夕飯に季節の味が楽しめる1品を追加したい。バランスの良いお弁当で身体と心を満足させたい。そんなとき頼りになる、お惣菜のテイクアウトとイートインのお店「hana-na 日々ごはん 時々おやつ」。その時期に美味しい素材を使った、ちょっと変わり種のお惣菜が揃っています。小さい頃から食べることが大好きだったというオーナーの安部さんに、お店をはじめるまでのエピソードやお料理が上手くなるコツなどいろいろとお話を聞いてきました。
hana-na
安部 由美子 Yumiko Abe
1966年長岡市生まれ。東京の大学を卒業後、食品メーカーに就職。数年勤務した後、料理家のアシスタントとして経験を積む。20代後半で長岡市に戻り、30代後半から新潟市で焼酎ダイニングをはじめる。2013年に「hana-na 日々ごはん 時々おやつ」をオープン。
——安部さんは、長らくお料理の仕事をされていたそうですね。
安部さん:小さい頃から「食」にものすごく興味があったんですよ。「焼き魚の目玉を欲しがるような子どもでまわりの大人たちがびっくりした」っていうエピソード、今でもよくされるんです(笑)。幼稚園のときには、誰に教わったわけでもないのに創作料理を作っていました。とにかく頭の中が「食べる・食べる・食べる」でいっぱいだったんですね。大学卒業後は、食に関わる仕事をしようと食品関係の会社に勤めました。
——最初の職場ではどんなお仕事をされていたんですか?
安部さん:食品の開発に携わりたかったんですけど、希望の部署には配属されなくて。お勤めは2、3年でやめて、それからは料理家の先生のアシスタントをしていました。テレビや雑誌で人気の料理研究家さんや和食の先生について勉強させてもらったんです。
——料理家さんのアシスタントだなんて、華々しい感じがします。
安部さん:体力的にはけっこう厳しい現場でしたよ。丸2日間寝られないし、座れないCM撮影のお仕事もありましたね。それでも20代は、和食、洋食、家庭料理、それぞれの分野に特化した先生方の側でたくさんのことを学びました。
——特に印象に残っている先生はいらっしゃいますか?
安部さん:和食の先生のもとで働いていた頃、「私は何も分かっていなかったんだ……」と考えさせられるくらい料理の奥深さを痛感しました。小さい頃から食べることも作ることも大好きだったので、「自分は食への関心も知識も十分にある」「料理の基本はできている」と思っていました。でもお料理は、思っていたよりもずっとずっと奥深かったんですね。それを知って、更にググッと引き込まれたように思います。
——しばらく東京で働かれていたそうですが、地元に戻ってこられたのは?
安部さん:長岡に来たのは20代後半でしたかね。そこでも経験を生かした職に就きたいと思いましたけど、なかなか働き口がなくて。それで新潟市の会社に勤めたんです。お勤めしながら自宅で料理教室を開いていたので、ずっと料理からは離れずにいました。
——それからいよいよご自身のお店を持つんですね。
安部さん:今でも一緒に働いてくれている友人と出会って、30代後半で焼酎ダイニングをはじめました。彼女とは食の趣味がすごく合うんですよ。それで「いっそのこと、お店やっちゃう」って流れになりまして(笑)。本格焼酎とそれに合わせた料理を出すお店で、その頃は何度も九州まで勉強に行きました。からし蓮根も手作りしていたんですよ。
——焼酎ダイニングだなんて、今の「hana-na」さんとはちょっと業態が違いますね。
安部さん:親の介護をするために、昼間営業するお店にシフトしたいと思ったんです。それで、当時関心のあったデリカッセンのテイクアウトができる「hana-na」を2013年にはじめました。
——「hana-na」さんは、デリのテイクアウトの他にイートインもできるんですよね。
安部さん:今はそういうかたちにしています。少し前までカフェ営業もしていたんですけど、それだと料理を作る時間がなかなか確保できなくて。「これじゃテイクアウトのお店じゃないよな」って、思いきってカフェはやめました。それでようやくショーケースの中が充実してきました。
——どういうメニューを揃えているんですか?
安部さん:ときどき「普通のお惣菜屋さんじゃないって聞いて来ました」とお客さまに言っていただくんですけど、その言葉の通り、コロッケとか唐揚げとかは置いていないんです。旬の素材を使っていて、なおかつ味と栄養のバランスが整っているもの。「今の季節には、この野菜を使ったこれだよね」って喜んでもらえるお惣菜を作っています。
——じゃあ、お弁当もバランス抜群なんですね。
安部さん:「バランス弁当」には、「まごわやさしい」をできるだけ採り入れています。おかずにホカホカの15穀米を詰めてお持ち帰りいただくんです。
——温かいご飯のお弁当とは嬉しいですね。営業時間以外は仕込みをされているんですか?
安部さん:そうですね。あとは仕入れもけっこう大変なので時間をかけているかな。この夏は猛暑の影響で、イメージ通りの野菜がすごく少なくて。あちこち探しに行ったので苦労しました。もう9月なのにまったく秋らしくないですもんね。今はちょうど季節のはざまで困っています。獲れるお魚も変わってきていますしね。サンマなんか鉛筆みたいに細いし、イカも手に入りにくくて悲しくなっちゃう。
——確かに食べるものに変化を感じますよね。
安部さん:世界各国の調味料や食材が手軽に買えるようになったというのは良い変化ですよね。私は和食も中華料理も基本は同じだと思っているんです。調味料などの違いはあっても、味の加減や作り方は世界共通なんじゃないかしら。だからいろいろなメニューを作るんですよ。これまで何千個というレシピを考えてきましたよ。
——わたしはレシピサイトの通りにお料理するのが精一杯で……。何か上達するヒントを教えてください。
安部さん:レシピ通りに作ったからといって、美味しくなるわけじゃないんですよね。美味しいお料理には経験が必要ですね。
——そ、そんなぁ(涙)
安部さん:例えば「○○分茹でる」と書いてあっても、使う鍋の大きさや火加減によって茹でる時間は変えなくちゃいけませんよね。お味噌汁を作るとき、何グラムのお味噌を入れるかって計らないでしょう。オムライスを初めて食べる人はケチャップをどれだけかけたらいいか分からないでしょうけど、食べたことがある人は「これくらいケチャップをかけたいな」って、なんとなく好みがあるじゃないですか。それが「お料理」なんですよ。
——次はこうしようってどんどん試してみるってことですか?
安部さん:そうそう、そんな感じです。煮魚を作って「もうちょっと甘くしたいな」と思ったら、次は甘めに調節すればいいんです。「このレシピはダメだったから、他のレシピで作ってみる」じゃなくて、同じレシピをベースにちょっとずつ工夫してみるといいですよ。
——すごく参考になりました。でも安部さん、いくら料理が好きでも、ひたすら調理するって大変では?
安部さん:朝起きて「今日は何食べようかな」ってところからはじまって、日中はずっと料理をする。それが私の幸せなんですよ(笑)。お母さんの作ったご飯が飽きないのって「ブレがあるから」だと思うんです。だからうちのお惣菜はレシピがないものが多いんですよ。「涼しくなってきたな」「湿度が高くてダルいな」っていう自分の感覚を大事にして、それを踏まえて「今日はこんな感じに仕上げよう」ってちょっとずつアレンジするんです。それでお客さまから「そろそろこんなのが食べたかったんだよね」って言われると嬉しくって。
——まだまだ新しいレシピを考えたいって思いますか?
安部さん:もっともっと「この食材にはこんな食べ方があったんだ」ってびっくりするような新しいレシピを考えたいですね。皆さんに喜んでもらっている「鯖と木の子の梅しそ巻き焼き」(舞茸と大葉、梅、エリンギを塩サバで巻いたお惣菜)は、「hana-na」らしいオリジナリティがあるメニューですよ。
——これからもたくさんの方の胃袋を掴むメニューを期待しています。
安部さん:ありがとうございます。オープン当初「看板メニューになるもの」と思って考えた、8種類の野菜がたっぷり入った「いろいろ野菜のミートローフ」は、今では定番の人気商品です。そんなふうに「『hana-na』のアレ、食べたいよね」と思ってもらえるメニューをもっと増やしていきたいです。期待していてくださいね。
hana-na 日々ごはん 時々おやつ
新潟市中央区上所上1-16-1
tel/025-280-0339