本町にある「にいがた人情横丁」で22年も続く「紅茶のお店 ひまわり」が、先月、リニューアルオープンしました。賑やかで可愛らしい外観に、店内にはたくさんのくまのぬいぐるみ。小さいけれどとても個性的で楽しいお店です。今回は「まこさん」の愛称で親しまれている店長の小山さんからいろいろとお話を聞いてきました。
紅茶のお店ひまわり
小山 政美 Masami Koyama
1967年新潟市生まれ。大阪の紅茶専門店に勤めた後、新潟に戻り、当時古町にあったパン屋さんで働く。1999年に「紅茶のお店ひまわり」をオープン。15年間ダンスを習っていたこともあり、講師経験もある実力者。実は紅茶党ではなくコーヒー党。愛称は「まこさん」。
――まずは、小山さんが「紅茶のお店 ひまわり」をはじめたきっかけから教えてください。
小山さん:1994年に、そのとき1歳になる直前だった息子が病気で亡くなったんです。大阪に住んでいた私が翌年新潟に戻ってきたのも、連れ戻されたような状態でした。当時は息子の後を追うことしか考えられなくて、そういった日々がずっと続きました。
――それはお辛かったですね……。
小山さん:でもある日、このまま私が息子の後を追って死んでしまったら、自分の両親にも私と同じ思いをさせてしまう、ということに気づいたんです。そのときから「息子を産んだからこそ幸せになりたい」と考えるようになりました。それで、前から自分のお店を持ちたいと考えていたこともあって、「ちゃんと自分の足で立って何かをやるチャンスだ」と思い、このお店をはじめることを決めました。
――紅茶のお店にしようと思ったのは、何か理由があったんでしょうか。
小山さん:新潟に帰ってきてから、どこのお店に行っても自分の好きな紅茶に巡り合えなかったんですよ。それで、せっかく大阪の紅茶専門店に勤めていたこともあって、その技術を新潟でもいかしたかったんです。
――最初から人情横丁でお店をはじめるつもりでしたか?
小山さん:お店を開く前は古町でお仕事をしていて、休憩中はよくそのあたりを散策していました。当時、人情横丁には小さなカレー屋さんがあって、そのお店が「このくらいの規模だったら私にもできるかもしれない」と思わせてくれたんです。親に「お店をはじめたい」と話をしてみたら、そのときの私は息子のことがあって気を落としていたので、「それで元気になれるなら」と、物件探しを手伝ってくれました。でも、人情横丁の物件がなかなか空かなかったんです。それで、とりあえず友人と2週間イギリスに行きました。そしたら日本に戻っている途中、親から「人情横丁が空いたらしい」と連絡が来たんですよ。
――それはよかったですね。
小山さん:でも、そのイギリス旅行で貯めていたお金を全部使いきってしまいました(笑)。店内に飾ってあるくまのぬいぐるみは、そのときに買ってきたものなんです。
――たくさん飾ってありますね。ずっと気になっていました。
小山さん:これはイギリスのブランド「Harrods」のくまのぬいぐるみなんですけど、足の裏に西暦が印字されているんですよ。その旅行中に1998年の子を購入して、その翌年も、お店がオープンした記念に購入しました。それをきっかけに、「お店が続く限りは毎年買おう」と決めて買い続けていました。
――なるほど。それでたくさん置いてあるんですね。
小山さん:でも、2014年で一旦購入をやめたんです(笑)。そしたら最近、お店のお客さんがわざわざイギリスにいるお友達に頼んで、2020年と2021年の子を持ってきてくれたんです。ありがたい話ですよね。
――「紅茶のお店」としての、こだわりがあれば教えてください。
小山さん:自分が美味しいと思う紅茶しか提供したくないんです。あまり紅茶を飲んだことがないという方にもお店に来てもらいたいし、より多くの方に紅茶を好きになってもらいたいので、シンプルで飲みやすい紅茶を提供しています。
――紅茶メニューは何種類あるんですか?
小山さん:今は全部で8種類あります。紅茶メニューを注文したお客さんは、カップを選べるんですよ。自分の好きなカップを選んで紅茶を飲むとワクワクするじゃないですか。ストレートティーのカップだけで30種類あるから……、全部で50種類はあると思います。常連さんで「私はこのカップ!」って決めている方もいます。
――お気に入りのカップで楽しむっていいですね。スコーンもとても美味しそうです。
小山さん:これは、大阪の紅茶専門店にいたときに学んだもので、イギリスにいる友人のおばあさんがレシピを教えてくれた、とても素朴なスコーンです。通常のスコーンというよりは、パイに近いような味わいですね。夏はお休みしているんですけど、かぼちゃ味だったりショコラ味だったりと、季節によって味を変えています。
――ところで、テイクアウトのお弁当もあると聞いたんですけど……。
小山さん:「笑顔〇〇(まるまる)日替わり弁当」という名前で、予約制のみで販売しています。実はお惣菜屋でお弁当作りの修行もしているんですよ。だから配色やバランスにはこだわって、お弁当のふたを開けたときに笑顔になれるようなお弁当を作っています。
――これまでお店をやってきて、嬉しかったことを教えてください。
小山さん:以前、新潟の情報雑誌で私自身を取り上げてもらったんですけど、その記事をきっかけに、同じ境遇の方やそうじゃなくても心に負担があるという方がたくさんお店に来てくれました。私がいることによって足を運んでくれるお客さんがいるということは、とても嬉しいですね。
――これからこんなことをしてみたい、と思い描いていることはありますか?
小山さん:「みんなのおうち キャベツ園」という名前で、子どもからお年寄りまで気軽に足を運ぶことのできるお家を作りたいんです。そこでは子どもに包丁を持たせて野菜を切らせてあげたり、おじいちゃんやおばあちゃんが来たら話し相手になってあげたりして、お互いに助け合える、そんなお家を作りたいと考えています。コロナ禍が落ち着いたら次の道へとステップアップしたいですね。でも、まずはこのお店。ここでのこれからの新しい出会いを楽しみにしています。
お客さんの中には、紅茶を味わうだけじゃなくて、やさしくて人情味にあふれる小山さんに会いに行くのが目的の方もきっとたくさんいるんだろうなと、取材をしながら思いました。ちょっとひと息つきたいときや元気がないときは、ぜひ小山さんに会いに「紅茶のお店ひまわり」に足を運んでみてはいかがでしょうか。
紅茶のお店ひまわり
新潟市中央区本町通5番町本町中央市場内
火~金曜 11:45~16:00(LO)
土曜 15:00~18:00(LO)
(2022年4月以降変更あり)
日・月曜 定休日