弥彦山や彌彦神社など、人気の観光スポットがたくさんある弥彦村。初詣はもちろん、菊まつりやもみじ谷の紅葉見物など、多くの観光客でにぎわいます。そんな弥彦村に、モデルハウスの中で営業している「BOSCAIOLO(ボスカイオーロ)」という名のユニークなイタリア料理店があるんです。今回はオーナーの小川さんに、どうしてモデルハウスの中でカフェを営業しているのか、どんな料理が食べられるのか、お話を聞いてきました。
cucina YAHIKOYAMA BOSCAIOLO
小川 綾子 Ayako Ogawa
1976年小千谷市生まれ。長岡工業高等専門学校卒業後、土木コンサルタント会社で設計の仕事に就くが退社し、悠久山栄養調理専門学校で料理を学び直す。卒業後は七里ケ浜のピッツェリアや新潟市のイタリアンレストラン、ワイナリーで経験を積む。その間にイタリアに渡ってイタリアンワインのソムリエ資格も取得し、シチリアのピッツェリアでも修行。2017年にイタリア料理店「cucina YAHIKOYAMA BOSCAIOLO」をオープンする。
——モデルハウスのせいか、なんだかお店っていうよりも友達の家に遊びにきたみたいな感覚ですね(笑)
小川さん:居心地がいいので、ゆっくり過ごしていかれるお客様も多いんですよ。最初はモデルハウスということもあって、お客様がお食事しているところに内覧のお客様が入ってくると雰囲気が壊れちゃうかなって心配したんですけど、モデルハウスを運営している株式会社二村建築の方も気を遣ってくれているので助かります。
——なるほど。居心地がいいっていうのはモデルハウスならではのメリットですね。
小川さん:お子さま連れのお母さんには座敷席が人気ですね。扉を閉めれば個室にもなるので、小さなお子さまがいても人目を気にしないでお食事していただけるんですよ。私自身子どもを産んで育てている経験から、そういう苦労はよくわかるんですよね。
——こういうかたちでの営業って珍しいですよね。けっこうメリットありそうですね。
小川さん:そうですね。あと最近は雑貨屋さんとか本屋さんとシェアしている飲食店も多いじゃないですか。それに似たメリットもありますね。満席でお待ちいただいているお客様には、その間にモデルハウスの中を見学してもらったりできますから(笑)
——なるほど(笑)。そもそも、どうしてモデルハウスでイタリアンカフェを営業することになったんですか?
小川さん:このモデルハウスを運営しているのは、私たち家族が巻に引っ越してきたとき、古民家をリフォームしてくださった株式会社二村建築がやっているんです。元々、株式会社二村建築がカフェをやっていたんですが辞めてしまったんですよね。でも、そのままにしておくのはもったいないから、そこで飲食店をやってくれる人を探していたそうなんです。私が料理の仕事をしていることを知った株式会社二村建築の社長さんが、ここでお店をやるように勧めてくれました。
——へえ、どこに縁があるかわかりませんね。
小川さん:本当にそうですよね(笑)。私もいずれはお店をやりたいと思っていたので、自分の年齢や子どもの成長のタイミングを考えて、今始めるしかないと思って、2017年に「BOSCAIOLO」をオープンしたんです。
——小川さんはいつから料理の仕事をされているんですか?
小川さん:子どもの頃からものを作るのが好きだったんです。興味があった料理と建築、どっちの仕事を目指すか迷ったあげく長岡工業高等専門学校で土木の勉強をして、卒業してからは土木コンサルタントの会社で土木構造物の設計をしていました。
——それが結局、料理に。
小川さん:1日中パソコンに向かっている仕事が性に合わなかったんです(笑)。そこで料理の道に進み直すことにして、悠久山栄養調理専門学校で料理の勉強をしました。卒業後はアルバイト先のホテルから紹介してもらった、湘南の七里ケ浜にあるピッツェリアに勤めました。
——ずいぶん遠くの店で働き始めたんですね。そこでの修行はいかがでしたか?
小川さん:決まった仕事だけをするんじゃなくて、何でもやらせてもらえたので仕事の幅は広がりましたね。ローマピッツァの作り方もその店で覚えました。混んできたときにやるべき作業の優先順位を間違えてよく怒られたりしていましたが、すべていい勉強になりました。
——そのお店で働いた後は?
小川さん:新潟に戻ってイタリアンレストランに勤めました。そのお店では料理だけじゃなくてワインについても教わって、すっかりワインにハマってしまったんです。もっとイタリアンワインについて勉強したいと思うようになったので、イタリアンワインのソムリエの資格を取るためにイタリアのトスカーナへ渡りました。
——おお!本場で勉強してきたんですね。アクティブ!
小川さん:トスカーナでソムリエの資格を取った後、シチリアのピッツェリアでも修行してきました。シチリアってイタリア人以外にもアラブ人がいたりして、人種のるつぼみたいなところなんですよ。料理も本土イタリアとは違ってちょっと独特だから興味があったんです。
——シチリアで修行してみていかがでしたか?
小川さん:現地の食材に直接触れることができたのは大きかったですね。特に野菜の味が日本とは全然違うんですよ。土や気候の違いなんでしょうか。とにかく味がしっかりしてパワフルなんですよ。灼熱の中で負けずに育った強さが味に現れているのかもしれませんね。焼いてオリーブオイルと塩で味付けすれば美味しく食べられるんです。食材がパワフルだからイタリアンワインもパワフルな味わいなんですね。
——でも、イタリア語は話せたんですか?
小川さん:ほとんどわかりませんでした(笑)。でも簡単な日常会話はなんとなくできたし、仕事も流れがわかるから意思の疎通はできました。職場にはモロッコやチュニジアの人もいて、お互いに言葉がわからないのにニュアンスで口喧嘩したりしてました(笑)
——それもすごい経験ですね(笑)。日本に帰ってからはどんなことをしていたんですか?
小川さん:新潟市にある調理師専門学校で講師の助手やワインの講師をやっていたんですけど、現場に戻って調理の仕事をしたくなったのでレストランやワイナリーで働きました。主人の転勤について上越に行ったときは、タウン情報のフリーペーパーを編集する仕事もしました。いろいろな飲食店を取材することで学んだことが多かったですね。そのすべての経験が今も役に立っています。
——料理のこだわりを教えてください。
小川さん:弥彦には県外の観光客もたくさん来ますし、地元には美味しい野菜もいっぱいありますから、新潟県産の野菜をたくさん使いたいと思っています。そのためにも、野菜の味を生かすように調理することを心掛けていますね。ソースやドレッシングも化学調味料を使わずに、いちから手作りしているんです。
——おすすめはどんな料理ですか?
小川さん:ちょっと長い名前なんですけど「自家製サルシッチャとアレッタたけのこのピッツァビアンカ」です。特徴としてはトマトソースがのらないピッツァで、ハーブを効かせたサルシッチャというソーセージ、アレッタがトッピングされています。アレッタっていうのはブロッコリーとケールを掛け合わせた苦みのある野菜なんですよ。モッツァレラチーズのクリーミーさも相まってビールのお供にぴったりです。今回は旬のたけのこも使っているので、風味や食感も楽しんでいただけます。
——他にもありますか?
小川さん:「カンノーロ」っていうシチリアを代表するお菓子もあります。マルサラ酒を練り込んだ生地を筒状に揚げて、リコッタチーズたっぷりのドライフルーツが入ったクリームを詰めたものです。
——本格的なイタリア料理が充実しているんですね。では最後に今後やってみたいと思うことはありますか?
小川さん:いくつかやってみたいことはありますね。せっかく目の前に弥彦山が見えるので、テラス席を作ってもらう予定なんです。あとテイクアウトメニューにも力を入れていきたいと思っています。コロナ禍が落ち着いたら子どもを対象にした料理教室とか、大人向けにワイン講座を開いてみたいんですよ。たくさんの人にイタリア料理やワインの美味しさを伝えていきたいですね。
取材前に想像していたよりも、モデルハウスとカフェやレストランとの相性はいいように思えました。友達の家みたいにくつろいだ雰囲気の中で、本格的なイタリア料理を楽しむことができる「BOSCAIOLO」。これからの季節、緑が綺麗な弥彦山を眺めながら美味しい料理を楽しんでみてはいかがでしょうか?
cucina YAHIKOYAMA BOSCAIOLO
新潟県西蒲原郡弥彦村大字上泉1792-5 株式会社二村建築内
080-7837-9310
11:30-13:30(土日曜は14:00まで)※イタリアンデリの販売は11:00から
月火水曜休