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30年以上愛され続ける「万平菓子舗」のティラミス大福。

バブル景気に大流行したもののひとつ、「ティラミス」。エスプレッソのビターな風味が楽しめる、北イタリア生まれのスイーツです。そんな「ティラミス」と日本を代表するお菓子「大福」を掛け合わせたのが、今回紹介する「万平菓子舗」さんの「ティラミス大福」。誕生より30年以上親しまれてきたロングセラー商品です。店主の佐藤さんからお話を聞いてきました。

 

 

万平菓子舗

佐藤 博人 Hiroto Sato

1964年新潟市江南区生まれ。8代目店主。新潟大学理学部卒業後は老舗菓子店「香月堂」で修業し、1990年より家業の「万平菓子舗」に就業する。邦画、洋画問わず映画を見ることが好きで、好きな作品は「ターミネーター2」。

 

引出物の式菓子を作っていた亀田の老舗菓子舗。

——「万平菓子舗」の創業はいつなんですか?

佐藤さん:それが、はっきりわからないんですよ。わかっているのは、祖父の代にはお菓子屋さんをやっていたことだけです。ただ二代目の万平という人物が商いで財を成して蔵を建てたので、屋号が「万平」になったんだそうです。

 

——看板には「和・洋式菓子」と書かれていますけど、どんなお菓子を作っているんでしょうか。

佐藤さん:お祝いや法事の席につく引出物の式菓子を作っていたんです。折箱入りの式菓子がお料理と同料金だった時代には、菓子職人は人気の花形職業だったそうなんですよ。でも式菓子の需要はどんどん減っていきました。

 

——時代の流れなんでしょうかね……。8代目にあたる佐藤さんは、昔からお店を継ぐつもりだったんですか?

佐藤さん:私は学校の先生になって子どもたちに数学を教えたかったので、新潟大学の理学部で数学の勉強をしたんです。でもお菓子屋をやりながら、副業として数学を教える手もあるなと思いまして……。実際はお菓子屋が忙しくて、そんな余裕はなかったけどね(笑)

 

 

——それじゃあ、大学卒業後はすぐ「万平菓子舗」で働かれたんですね。

佐藤さん:その前に、父も修業した「香月堂」というお菓子屋さんで3年間働きました。まずは簡単な仕事をやらせてもらいながら、人の仕事を横目で見て覚えていきました。辞める頃には仕事もできるようになっていたので軽く引き止められましたけど、家業を継がなければならなかったので勘弁してもらいました(笑)

 

——その後は「万平菓子舗」で、お父さんと一緒に働きはじめたわけですね。

佐藤さん:そうですね。でも自分が修業先で覚えたやり方と、「万平菓子舗」で長い間伝わってきたやり方の違いに葛藤がありました。喧嘩じゃないんだけど、父と衝突したこともありましたね。

 

「ティラミス大福」誕生と、ヒットまでの道のり。

——「万平菓子舗」を代表するお菓子といえば「ティラミス大福」ですよね。どのように生まれたのか、いきさつを教えてください。

佐藤さん:1989年に東京でティラミスブームが起こって、修業先の「香月堂」でもティラミスを作って売り出したんです。私も製造のお手伝いをしていたんですけど、これがまったく売れなかったんですよね。早く販売しすぎて、まだ新潟までブームの波が来ていなかったからだと思うんだけど、製造チーフががっかりしていました(笑)。私が卒業する頃になってようやく新潟にもティラミスブームが訪れて、大人気商品になったんです。

 

——佐藤さんは「香月堂」時代にティラミス作りを経験していたんですね。それを応用して「ティラミス大福」が生まれたんですか?

佐藤さん:当時はクリスマス前がヒマになる時期だったので、1990年のクリスマス前に遊びで作ったのが「ティラミス大福」だったんです。

 

——遊びで作ったものが大ヒットにつながったわけですね(笑)

佐藤さん:ところが黒い大福が気持ち悪かったせいか、最初は全然売れなかったんです(笑)。30個作っても全部売れ残ってしまう日が続いて、残りそうになったら常連のお客様にお配りしていました。ところが1〜2ヵ月くらい経った頃に「ティラミス大福」を配った常連様から、リクエストの声を聞くようになったんです。

 

 

——「ティラミス大福」の美味しさに気づいたわけですね。

佐藤さん:配ったことが無駄にならなかったんですよね。毎年2月に開催しているセールでは、「ティラミス大福」と「ティラミスケーキ」を販売したんです。正統派の「ティラミスケーキ」が売れると思っていたんだけど、予想に反して「ティラミス大福」の方が売れたんですよね(笑)

 

——本家のティラミスに勝ったってことですよね(笑)。それはすごい。

佐藤さん:ティラミスと大福っていう、話題性があったせいかもしれないですね。おかげで全国ネットの人気番組「ズームイン朝!」で紹介してもらって、すごい反響があったんですよ。でも夏になったら保存が難しいし、販売をやめようと思っていました。

 

——どうしてやめずに続けることになったんでしょう?

佐藤さん:お客様から「冷凍して食べると美味しい」って教えていただいて、試してみたら本当に美味しかったんですよ。それで夏は冷凍して販売してみたら、これも売れたんですよね。その後もクール宅急便がはじまったおかげで県外発送できるようになったり、繰り返しメディアで取り上げられたりしたおかげで、30年以上も続けてくることができました。時代の波に乗りながら続けてこられた商品だという気がしています。

 

手みやげが証明する、お菓子の絶大な威力。

——お菓子を作るときって、どんなことを気をつけるようにしていますか?

佐藤さん:急いで作ると雑になってしまうから、きっとどこか失敗してしまうんですよ。だから、どんなに忙しいときでも焦らず丁寧に作るよう心掛けています。あと日持ちさせるための添加物なんかは、一切使わないようにしていますね。ブームに乗らずこつこつと、長く作り続けていきたいと思っています。

 

 

——実直にお菓子と向き合われていることがよくわかりますね。ところで「ティラミス大福」はどんな方が買っていくんでしょうか。

佐藤さん:手みやげで買っていかれる方が多いですね。仕事でやらかしてしまったとき、お詫びに持っていったら相手のご機嫌が直ったとか、お得意先の会社に差し入れしたら事務の女性に喜ばれたとか……。お菓子の威力って絶大だなと思います(笑)

 

——これからはどんなふうに「万平菓子舗」の暖簾を守っていきたいですか?

佐藤さん:地域から人が消えると、お店にもお客様が来てくれなくなってしまいますので、町おこしに協力させていただきたいと思っています。新しいお店がどんどん集まってきてくれたり、将来を担う子どもたちが育ってくれたりしたら嬉しいですね。そのためにも、できることはやっていきたいです。

 

 

 

万平菓子舗

新潟市江南区亀田本町4-1-48

025-381-2267

8:00-18:00

不定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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