笹団子。きんぴらごぼう入りの笹団子はときどき見かけますが、カレー入りの笹団子を知っている人は少ないのでは? 胎内市の老舗「卯月堂菓子舗(うげつどうかしほ)」にそんな笹団子があると聞いて、三代目店主の齋藤さんを訪ねました。
卯月堂菓子舗
齋藤 長彦 Takehiko Saito
1970年加茂市生まれ。「卯月堂菓子舗」三代目。東京や阿賀野市の菓子店で修業した後、1993年より家業の「卯月堂菓子舗」で働く。サッカーや野球などのスポーツ観戦が趣味。
——「卯月堂菓子舗」の「卯月」っていうのは、「四月」っていう意味なんでしょうか?
齋藤さん:創業者の祖父がうさぎ年の生まれだったことから、月で餅を搗くうさぎをイメージして「卯月堂」と名付けたんだそうです。
——お菓子屋さんにぴったりなネーミングですね。最初は和菓子店だったんですか?
齋藤さん:そうです。父の代から、時代に合わせて洋菓子も扱うようになりました。
——齋藤さんは三代目ということですが、子どものときからお店を継ぐつもりでした?
齋藤さん:幼い頃から祖父母に言われ続けてきたので、当然のように店を継ぐことを受け入れていましたね(笑)。だから学校を卒業したらすぐに、東京にある和菓子店で3年間修業してきたんです。
——東京での修業はいかがでした?
齋藤さん:師匠は昔ながらの和菓子職人だったので「仕事は目で見て盗め」という教え方でしたね。だから注意深く師匠の仕事を見て覚えましたし、休憩時間に先輩からも教えてもらったりしていました。
——印象に残っている修業時代のエピソードはありますか?
齋藤さん:お盆やお彼岸の季節を迎えると、朝から晩までおはぎをつくっていました。僕の地元では各家庭でおはぎをつくっていたので、菓子店で買う人が多いことに驚きましたね。正月のお餅も家で搗いていたので、年末になると買いに来る人が多くてびっくりしたんですよ。
——齋藤さんの感覚では、当たり前に家でつくるものが商品として売られていたわけですね。ちなみに洋菓子はどちらで学んだんでしょうか?
齋藤さん:新潟に帰ってきてから、阿賀野市にある菓子店で働いたときに学びました。その後、23歳くらいから「卯月堂菓子舗」で働きはじめたんです。
——それまで修業してきたお店と、やり方の違うこともあったでしょう。
齋藤さん:もちろんありましたけど、その場合は「卯月堂菓子舗」で代々伝わるやり方に合わせました。お客様が求めているのはずっと続いていた「卯月堂菓子舗」の味ですから、それを変えるわけにはいかないと思いましたね。
——「卯月堂菓子舗」で、昔から続いてきた商品を教えてください。
齋藤さん:最初からあったのは笹団子や「水芭蕉」というお菓子ですね。でも「水芭蕉」は僕がリニューアルしたので、以前とは違うお菓子になっています。使っていた材料の入手が難しくなったこともあって、時代に合わせたかたちに変化させました。
——長く続けていると、そういうこともあるんですね。他にも齋藤さんがリニューアルしたお菓子はあるんでしょうか?
齋藤さん:リニューアルではなくて、僕が新しくはじめたお菓子はいくつかあります。「米粉入りコーヒーどら焼き」もそのひとつです。あんこの代わりにクリームやジャムを使ったどら焼きは多いので、僕は皮にコーヒーを練り込みました。それから、胎内市発祥の米粉も使っています。
——そして、こちらの商品についてもお聞きしたいのですが……。
齋藤さん:あんこの代わりにカレーが入っている笹団子ですかね。
——どうして、そんな商品をつくったのか気になります(笑)
齋藤さん:地元の先輩から「どこにでもある笹団子じゃつまらないから、変わった笹団子をつくってみたら?」とカレーやナポリタンが入った笹団子を提案されたので、試しにカレーを入れてつくってみたんです。商品化するつもりはなかったので、冗談でみんなに食べてもらうだけのつもりだったんですが、あまりに反応が良かったので商品化することになりました(笑)
——カレーもインパクトがありますけど、もしかしたらナポリタン笹団子が生まれていたかもしれないんですね(笑)
齋藤さん:カレーが上手くいったのでつくらなかったけど、上手くいかなかったらつくっていたと思います(笑)
——カレー笹団子は、普段店頭に置いてないんですか?
齋藤さん:以前は置いていたんですけど、今は予約販売になっています。10個からのご注文をお願いしていて、1週間から10日前にご予約いただけるとありがたいですね。
——お店でイチオシの商品があったら教えてください。
齋藤さん:父の代から続いている「たぬきケーキ」です。昔はつくっている洋菓子店も多かったんですが、生クリームが主流になってきてバタークリームを使ったケーキが減ったことで、今ではつくっている店も少なくなってしまいました。
——へぇ〜、どんなケーキなんですか?
齋藤さん:その名の通り、たぬきをデザインした可愛らしいケーキです。今でも根強い人気があるので、「たぬきケーキ」ファンのためにもつくり続けていきたいですね。
——「たぬきケーキ」のファンがいるんですね。
齋藤さん:カプセルトイにもなっていて、第三弾が出るほどなんですよ。ちなみに当店は第一弾から続けて参加しています。店にはガシャポンマシンがないから、抽選箱から引いてもらっているんです(笑)
——カプセルトイのフィギュアになっているとは(笑)
齋藤さん:毎年秋になると、岩手の洋菓子店で「たぬきケーキまつり」が開催されるんです。「たぬきケーキ」のコラボセットが販売されたり、「たぬきケーキ」研究家によるケーキ講座があったり、ファンにはたまらないイベントだと思います(笑)
——そんな世界があるとは知りませんでした(笑)。今後はどのようにお店を続けていこうと思っていますか?
齋藤さん:お客様の声に耳を傾けながら、商品を絶やさずに続けていけたらいいですね。
卯月堂菓子舗
胎内市北本町5-25
0254-43-2545
10:00-18:30
木曜休