20種類もの貝を楽しめる!貝料理専門店「貝楽酒場たらふくうなり」。
食べる
2020.07.08
「鍋茶屋通り」にある貝料理専門店を訪ねてみた。
新潟市古町にある「鍋茶屋通り」。石畳の小路には老舗料亭「鍋茶屋」をはじめ料亭や寿司店が並び、しっとりと落ち着いた風情があります。その通りに、新潟では珍しい貝料理専門店「貝楽酒場 たらふくうなり」も軒を連ねています。カウンターのガラスケースや水槽には様々な貝が並べられ、貝好きな人はテンションが上がること間違いなし。今回はオーナーの唐澤さんに貝料理の魅力を聞いてきました。


貝楽酒場 たらふくうなり
唐澤 直秀 Naohide Karasawa
1976年群馬県生まれ。新潟の短大を卒業後「五郎 松海が丘店」でアルバイトを始め、就職。5年後、群馬県に戻り、仕出し屋で修行した後、知り合いに誘われて再び新潟へ。中国茶カフェ、「五郎 万代店」を経て、2009年に新潟駅前の「越後一会 十郎」を店長として立ち上げる。古町に和食店としてオープンした「たらふくうなり」を貝料理専門店にリニューアルする際、オーナーに。趣味はゴルフ。以前はウインドサーフィンやスノーボードにもよく行っていた。
ウインドサーフィンが縁で調理の道へ?
——今日はよろしくお願いします。唐澤さんは新潟の方なんですか?
唐澤さん:出身は群馬県です。私は中学校と高校で陸上をやっていたので、大学を陸上の推薦受験してたんですが、仲間が新潟県の工業短大を受けることになったので、ついてきちゃったんです(笑)。そしたら学校の近くに海があったので、海がない群馬出身の私はウインドサーフィンにハマっちゃったんですよ。
——調理ではなく工業の勉強をしてたんですね。どこで調理の道に進むことになったんですか?
唐澤さん:ウインドサーフィンをきっかけに居酒屋「五郎」のオーナーと知り合ったんです。ちょうど「松海が丘店」をオープンするタイミングだったので、就職で悩んでいたこともあってその店でアルバイトすることになったんですよ。料理好きな母の影響で私も子どもの頃から料理が好きで、料理を作っては短大の仲間に振る舞ったりしてたので、自分に向いているアルバイトだと思いましたね。
——どこに縁があるかわからないですね。それじゃあ本格的な料理は「五郎」で覚えたんでしょうか?
唐澤さん:そうですね。魚のさばき方から調理まで教わりました。お店を任されることも多くて、料理から接客まで全部1人でこなしていました。あとお店で出す魚は自分たちで釣りに行ったりするんです。夜中までお店の仕事をした後、朝早く海へ漁に出てアジやキスを釣ってくるという生活をしていました。けっこうハードでしたね。
——へ〜、漁までやってたんですね(笑)。その後はずっと「五郎」で働いてきたんですか?
唐澤さん:いいえ。日本料理を本格的に勉強したかったので地元の群馬に帰って仕出屋で修行しました。そこの修行もハードでしたね。毎日お葬式とかお通夜とかの料理を作っていたので、多い時は300人前の料理とか作るんですよ。夜中の2時頃から夜の10時頃まで仕事をしてました。おかげで味はもちろん、技術や仕事の段取りもみんな覚えることができました。「五郎」でのハードな経験があったのでくじけずに済みましたけど、そうじゃなかったら毎日泣いてましたね(笑)

和食屋「たらふくうなり」を貝料理専門店に生まれ変わらせる。
——それからまた新潟に戻ってきたのはどうしてなんですか?
唐澤さん:知り合いが中国茶カフェをオープンすることになって、料理長として誘ってもらったんです。そこで2年働いた後、今度は「五郎 松海が丘店」時代の兄弟子に誘われて。その人は暖簾分けのかたちで「五郎 古町店」をやっていて、新しく「万代店」をオープンするので店長として来てほしいということでした。「五郎 松海が丘店」の頃から「将来は一緒に店をやろう」と話し合っていたので、喜んでお手伝いすることにしました。
——なるほど。また「五郎」に戻ったんですね。
唐澤さん:はい。その後も「越後一会 十郎」を店長として立ち上げたり、グループ店にあちこち行ったりしてました。その頃に、和食屋として「たらふくうなり」がオープンしたんですが、売り上げが伸び悩んでいたんですよ。
——それで唐澤さんが任されることになったんですか?
唐澤さん:以前、私が社長に「貝料理の専門店をやりたい」と話したことがあったんです。私は個人的に貝が好きだったし、新潟に貝料理の専門店がなかったので面白いんじゃないかって思ったんですよ。その時は軽くあしらわれちゃったんですけど、社長がその話を覚えていて「たらふくうなり」を貝料理専門店として私に任せてくれることになったんです。
——貝料理専門店としてリニューアルするにあたって、大変だったことってありますか?
唐澤さん:メニューを決めるのは苦労しましたね。普通の料理を出してもなかなか人の気持ちに刺さらないと思うんです。だから全国からいろんな貝を集めたり、他県の貝料理店に出かけて色々食べたりして勉強しました。

缶で貝を蒸し焼きにしたり、温めた肝につけてバイ貝を楽しむ。
——ここでおすすめの貝料理を教えてください。
唐澤さん:まずは「貝賊ガンガン焼き!!」です。海の男たちが生み出した貝料理究極の調理法なんです。ブリキ缶の中で、カキ、ホタテ、ハマグリ、ホンビノス貝、白貝を蒸し焼きにするシンプルな料理なんですけど、うま味を逃がさずふっくら焼きあがって貝本来の味を楽しむことができるんです。
——缶の蓋を開けた瞬間、貝の香りがすごいですね。それからもうひとつ、こちらの料理は…。
唐澤さん:「丸ごとバイ貝の焼きフォンデュ!!」です。新潟の地元貝としても有名なバイ貝を丸ごと料理できないかと考えて。バイ貝ってキモがコクのあるレバーみたいな味わいで美味しいんですよ。キモにバター、ダシ醤油、酒を加えて温めて、お刺身にできるバイ貝を軽く炙ってつけながら食べてもらうんです。日本酒によく合うメニューですね。

——メニューにある「貝出汁ラーメン」も気になりますね。
唐澤さん:ハマグリ、アサリでダシをとった塩味のスープで、トッピングにはネギ、メンマ、小松菜、鶏チャーシューが乗っています。あっさりしているので飲んだ後の〆にはぴったりなんです。
——どれも美味しそうですね。貝料理を作る時に気をつけていることって何でしょうか?
唐澤さん:貝自体に強いうま味があるから、下手に味付けするとそのうま味が消えてしまうんです。だから貝のうま味を生かすように気をつけてます。調理する際にはバターや麹とかの、貝の味と相性のいいものを使うようにしています。

貝の魅力と、今後お店でやりたいこと。
——唐澤さんは貝の魅力ってどんなところにあると思いますか?
唐澤さん:とにかくうま味がハンパないので、貝を湯がいたスープですら捨てずに使えちゃうんですよ。その上、焼く、煮る、蒸す、スープのダシ…何にでも使える万能食材なんですよね。栄養価も高いので、肝機能向上や貧血にもおすすめです。貝ひとつで栄養ドリンク1本分の栄養に匹敵するほどで、カキの試食をした次の日なんかきまって体調がいいんです。
——今後やってみたいことってありますか?
唐澤さん:新潟には美味しいのにスポットが当たっていない食材なんかも多いので、生産者の方とコラボしたメニューをやってみたいですね。農家の方にお店に来ていただいて、農産物の振る舞いとかやってもらったりするのも楽しそうですよね。そんな感じでお互いに応援し合ってやっていけたらいいなって思ってます。
——最後に、唐澤さんのおすすめって、どの貝ですか?
唐澤さん:個人的にはハマグリかな?

いろいろな店で経験を積み、念願の貝料理専門店を始めた唐澤さん。メニューの貝料理はどこかひと捻りした、ちょっと変わったものが多いような気がします。地酒にもこだわり、いろいろな種類のお酒を置くようにしているのだそうです。うま味の強い貝料理を肴に新潟の地酒を楽しんでみてはいかがでしょうか?
貝楽酒場 たらふくうなり
〒951-8063 新潟県新潟市中央区古町通1437-6
025-201-8429
17:30-0:00
無休
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