家族のお祝いの場としても親しまれる、明治から続く「割烹 大善」。
食べる
2023.04.07
古町の老舗「割烹 大善(だいぜん)」。コロナ禍となる前は会社の会合や法事で使われることが多かったそうですが、時代の変化とともにお祝いごとやテイクアウトにも力を入れるようになり、この数年、「大善」の名は以前よりも広まっているのだとか。今回は4代目の若女将・大坂さんに、働きはじめた頃のエピソードやコロナ禍をどう乗り切ったのかなど、いろいろとお話を聞いてきました。

大善
大坂 美佳子 Mikako Osaka
1976年村上市生まれ。看護師の専門学校を卒業し、17年間看護師として働く。2016年に「大善」に入り、2019年に4代目の若女将となる。

明治37年創業。老舗割烹は、家族が集まる場所へと変わっている。
——「大善」さんは歴史のある割烹ですよね。
大坂さん:明治37年に割烹として登記されました。大正に入って、元の店主が店を手放すというので、当時板前として働いていた大坂善太郎が店を買い取り、氏名から一字ずつ取って「大善」と名付けたそうです。このビルは昭和47年にできたのですが、当時は市内にこれほど大きなビルはなく「こんな建物は初めてだ」と大変驚かれたようです。
——大坂さんが若女将になるまでのことについても教えてください。
大坂さん:私は専門学校を卒業して17年間、看護師をしていたんですよ。「大善」に入ったのは2016年です。2019年の年末に「若女将の名刺を作ろうか」なんて言っていたらすぐにコロナ禍になってしまい、しばらく名刺を配る機会がなかったですね。
——大変なタイミングで若女将になられましたね。
大坂さん:いちばん仕事を吸収しなくちゃいけない時期がコロナ禍のはじまりで、その頃やっていたのは助成金の書類作りばかりでした。経営に携わるようになるまで3年かかりましたね。まさかこれほどコロナ禍が長引くとは思わず、「こんなに休業して大丈夫なのか」と不安しかなかったです。その状況を知っているから、今はお座敷に笑い声がある、お店に人の影があるってだけでも「やっていてよかった」と心から思いますね。

——少人数で使えるお部屋から大広間まで、いくつも個室があるそうですね。
大坂さん:100畳の大広間はコロナ禍となる前は180名、今は100名までご利用いただけます。もともとは法事に力を入れていたんですけど、法事で使う方がまったくいなくなってしまって。そこで広告宣伝をガラリと変えて、お祝いごとに力を入れるようにしたんですよ。
——どんなお祝いの席を想定されたんでしょう?
大坂さん:両家の顔合わせ会やお食い初め、七五三のお祝い、お子さまの卒入学のお祝いなどです。お祝いはなくなることはないし、家族が集まるのであれば大人数になることもないですし。
——確かにそうですね。宣伝の効果はいかがでしたか?
大坂さん:この3年で、お祝いの席でご利用いただく機会がすごく増えました。特に顔合わせ会。代替わりした頃は顔合わせ会でのご利用はほとんどなかったのですが、今では「顔合わせといえば『大善』」とだいぶ定着してきたと思います。

両家の顔合わせ、七五三に卒入学祝い。場面に合わせた心からのおもてなし。
——「大善」さんには大人数の宴席のイメージが強かったので、そう聞いてびっくりしました。顔合わせ会ならではの工夫はありますか?
大坂さん:普段は一品ずつお料理をお出しするんですけど、ご両家の会話が中断してはよくないので、何度もお部屋を出入りせずともいいように大きめのお盆に焼き物までご用意して、はじめの時間を大切にしてもらえるようにしています。
——ご両親の緊張している感じが伝わってきます?
大坂さん:静まりかえって「ごくり」と息をのむ音が聞こえてくるようなとき、ありますよ。顔合わせのときには桜茶をお出しするんです。いまどき桜茶を出すお店って少ないみたいで、親御さんが「自分たちの結婚式以来だ」って言ってくださることもあります。それが会話のきっかけになったらと思っています。

——ハッピーな会が増えているっていいですね。
大坂さん:「割烹」って敷居がすごく高いイメージがあるから、そうじゃなくてお子さま連れでも来てもらえるような環境を作りたいと思っているんです。「ベビーベットもおもちゃも、お子さまランチもありますよ」と広報して、だんだんとお食い初めや七五三、入学や卒業のお祝いごとでの利用も増えていったんです。
——ちなみにお料理にはどんなこだわりが?
大坂さん:できるだけ地のものや季節のもの、のっぺや南蛮えびなどの郷土料理をお出しするようにしています。ただ最近、新潟で獲れるお魚が変わってきていて。今までのように地のものを使えず、難しいところはあるんですが、それでも旬の食材を出せるようにしています。

「割烹」の敷居をなくし、かしこまらず過ごしてもらいたい。
——ところで大坂さん、老舗割烹の若女将になることにプレッシャーはありませんでしたか?
大坂さん:それが、働きはじめるまでは「大善」をよく知らなかったんです(笑)。主人から詳しく聞いていなくて。ただのお料理屋さんだと思っていたら、こんなにすごいお店だったんだって、お座敷に出るまで分からずにいました。
——そうでしたか(笑)
大坂さん:はじめはお座敷でまったく喋れなかったですね。どんなことが失礼なのか、何を話したらいいのか分からなくて(苦笑)。お店の調度品を聞かれても、知識がないから答えられず。看護師だった頃は、社長さまとお話しするような話題を知らなくても問題ありませんでしたから。ここで働くようになってから、お客さまにたくさん教えてもらっています。

——老舗の歴史をつないでいく重みを感じます。
大坂さん:「大善」のようなお店が愛されていた頃と今とでは、少し時代が変わってきていますよね。うちみたいにバリアフリーじゃないお店は、店造り自体が時代に合わなくなってきているとは感じます。古きをよいものとして、これからどうしていったらいいのだろうといつも考えます。
——そんな中で新しい試みをいくつもされてきたわけですね。
大坂さん:コロナ禍となり、テイクアウトもはじめました。何年もおせちをご用意していなかったのですが、一昨年から再開したんです。最初の年は最低限の数のご注文でしたが、次の年はリピーターさんや口コミで前年の倍の数のご注文をいただきました。お弁当のテイクアウトは、うちを初めて利用された方のご注文が多くて。美味しかったからまた利用させてください、というお声をいただきました。そうやって「大善」を知ってもらって、お店にも来ていただけたらいいなと思います。
——より「大善」さんが利用しやすくなりそうですね。
大坂さん:常連さんもだいぶ戻って来られているし、今までのお客さまから更に客層が広がっている感じがします。会社関係の方だけじゃなく、一般の人にも「大善」という名が少しずつ広まっている実感はあるかな。とにかく「割烹に来る」という敷居をなくしたくて。お祝いだとか特別な場面でなくてもかしこまって来るようなお店ではないので、皆さんに使ってもらいたいと思います。

割烹 大善
新潟市中央区東堀前通9-1386
025-228-1916
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