柏崎市にある、女性向けのシェアハウス「kito(キト)」。柏崎でまちづくりに関する事業を展開している「特定非営利法人aisa(アイサ)」が、昨年9月に立ち上げました。空き家をリノベーションした一軒家で、最大4人まで入居することができます。今回は、この事業のリーダーである中島さんと、コーディネーターの宮さん、会田さん、滝澤さんの4人に、柏崎でシェアハウスを立ち上げたきっかけを聞いてきました。
特定非営利法人aisa
中島 遼 Ryo Nakajima
柏崎市生まれ。約3年前に「特定非営利法人aisa」に入社。まちづくりコーディネーターとして空間デザインなどの事業に携わる。並行して長岡市のデザイン事務所「はくちょう計画」でデザイナーとして活動。昨年9月、3名の女性メンバーと共にシェアハウス事業をスタート。
特定非営利法人aisa
宮 沙織 Saori Miya
小千谷市生まれ。「特定非営利法人aisa」の副理事長兼「かしわざき市民活動センター まちから」センター長を務める。大学進学をきっかけに柏崎市へ。復興支援に携わる中で、地元の人たちの生き方に魅力を感じ、現職に至る。柏崎で自分らしく生きる人を増やすための事業に取り組む。
特定非営利法人aisa
会田 理恵子 Rieko Aida
埼玉県所沢市生まれ。「特定非営利法人aisa」で防災コーディネーターを務め、防災教育に携わる傍ら、個人事業「RあんどH」で対話やコミュニケーションの場づくりの活動を行う。
特定非営利法人aisa
滝澤 葉月 Hazuki Takizawa
上越市生まれ。「特定非営利法人aisa」でまちづくりコーディネーター、デザイナーを務める。
――こちらはどんなシェアハウスなんでしょうか。
中島さん:柏崎市にある女性向けのシェアハウスで、最大4名の方が入居できます。このシェアハウスを通じて他者と関わって、日常の楽しさを発見して欲しいと思っています。「きっと見つかる、きっと繋がる」というコンセプトから「kito(キト)」と名付けました。今は入居者を募集しているところです。
――みなさんは「特定非営利法人aisa」のメンバーだそうですね。どういう経緯でこのシェアハウス事業を立ち上げることになったんでしょう?
会田さん:3年くらい前、法人の中期計画を考えていたときに話が出たんですよね。そのときに私が「シェアハウスを作りたい」っていうプレゼンをしたんです。
――どんなことを目的に、シェアハウスをやろうと考えたんですか?
会田さん:「aisa」に、大卒で県外から来た女の子がいたんです。慣れない地域で初めてひとり暮らしをするっていうので、車検のこととか家の電気のこととか、何が必要かも分からない中で、もう生活にいっぱいいっぱいの状態。なおかつ仕事で新しくいろんなことを覚えなきゃいけない。それですごく疲弊している姿を見たんです。
――仕事も生活もゆとりがなくなってしまっていたんですね。
会田さん:せっかく社会に出てきたのに、疲れちゃって何も楽しめないだろうなって。それを解消できるような、帰ってきたら何も考えずに「ただいま」って言って、美味しいご飯を食べてのんびりできる場所があるといいよなって思いました。
――他のみなさんはどういう思いでシェアハウスに関わることにされたんでしょうか。
中島さん:私は中期計画が作られている途中で「aisa」に入社したんです。もともとは建築のデザインの仕事をしていて設計事務所勤めだったのですが、こういうまちづくりの会社に入ったので、自分が得意とする分野を「aisa」の事業として立ち上げられないかなと思っていました。
――以前から考えていたことが「シェアハウス」というかたちに結びついたんですね。滝澤さんと宮さんはいかがですか?
滝澤さん:会田さんのプレゼンを聞いたとき、「いいな」と思いました。私は実家がもともと魚屋さんをやっていて、そこの一角が地域のお茶飲み場になっていたんです。その雰囲気がすごく好きだったので、シェアハウスみたいに、帰れば誰かがいる空間があるといいよなと思って担当になりました。
宮さん:「aisa」で活動していて、20代の子たちから相談を受けることがあるんですよね。まちづくりに関することだけじゃなくて、生活のこととか仕事のこととか。そういう話を聞く中で、「aisa」として「住まい」へのアプローチも持っていたら、その子たちの柏崎での生活がもっと豊かになるんじゃないかなって思っていました。だから「シェアハウス」と聞いたときには、私が今まで相談を受けてきた中で、力になれることがあるかもしれないなと感じました。
――広くて綺麗で、外には畑もあって、住みやすそうなお家ですよね。
中島さん:もともとは別の場所ではじめることを考えていて、何軒も見に回ったんです。
――そんな中こちらではじめることにされたのには、何か決め手が?
中島さん:建物的には広くて部屋数があって、綺麗だったというのもあります。それと、この家の隣に住んでいる方がここの大家さんなんです。そちらの息子さんから「地元柏崎に貢献したいから、空き家を活用してもらいたい」というお話をいただいたことと、「シェアハウスをしたい」という私たちの目的が合致したというのも、ここに決めた理由のひとつです。
宮さん:あとは駐車場ですね。ここは5台まで駐められるんです。車を使う生活が当たり前なので、そこも含めて条件ばっちりの物件でした。
――昨年9月に「kito」を立ち上げてからは、どのように活動してこられたんでしょう?
中島さん:イベントやワークショップ、ごはん会を定期的に開催してきました。あとは「kito開き」といって、ご連絡いただいた方を「kito」にお連れして説明する機会も作りました。
宮さん:印象的だったのが、9月のオープン前に「ここに住むことはできないけど応援したい」っていう人が出てきてくれて、その方たちが掃除を手伝ってくれたんです。掃除が終わった後は一緒にごはんを食べて。このシェアハウスを作っていく仲間みたいに感じられて、そういう関係性っていいなと思いました。
――入居後も、女性メンバーのみなさんが生活をサポートしてくれると聞きましたが……。
宮さん:はい、定期的に訪問して、共有部分は清掃もします。たまに夕飯会とかしながら、ここに住んでくれる方と楽しい時間を過ごせたらいいですね。
会田さん:あとは調味料とかお米が減っていないかなってチェックもしますよ。
――えっ、調味料やお米まで補充してくれるんですか?
中島さん:お米や調味料、共有部の消耗品、あとは水道光熱費、駐車場利用料金などは共益費に含まれていますし、その他にも生活に最低限必要な日用品や共用の家具は、入居時から用意しています。
――引っ越しにかかる初期費用もかなり抑えられますね。入居を検討する方は、大学進学や就職で柏崎に来る方が多いですか?
宮さん:あとは転職で来られる方とかですね。ここに長く住んでもらうっていうよりは、ちょっと住んでみて柏崎のことをもっと知ったり、自分の好きなエリアを見つけてもらったりして、次の新しい住まいを見つけてもらうような、そういう使い方をイメージしています。
会田さん:そのために、普通は2年契約とかのアパートが多いですけど、ここは1ヶ月から住んでいただけるんです。「通勤が大変な冬場だけでも住みたい」っていう方もいらっしゃいますね。
――最後にみなさんそれぞれが思う、柏崎の魅力を教えてください。
宮さん:柏崎だけじゃないとは思うんですけど、個人で経営されているお店が多くて。「行きたいな」って思う、居心地のいい人とか居心地のいい場所がいくつかあるんです。そういう場所があるとリフレッシュにもなるし、私にとってはすごく安心につながっています。
滝澤さん:柏崎の町場に住んでいると買い物は便利ですし、町場を離れるといいカフェがあったり、いい公園があったりして、日常からちょっと離れたおでかけを、ちょうどいい距離感で楽しめるんです。日常を暮らすのと、休日を楽しむバランス感がいいなと思います。
会田さん:私は埼玉の出身なんです。向こうではちょっと電車に乗ればデパートに行けたので、柏崎に来たときは「デパートはどこにあるの」って思いましたね(笑)。でも今はたまに帰るとごみごみした感じがすごく苦手になっている自分がいて。こっちは人の間隔がちょうどいいんだなって感じます。あと、おじいちゃんおばあちゃんたちが風習を大事にしているんですよね。もう廃れてしまった催し物とかが復活したら、またつながりが生まれるんだろうなって思うし、柏崎はそれを実現できる場所だと思います。
中島さん:私は柏崎が出身なんですよね。高校生まではいたんですけど、とにかく都会に出たくて東京に行ったんです。仕事で新潟には戻ってきたんですけども、また柏崎に関わるようになったのは「aisa」に入ってからで。高校生のときは町にどんな人がいるとかよく分からないし、遊ぶ場所といったらカラオケかボウリング場で。でも今は柏崎にも面白いことや特殊なことをしている人がいると分かったんです。その人たちとの距離感がいいから、自分のことを振り返って、その上で何か一歩を踏み出しやすい町の状態だと思います。
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