新潟市中央区上古町(通称:カミフル)でオリジナリティあふれる着物を取り扱いながら、愛犬をモチーフとしたパググッズ「パグスタイル」が爆発的な人気を呼んでいる「ワズスタイル」。どうして着物屋にパググッズが登場したのか。店主である山田さんに、そのルーツをお聞きしました。パグ好き必読なインタビューです。
ワズスタイル
山田陽一 Yoichi Yamada
1975年新潟県上越市生まれ。デザイン専門学校インテリア科へ進学。上越市にある老舗着物屋の6代目として経験を積み、1999年に「ワズスタイル」をオープン。愛犬のパグ(トマくん)は、4代目看板犬。
――山田さんは、どうして着物屋をはじめたんですか?
山田さん:実家が江戸時代から続く着物屋なんですよ。自分は6代目でして。
――江戸時代?めちゃくちゃ老舗じゃないですか!もしかして「ワズスタイル」は、支店ですか?
山田さん:オープンしたときは支店として、でした。でもひとつの提案として若い子たちに「こんな着物のスタイルがある」と伝えたくて。着物屋魂は引き継ぐけど、自分のスタイルでお店をしたいと思って。
――それで「ワズスタイル」というネーミングなんですね。
山田さん:着物は日本の伝統ということが基本にあります。なので、着方は崩すべきではないと考えます。でも、バックで遊んでみたり、ピアスや指輪などの装飾品を付けてみたり、ブーツやスニーカーを合わせて普段使いしてもいいと思います。ちょっとした遊び心ですね。自分も着物を着るときは必ず帽子を被っていますし。
――伝統的な着物の基本を崩さないで、遊び心をプラスするわけですね。
山田さん:そうですね。着物ってスタンダードに着るのが最もキレイな着方なので。それと、現代風な文様は使いませんよ。完成されている江戸時代から伝わる文様を基本として、今風なデザインで作られた着物を「オリジナル振袖」として提供しています。
――「オリジナル振袖」ですか?
山田さん:インターネットが普及して、何でも買える時代になっています。なので「ワズスタイル」にしかないものを提供したいと考えました。それが伝統文様や無地の生地をパッチワーク形式でデザインする「オリジナル振袖」です。写真撮影や着付けとメイクもセットで、信頼するカメラマン、美容師たちと一緒に手掛けていています。
――オリジナルって、自分で振袖のデザインを考えるんですね。一生に一度の特別な日なので、喜ばれますね。
山田さん:「普段から着物を着よう」みたいな働きかけもありますが、着物は「特別な日に着るもの」だと思っています。浴衣は、花火を観に行くときだけでなくて女子会にもどうかなって。浴衣を着るだけで特別な女子会になるじゃないですか? 特別な日に着たら、背筋もピンとなりますし。
――そういえば、先ほどパグがお出迎えしてくれました。もしかして看板犬ですか?
山田さん:山田家の愛犬であり、「ワズスタイル」の看板犬でもあるパグのトマくんです。ちなみに看板犬としては4代目なんですよ。
――代々、パグを飼われているんですね。着物に混ざって並んでいるパググッズは?
山田さん:2年前からチカラを入れはじめた、オリジナルのパググッズ「パグスタイル」です。
――オリジナルなんですか?
山田さん:全部、自分で描いた愛犬たちです(笑)。はじめは手ぬぐいだけでしたが、とある出来事で爆発的な人気となり、今ではTシャツ、トートバックなど、「パグスタイル」のアイテムが続々と増えています。
――すごいですね。どうして爆発的な人気に?
山田さん:実は…2018年に某有名歌手がコンサートで新潟に来たんです。パグ好きとしても有名で、「ワズスタイル」にパグが看板犬としているとどこかで知ったらしく、来店されたんです。そしたら、手ぬぐいを買ってくれて。Twitterにツイートしてくれたら…ファンだけでなく、パグファンにも好評で。最近、ファンのなかではパグの手ぬぐいをコンサート中に振るのが定番になっているそうですよ(笑)
――某有名歌手がまさかパグ好きとは。知りませんでした(笑)
山田さん:あと8月9日は「パグの日」って知っていますか? パグに手ぬぐいをほうかぶりさせてSNSに投稿するのが最近では主流なんです。去年はうちの手ぬぐいを被ったパグがSNSにたくさん投稿されていたんです。お陰様で新潟県内だけでなく、全国からパグ好きの方が来店してくれるようになりました。
――パグの人気は絶大ですね。
山田さん:着物屋としてもう20年が経ちますが、「パグスタイル」の方が全国的に有名になっちゃいました(笑)。手ぬぐいは和小物として、着物を着たときに使えるモノはないかとはじめたのがキッカケだったので、今では阿賀野市にある「藤岡染工場」にお願いして、伝統技術でしっかりと染めてもらっています。キャラクターグッズではなく、あくまで基本は和なのでね。
――着物とパグが合わさったお店は、全国的にもここしかないと思います。「パグスタイル」をはじめるに当たって、着物屋として葛藤はありましたか?
山田さん:着物屋だから着物に関係のない商品などやらない、そんな考えの着物屋も多いと思います。それはそれで日本の伝統をしっかりと伝えてくれているので大切です。ただ、基本は着物としてブレずに、関連して展開できるモノはするべきだと考えるのが「ワズスタイル」です。その揺れ幅を大きく考え、パグが大好きだから「パグスタイル」は生まれ、本気でやろうと決めました。
――20年間、着物屋としてやってきた今の答えなんですね。
山田さん:そうですね。20年間で着物をメインとしたブライダルの展開など、さまざまなチャレンジもしてきました。それが最終的に「オリジナル振袖」となり、カッコイイからという理由で買ったMac(パソコン)で描けるようになったイラストが「パグスタイル」となりました。昔の「ワズスタイル」には浴衣があって、雑貨もたくさんありました。それが時代の流れや、お客さんのニーズによって変化して今があります。着物屋としての基本をしっかりと守り、伝えていくことは継続しながら、パグ好きという新しいニーズも取り入れて「ワズスタイル」らしく発信していきたいですね。
「大和新潟店」が閉店し、「ふるまちモール」ですら買い物客はまばらな現状。正直、今の古町は活気が失われつつあります。そんな寂しい状態に、どうしたらいいのか、どう考えていくべきなのか自ら筆を執ってブログに書き示している山田さん。「昔はたくさんの人で賑わっていて、商売はしやすかった。閑散としている現状では、チャレンジする人も少なくなり、商売としては難しくなっている。ただ、お店を目指してわざわざ古町へ来てくれる人も多いのは事実。そんなお店がたくさんあれば、昔みたいな活気を取り戻せるのでは」と話してくれました。インターネットで何かを買うのは簡単です。でも、足を運んで、会話をして、愛犬に会って、なんなら写真なんか撮ってみたり。お店での買い物だって、立派な伝統なんじゃないかなと。帰り道にフラフラ歩いて思ったコトでした。
ワズスタイル
新潟県新潟市中央区古町通645
025-228-0841