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車屋さんがはじめた「COFFEE GARAGE CONTEMPORARY」。

「COFFEE GARAGE CONTEMPORARY(コーヒーガレージコンテンポラリー)」、略して「CGCO」。燕市旧分水町のカーショップ「LICENSE(ライセンス)」の店内で、キッチンカーを使って営業しているコーヒーショップです。今年8月にリニューアルしたという店内は、車屋さんというよりもインテリアショップのよう。こちらでは自家焙煎されたこだわりのコーヒーを楽しめるだけでなく、キッチンスペースでお客さん自らハンドドリップを体験することもできます。「LICENSE/有限会社カーショップ小柳」代表取締役の小柳さんと、「CGCO」を任されているバリスタの齊藤さんにお話を聞いてきました。

 

 

LICENSE

小柳 一 Hajime Oyanagi

1977年燕市生まれ。父親がはじめた「有限会社カーショップ小柳」を引き継ぎ、2代目として代表取締役を務める。2022年にコーヒ部門を設立し、カーショップ「LICENSE」内で「COFFEE GARAGE CONTEMPORARY」をオープン。今年8月に内装をリニューアル。

 

COFFEE GARAGE CONTEMPORARY

齊藤 桐麻 Toma Saito

1996年弥彦村生まれ。「株式会社鈴木コーヒー」に入社。本社で営業職を経験。その後、「有限会社 カーショップ小柳」へ入社し、2022年よりコーヒショップ「COFFEE GARAGE CONTEMPORARY」のバリスタを務める。

 

町の車屋さんが、本格的なコーヒーショップをはじめた理由。

――まるでインテリアショップのような店内ですね。どうして車屋さんをこんなおしゃれに改装することになったんでしょう?

小柳さん:私は2代目で、家業が車屋さんだったものですから、用意されていたレールに沿ってお店を継ぎました。でもそれとは別に、自分のやってみたいことが心の中にあったんです。インテリアや植物が好きだったので、車屋さんにそういったエッセンスを取り入れて、将来お店を改装できたらいいなと考えていました。今から10年くらい前でしょうか。

 

 

――長年あたためていた計画が動き出したのは、何かきっかけがあったんですか?

小柳さん:バリスタの齊藤くんがきっかけでした。彼はもともとうちのお客さんだったんですよ。

 

――へ〜、お客さんとしてお店に来られていたんですね。

齊藤さん:学生の頃、すぐそこの交差点で乗っていた車をぶつけられて(笑)。いちばん近い車屋さんを探して、レッカーしてもらったのがここだったんです。それから就職して働きはじめるまで、ずっとお世話になっていました。

 

小柳さん:彼はコーヒー好きで、当時からコーヒーに関わる仕事をしていたんです。あるとき、彼が転職を考えていることを知って「あたためていた計画に齊藤くんを入れたら、こんな絵が描けるな」と思いました。そこから一気に加速して、コーヒー屋さんをかたちにしていったんです。大きな転換期でした。

 

 

――車屋さんの中でコーヒーショップをはじめて、どんな場所を作ろうと描いていたんですか?

小柳さん:コーヒーがあれば、いろんな人と結びつきができるんじゃないかと思いました。車屋さんって必要なときにしか足を運んでいただけないので、そこにコーヒーの看板があれば「ちょっとお茶して行こうか」って気軽に入ったり、オイル交換や洗車の待ち時間に美味しいコーヒーを飲んだりしていただけるんじゃないかなと。

 

――それはお店に来るのが楽しみになりそうですね。

小柳さん:それに車の整備って値段がかかるし、車を買うとなると、いきなりうちに来てうちを選んでもらうのって難しいと思うんです。そこでコーヒーの力を使って関係性を築いて、そこから弊社の雰囲気やサービスを知っていただけたらいいなと考えました。

 

 

――齊藤さんは小柳さんから「コーヒー屋さんをはじめないか」と声をかけられたとき、どう思いましたか?

齊藤さん:最初は冗談だと思いました(笑)。「車屋さんの中でカフェをやろうと思っているから、退職したらうちに来てよ」って。でも車を預けに来るたびに言われるので「本気かも」と思って。僕も「いつかは自分でお店をやりたい」と思っていたんですけど、コーヒーの知識とかメニューを考えることには自信があっても、経営のこととか店のしつらえのことは考えてこなかったので、足りないところを社長が補ってくれました。僕はコーヒーオタクなので、自分のやりたいことをお店で表現させてもらっています。

 

――どんなコーヒーを揃えた、どんなお店にしようと考えていたんでしょう?

齊藤さん:この燕市分水周辺には焙煎所があまりないので、町の人が買いに来られる「自家焙煎のコーヒー豆屋さん」であることがまず大事だなと、オープン時から考えていました。だからお手頃価格で買えて、あまりこだわらずにコーヒーメーカーに入れてがぶがぶ飲んでも大丈夫な、デイリーに扱えるロットから、市外県外のコーヒーオタクたちも注目するような、スペシャルなロットまで揃えています。

 

美味しいコーヒーと、美味しいコーヒーの「淹れ方」も提供する。

――気になっていたんですけど、キッチンスペースのような場所がありますよね。「DIYコーナー」と書いてあるようですが……。

齊藤さん:お客様自身でコーヒーを淹れる体験をしてもらえるスペースなんです。ここで販売している道具や、僕がキッチンで使っている道具を実際に使うことができます。僕がフリーであれば、ドリップレシピや道具の使い方もレクチャーしますよ。コーヒーセミナーっていろんなところでやっていると思うんですけど、このお店は僕がいる時間であればいつでも気軽にハンドドリップを体験できるんです。

 

――セミナーに行くほどじゃないけどハンドドリップに興味があるっていう人、多いと思います。どうして「DIYコーナー」を設置することになったんですか?

小柳さん:コーヒーを飲む生活を根付かせるためには、気軽にコーヒーの体験ができる場所が必要だと思いました。それに経営者の私からすると、美味しいコーヒーを提供するだけでは競争力を担保することが難しくなってきているのを感じていて。もちろん美味しいコーヒーは提供するんですけど、美味しいコーヒーの淹れ方も提供していこうと考えました。

 

 

――自分でコーヒーを淹れて楽しむ人が増えたらいいな、という思いがあるんですね。

小柳さん:ある程度のクオリティの豆と道具があれば、そこそこ美味しいコーヒーが淹れられるんですよね。ケーキを作って振る舞うことは難しいけど、コーヒーなら誰でも気軽に淹れて振る舞えるんです。人に振る舞うことで、自分や他人に働きかける能動的な気持ちを作り出すことができると思っています。

 

齊藤さん:「DIYコーナー」で社長自らお客様にコーヒーを淹れて、カウンターごしに商談をしていることもあるんです。このコーナーの価値をいちばん体感しているのは社長なんじゃないかなって思っています。

 

――お客さんも、目の前で社長さんがコーヒーを淹れてくれたら嬉しいでしょうね。実際に「DIYコーナー」を利用した方で、印象に残っているお客さんはいますか?

小柳さん:分水小学校の2年生の児童たちが、校外学習でお店に来てくれたんです。そしたら来てくれた子のうちのひとりが、その週末にお母さんを連れてまた来てくれて。その子はコーヒーが飲めないんですけど、おばあちゃんが毎日コーヒーを飲んでいるから、おばあちゃんにコーヒーを淹れてあげたいんだって「DIYコーナー」でハンドドリップ体験して、コーヒー豆を買って帰ってくれました。

 

齊藤さん:ここ数年でいちばん嬉しいできごとでしたね。ミルを抱きかかえるように回していて……。考えれば考えるほど、あの少年はこのコーナーのコンセプトの体現者なんじゃないかって思います。好奇心で来てくれて、おばあちゃんにコーヒーを飲ませたいっていうホスピタリティの気持ちで動いてくれて、すごく嬉しかったです。

 

現代的なコーヒーショップのかたちを示していく。

――店名に「現代的」という意味の「CONTEMPORARY」という言葉を使ったのはどうしてなんですか?

小柳さん:コーヒーだけじゃなくて淹れ方も提供するという、新しい提案をしている「現代的なコーヒーショップ」の意味でつけました。齊藤くんに入社してもらった決定打があって、彼は前職でコーヒーセミナーの講師も務めていたんです。彼がいればコーヒーの魅力や淹れ方も提供できる。それこそが現代的なコーヒー屋さんのかたちなんじゃないかって。

 

――齊藤さんの人柄もあって、「COFFEE GARAGE CONTEMPORARY」が成り立っているわけですね。

小柳さん:いい焙煎機はお金があれば買えるけど、「人」っていうところはお金では買えませんからね。

 

齊藤さん:コーヒー屋さんは特にそうですよね。美味しいコーヒーが出てくるのは当たり前で、バリスタの人柄でお店が選ばれる時代になってきている気がしています。「あの人と話したいからあの店に行こう」って思ってもらえたり、話が面白くて長居しちゃったり、そういうお店にしていきたいですね。

 

 

 

COFFEE GARAGE CONTEMPORARY

燕市笈ヶ島1281-4

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