生まれ育った旧下田村の魅力を伝える「株式会社下田村」と“村長”さん。

あえて田舎に住み、田舎で活動する青年の夢は村長。

Googleの検索窓に「下田村」と打ち込むと、検索結果として並ぶのはWikipediaをはじめとした、歴史や人口などのデータばかり。1955年に下田村として成立し、2005年には隣接する三条市との合併により消滅、云々。旧下田村(以下、下田村)にはたくさんの自然や見どころがあるのに、観光や遊びに有益な情報はなかなか容易には手に入りません。「いい場所なのに、情報がない」そんな現状を危惧して立ち上がったのが、今回ご紹介する「株式会社下田村」の代表、今井さん。ゲストハウスやレストランを皮切りに、さまざまな事業を下田村で展開しています。なぜ彼は“下田村”にこだわるのか。地域の魅力と活動内容を聞いてきました。

 

株式会社下田村

今井将智 Masatomo Imai

1992年三条市(旧下田村)生まれ。ネジ屋の営業として6年間勤務し、2018年に「株式会社下田村」を設立。自身が育った環境を豊かにするべく、走り続けるフレッシュ社長。でも、通称・村長。

 

「株式会社下田村」を知る。どんな会社?

――本日は、よろしくお願いします。すごく直接的な会社名ですね。下田村にあるのは、名前から分かりますが、どのような会社なのですか?

今井さん:「株式会社下田村」は2018年に設立した会社です。「下田村に生まれた子どもが、100歳まで豊かに生活できる環境づくり」をコンセプトに、下田村の素晴らしさを伝え、より良い環境にしていく活動をしています。

 

――設立したのは最近なんですね。今井さんは、もちろん下田村出身ですよね?

今井さん:生まれも育ちもこの場所です。仕事の関係で拠点が違う時期はありましたが、ずっと住み続けています。自然が豊かでめちゃくちゃいい場所ですよ。

 

 

――どういった経緯で会社を設立されたのですか?

今井さん:地元の若者は新潟市内で働いたり、県外や海外に行ったりと下田村からどんどん外に出て行っています。自分も仕事で一時期は出てしまいましたし。でも戻ってみると、この場所の素晴らしさがとても身に染みて、「どうして外に出る必要があるんだろうか?」って考えたんです。下田村にいる理由、そして外からこの村に来てくれる理由を作れたら、自分が大好きなこの場所がもっと豊かになると思い、会社を設立することにしました。ただ、法人の登記って意外とお金がかかるんですよね…。

 

――法人登記って、確か25万円くらいかかりますよね?

今井さん:そうなんですよ。高っ!って思いましたよ(笑)。それで資金調達のためにクラウドファンディングをしたんです。目標金額25万円だったんですが、たった1日で集まり、さらには5日間で総勢90人の出資者から100万円も集まったんです。ビックリですよね!

 

――凄いですね!その資金を元に、どのようなことを?

今井さん:法人登記と、ゲストハウス「村長の家」、レストラン「星空レストラン」を開業しました。この2つの事業が現在の「株式会社下田村」の基軸となっています。

 

引き継いだ夢。村のことは何でも知っている。

――ゲストハウスの名前は「村長の家」なんですね。“村長”というのは、今井さんのことですか?

今井さん:そうです、僕が村長です(笑)。村長になるのが夢だったんですが、2005年に村が三条市と合併してしまい、村長になることができなくなってしまって…。で、ここでオーナーとか社長とかではなく“村長”として活動しているんです。

 

――そういうことなんですね。どうして村長になりたかったんですか?

今井さん:僕の父は日本の技術をインドネシアで教える仕事をしていて、母は看護師と、両親があまり家にいない生活だったので、僕はじいちゃんに育てられるような環境でした。じいちゃんはお酒を飲むのが好きで、酔っぱらうと「お前らを幸せにするために、俺は村長になるぞ」と、話のネタによく言っていました。その夢がいつの間にか自分の夢になっていたんですよね。

 

――夢を引き継いだんですね。正直、Googleで調べても情報はあまり出てきませんが、下田村の魅力ってどんな所ですか?

今井さん:星がたくさん見られて、蛍がいる豊かな自然環境があって、世界一の棚田があって…たくさんあります。それから、こんな素敵な場所があるんだよって教えてくれるヒトがたくさんいます。世界に誇るアウトドアメーカー「snow peak(スノーピーク)」や人気の温泉宿「嵐渓荘(らんけいそう)」だって、下田村にあります。こんなに楽しめる場所があることを知ってもらう窓口として「村長の家」は存在したいと思っています。

 

――「村長の家」に行けば、村長に聞けば、下田村の魅力をたくさん教えてくれるってことですね。

今井さん:どこで蛍が見れるのか、どんな川遊びができるのか、下田村のことならなんでも聞いてください。下田村に生まれ育った村長だから、地域のヒトに支えられている村長だから、伝えられる下田村の魅力がたくさんあります。

 

 

下田村を元気に。夢は大きく10の事業を。

――ゲストハウス「村長の家」、レストラン「星空レストラン」のふたつの事業をまずはじめた、その理由はありますか?

今井さん:川や山があって、神社や温泉があって。いろいろと楽しめるのが下田村だと思っています。なので、たっぷり遊んでもらうためには、安く宿泊ができて、自然の中でおいしいご飯を食べれてもらえたら素敵だなって思ったんです。この2つの事業は同じ場所で行っていて、泊まって食べてもらうことはもちろんですが、レストランだけの利用もOKです。星空の下で、山に囲まれての食事は子どもたちにおすすめです。

 

 

――星空の下での食事って、キャンプとかしないと体験できないですよね。手軽に体験できるのは嬉しいです。他にはこんなことを下田村でしていきたい、って目標はありますか?

今井さん:今、進行している事業が2つあります。まずはネイチャーゲーム。自然遊びですね。山、川、植物、昆虫など、子どもが学べるコンテンツが下田村にはたくさんあります。いつでも自然に触れて、学んでもらえるような教育プログラムを作っています。それと…先ほどGoogleの話をされていましたよね。「下田村」で検索しても、観光情報って出てこないんです。そこで、自然はもちろん、お店やスポットをまとめた観光案内所のようなWebサイトを制作しています。

 

 

――Webサイトですか?自社で地域の観光サイトを立ち上げるなんてすごいですね。

今井さん:やっぱりたくさんのヒトに下田村のことを知ってもらいたいので。あとは、下田村の豊富な食材資源をつかってドライフルーツなどの商品を作ったり、山菜の水耕栽培をしている農家さんがいるので、商品化したりと。産品を作るラボのようなこともしたいと考えています。

 

――いろいろと次の展開を考えられているんですね。

今井さん:下田村は現在、約9,000人のヒトが住んでいます。もちろん、年々減少していて、その理由として働く場所がなかったり、表現する場所がないこともあると思います。ゲストハウスなどを通して下田村の良さを知ってもらい、来て、住んでもらう。それだけでなく、仕事をはじめとした環境や選択肢を作ることで、下田村に居てくれるように、住んでもらえるようになると思うんです。だから、下田村ならではの事業を2020年中に10事業まで増やしたいと計画しています。

 

下田村ならではの未来像。田舎という魅力。

旧下田村へと取材へ向かう道中、車窓から、豊かな自然、田んぼ、川、山…天気も良く、まるで細田守監督が手掛けたアニメ映画「サマーウォーズ」の世界にでも迷い込んだかのような夏の情景を味わいました。「田舎だから何もない」そんな考えは実はもう古くて、今は自然環境の豊かさに対する人々の意識が大きく変わりつつあります。その大切さにいち早く気づき、多くの人たちとの共有をはじめた「株式会社下田村」。行政がするであろうことまで、自らの手で進めるエネルギッシュな今井さんの行動から目が離せません。「東京から来た子どもと、地元の子どもが仲良く遊んで、『あの星はね〜』『あっちに行くと蛍がね』みたいに交流してもらえる環境を目指したい」という未来の光景が、とてもリアルに想像できます。皆さんも今年の夏休み、新潟の、下田村の自然に触れてみませんか?

 

 

株式会社下田村(村長の家/星空レストラン)

新潟県三条市庭月288

0256-46-8872


TOP