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篠笛の音色で新潟を彩るアーティスト「渡辺百枝」。

「篠笛」という楽器をご存知でしょうか? 篠竹(しのだけ)に歌口と指穴を開けた横笛で、お祭りや民俗芸能に使われてきた伝統的な和楽器のひとつです。その篠笛を使い、幅広いジャンルの音楽に挑戦しているのが、今回ご紹介する渡辺百枝さんです。気さくな人柄の渡辺さんから、篠笛の魅力について聞いてきました。

 

 

渡辺 百枝 Momoe Watanabe

1991年新潟市中央区生まれ。小学4年で学校の「万代太鼓部」で篠笛に触れ、様々な団体で篠笛の腕を磨く。大学卒業とともにギターとコラボしたユニット「Sora(ソラ)」として活動をはじめ、解散後はソロとしてイベントやコンサートで演奏を重ねる。ミニアルバム『のどかな風が、幸せを蒔いたら。』『いろいろねいろ』をリリース。趣味は旅行で、憧れているアーティストは小林幸子さん。

篠笛との出会いは、神社のお祭り。

——まずは渡辺さんが篠笛をはじめたいきさつを教えてください。

渡辺さん:家の近所に神社があって、幼い頃からおじいちゃんがお祭りに連れて行ってくれたんです。そのときに万代太鼓を演奏する小学生たちを見て、なかでも篠笛に強い憧れを抱くようになり、「小学生になったら自分も演奏してみたい」と思っていました。

 

——ずいぶん早い頃から篠笛への憧れを抱いていたんですね。じゃあ、小学校に入ってから篠笛を?

渡辺さん:はい、小学4年生のときに「万代太鼓部」へ入部したんです。篠笛に対して簡単に演奏できそうな印象を持っていたんですけど、やってみたらなかなか音が出なくて難しかったです。でもおばあちゃんから「何事も三年はやらないと上達しない」と励まされて続けました。

 

 

——かなり練習を重ねたんですか?

渡辺さん:「練習」というよりは「遊び」としてやっていました。友達がゲームで遊ぶみたいに、私は篠笛で遊んでいたんです。楽しみながらやっていたので、続けることができたんだと思います。

 

——楽しむことって大切ですよね。

渡辺さん:そうだと思います。中学生の頃は「BSNキッズ和楽器演奏隊」に入りました。それまではお祭りのお囃子ばかり演奏していたんですけど、和楽器を使っていろいろな曲を演奏できることを知りました。いろいろな楽器とのアンサンブルを体験したりして、新しい楽しさに気づくことができましたね。

 

——演奏の幅が一気に広がったわけですね。

渡辺さん:そうなんです。それで大学を卒業してすぐにギターと篠笛のコラボユニット「Sora」を結成しました。ギターを担当していたのは小中高校の同級生で、お互いに地元を盛り上げたいという思いを持っていたんです。洋楽のカバーやオリジナル曲の他に、佐渡おけさのアレンジなんかもやっていました。ライブハウスやイベントで演奏するだけではなく、CDを自主制作したことで曲作りの楽しさをおぼえましたね。

 

 

——大学を卒業してすぐに、本格的な音楽活動をはじめたんですね。思い出に残っている活動があったら教えてください。

渡辺さん:幼い頃によくおじいちゃんからお祭りに連れて行ってもらった神社で、ライブをやったことですね。高齢の方も含めて地元の方々がたくさん集まってくれたのが嬉しかったです。

 

——「地元を盛り上げたい」という思いが叶ったわけですね。「Sora」での活動はどれくらい続いたんですか?

渡辺さん:5年くらいだったと思います。解散後もいろいろなミュージシャンとセッションしてきたことでジャンルの幅が広がりました。J-POP、洋楽、ジャズ、演歌、民謡……どんなジャンルにもチャレンジしてきたんです。

 

新潟の風景や色彩を、篠笛で表現。

——渡辺さんが篠笛を演奏するときに、心掛けていることがあったら教えてください。

渡辺さん:新潟の風景を表現するよう心掛けています。自然を見て感じたことを曲にしたり、シャッター街をテーマにしたりして曲をつくっています。ネガティブな意味ではなく、「前を向いて進んでいこう」というポジティブなメッセージを込めて演奏しているんですよ。

 

——ありのままの新潟を表現しているんですね。

渡辺さん:そうですね。あとセカンドアルバムの製作中に感じたんですけど、私は色を意識して演奏したり、曲をつくったりしていることに気がついたんです。濃厚な色は強い音色、淡いパステルカラーは優しい音色というように表現しています。セカンドアルバムのタイトルも『いろいろねいろ』と名付けました。

 

 

——「音色」というだけあって、音と色には近いものがあるのかもしれませんね。

渡辺さん:そうですね。あと聴いている方々が飽きないステージづくりを意識しています。「こんなこともできるのか」と新しい発見をしていただいて、篠笛に親しんでいただけたら嬉しいですね。

 

——そういう意味でも印象に残っているステージはありますか?

渡辺さん:2022年に「新潟県民会館」の小ホールで開催した「渡辺百枝篠笛コンサート」です。初のワンマンコンサートだったので、すべて自分で企画したんですよ。いろんなゲストミュージシャンとセッションしたんですが、なかでも尊敬する小林幸子さんの曲を演奏した際に、サプライズでご本人からメッセージをいただけたことは嬉しかったですね。未だにそのコンサートを超えるものはないです。

 

——それは嬉しかったでしょうね(笑)。その他にも、篠笛奏者として活動してきたなかで喜びを感じたことはありますか?

渡辺さん:篠笛の演奏を通じて、いろいろな方々と出会ったり繋がったりできることです。東日本大震災が起こった後、炊き出しに同行して篠笛を演奏してきました。娯楽がないせいかとても喜んでくれて、あるおばあちゃんは泣きながら聴いてくれたんです。そのおばあちゃんとは、亡くなるまで、毎年会っていました。

 

——篠笛は人との縁もつないでくれるんですね。では最後に、今後やってみたいことがあったら教えてください。

渡辺さん:新潟をはじめ、東京や大阪でツアーをやる予定なんです。新潟の風景を篠笛に乗せて、県外の方々にもお届けしたいんですよ。あといつか海外でも篠笛の魅力を伝えたいと思っているんです。

 

 

——それはすごい。

渡辺さん:実は以前もアメリカへ渡って、小中高校を回りながらミニコンサートやワークショップを開いたんです。そのときは日本の子ども達よりも興味を持ってくれました(笑)

 

——ぜひいつか実現してほしいですね。

渡辺さん:あとは……憧れの小林幸子さんと共演するのが夢です。

 

 

 

渡辺百枝

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