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四季折々、お店の雰囲気がガラッと変わる「Patisserie Ludique」。

小千谷を中心に和洋菓子の卸業を営んでいる「有限会社吉沢屋」。その3代目がはじめた「Patisserie Ludique(パティスリー ルディック)」は、開放感のある店内とシックな外観が目を引くお店です。今回は店主の吉澤さんに、前身となる洋菓子店「パティスリーヨシザワ」をオープンしてからのエピソードや看板商品であるマカロンの秘密など、いろいろとお話を聞いてきました。

 

Patisserie Ludique

吉澤 未来 Mirai Yoshizawa

1989年小千谷市生まれ。新潟市の専門学校を卒業後、横浜市のパティスリーで6年間経験を積む。26歳のとき新潟に戻り、実家の「有限会社吉沢屋」に入る。その翌年、工場の一部を改装し、生菓子を中心とした「パティスリーヨシザワ」をオープン。2023年3月「Patisserie Ludique」として移転リニューアル。

 

手探りでスタートした小千谷での洋菓子販売。試行錯誤の結果、売り上げが倍増。

——吉澤さんのご実家は、お菓子の卸業をやっていらしたんですね。

吉澤さん:実家は祖父が創業した「有限会社吉沢屋」です。「吉沢屋」では小千谷、川口、十日町あたりのスーパーや道の駅などに、どら焼きやバタークリームのロールケーキ、おまんじゅう、おこわ類を卸していました。だから僕は小さい頃から毎日お菓子づくりの様子を見て育ったんです。時代の恩恵もあったのか、祖父も両親も休みなく忙しそうでしたね。

 

——じゃあお菓子づくりを仕事に選んだのには、ご実家の影響が?

吉澤さん:家族を見ていて「毎日楽しそう」と思っていたし、僕は父の影響で、何かを作ることが好きでした。それで「お菓子屋を目指すしかない」と専門学校へ進学しました。学生時代は付き合いの幅が広がってアパレルにも興味を持つようになったので、パティシエになるかアパレル業界に進むかすごく悩みました。でも長い目で考えてずっと続けていけるのはお菓子屋さんかなと思って、横浜のパティスリーに就職しました。

 

 

——ゆくゆくは稼業を継ごうと思っていました?

吉澤さん:両親から「家を継いで欲しい」と言われたことはなかったですし、関東で自分の店を持つものだと思っていました。20代後半でフランスに修業に行こうとも考えていたんですけど、祖父が急逝して、実家の「吉沢屋」を手伝うことになって。経営的な問題を抱えていたし、父は自分の代で終わりにしてもいいと考えていたようですが、「僕が『吉沢屋』に入ってひと手間加えたら、現状を一瞬で変えられる」って絶対的な自信があったんです。

 

——「吉沢屋」さんではどんな試みをされたんですか?

吉澤さん:「吉沢屋」にはお菓子づくりの工場はありましたが、店舗はありませんでした。そこで工場の一部を改装して、8畳ほどのスペースで「パティスリーヨシザワ」をはじめました。最初は小千谷でどんなお菓子が定着するのか掴みたくて、お店のコンセプトをかなり探りました。ただ、1年目は地域に合わせたケーキを低価格で提供してみたものの、他のお店とあまり変わらずうまくいかずで。それで2年目に価格を上げてでも自分が好きなケーキを増やしていって、4年目以降に完全に振り切ってやりたいことだけをやったら急に売り上げが倍増したんです。「これでいいんだ」という手応えを感じました。

 

尊敬するシェフの味、マカロン。今ではお店のおすすめ商品に。

——その「パティスリーヨシザワ」さんは、今年の3月「Patisserie Ludique」さんとして移転リニューアルされました。

吉澤さん:この道を選んだからには、いつかは自分の店を出さないと意味がないと思っていました。「Ludique」はフランス語で「遊び心」という意味です。言葉の通り、僕が楽しく作っていられるお菓子をお客さまに届けたいと思っています。ケーキ屋の場合、お客さまが3ヶ月に1度でも来店してくれれば十分ありがたいです。次にお客さまが来てくださるときまでに商品をいくつも入れ替えておく。定番のお菓子でも「こっちの方がいいな」と思ったらどんどん変える、そんなお店を目指しています。

 

——いつ来ても新鮮な気持ちになれそうですね。

吉澤さん:季節感や最新の技術、流行りなどを小千谷でも反映したいと思っています。僕のお菓子で「こんなものが作れるんだ」「どうやっているんだろう」ってびっくりしてもらえたらいいなって。

 

——例えばどんな技術を取り入れているんでしょう?

吉澤さん:ケーキの形、色合い、仕上げ方を工夫することに力を注いでいます。例えばガトーショコラは、定番は三角形ですけどシリコンの型で丸く仕上げています。「こんな表現あるんだ」と感じて欲しいですし、見て楽しんでいただけるものを作らないといけないと思っています。お菓子屋さんって、美術館みたいに「きれいなもの」を見る場所でもあるんじゃないかな。

 

 

——人気のお菓子を教えてください。

吉澤さん:マカロンをおすすめしています。チョコレートベースのクリームにフレッシュなフルーツ果汁を合わせて、数日かけて完成させます。マカロンにあまりいい印象を持っていなかった方が「ここのマカロンを食べて好きになった」と言ってくださって、すごく嬉しかったです。それで種類も増やして、今では常時12種類ほどを用意しています。僕にとって、マカロンの評判がいいことがいちばん嬉しいことなんです。

 

——それは何か理由が?

吉澤さん:就職先でお世話になったシェフのマカロンに感動しまして。その人は「ピエール・エルメ」というマカロンの第一人者の下で働いていたシェフで、彼が作ったマカロンを食べたとき、ものすごい衝撃を受けたんです。あの衝撃がなかったら別の仕事をしていたかもしれないと思うくらい。実は僕、マカロンがあまり好きではなくて、学生時代に初めてマカロンを食べたときは「口溶けが同じだし、単調な味わい」と思っていました。研修旅行先のフランスでは「こんなに美味しいの?!」ってびっくりするマカロンに出会ったんですけど、帰国してから新潟では印象に残るマカロンには出会えずにいました。それが就職して関東に行ったら、絶品のマカロンがあるわあるわって感じだったんですよね。そのひとつが尊敬しているシェフの味だったんです。

 

——吉澤さんにとって忘れられない味がお店の看板商品だなんて、ドラマチックですね。

吉澤さん:今では、僕に衝撃を与えてくれたシェフよりもマカロンを売っています。「いいところだけ盗んでうまいことやったな」って嫉妬されました(笑)

 

——どんなところにひと工夫されているか教えてもらえますか?

吉澤さん:サンドしているチョコレートクリームの量が違って、果汁そのものの味がしっかりするように仕上げています。味が濃くてリッチな感じがするマカロンですよ。食感にもこだわっていて、チョコレートの水分が生地に移って、しっとり食べ頃になるタイミングを計算してご提供しています。クリームと生地の一体感にびっくりしていただくことが多いです。

 

夏はジェラート、冬はチョコレート。季節感あふれる店内。

——お店はリニューアルオープンされたばかりですが、これからどんな展開を考えていますか?

吉澤さん:夏に向かってケーキの種類は少なくして、その代わりにジェラートを充実させようと動き出しています。小千谷にはジェラートのお店がないですし、せっかくなのでこの地域のスイカ、メロン、そばなどの素材を使ってこだわり抜いたものを作るつもりです。

 

——これからの季節にぴったりですね。

吉澤さん:春は彩り、夏はジェラート、秋はフルーツの実り、冬はチョコレート。そんなふうにメリハリのあるお店にしたいと思っています。季節ごとにガラッとお店の雰囲気を変えて、春夏秋冬を楽しむ。お客さまも退屈されないと思いますし、自分も飽きずにいられると思うので。

 

 

 

Patisserie Ludique

小千谷市薭生乙1380-15

TEL 0258-89-7090

open 10:00〜18:00

close 水曜 (その他不定休あり)

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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