ロシアのバレエ団で踊っていたダンサーが教える「巻バレエスタジオEmia」。
カルチャー
2024.08.07
8月12日に巻文化会館で「巻バレエコンサート2024」が開催されます。ウィーン国立バレエ団のプリンシパルをはじめ、プロのバレリーナたちが出演するコンサートです。主催する「巻バレエスタジオEmia(エミア)」の代表・青木さんは、ロシアのバレエ団や新潟の舞踊団体「Noism1」で経験を積んできたダンサー。バレエスタジオを訪ねて、青木さんからいろいろなお話を聞いてきました。


巻バレエスタジオEmia
青木 枝美 Emi Aoki
1984年埼玉県生まれ。ロシア国立ボリショイバレエ学校を卒業後、ロシアナショナルバレエ団などに所属してロシアやヨーロッパ各地の公演に参加。2007年に帰国し新潟の「Noism1(ノイズムワン)」で7年間活動した後、2020年より「巻バレエスタジオEmia」を主宰する。温泉巡りが趣味で山奥の秘湯が好き。
ロシアの子どもたちが舞台を歩く姿に衝撃を受ける。
——8月12日に巻文化会館でバレエコンサートを開催するんですね。
青木さん:そうなんですよ。「巻バレエスタジオEmia」でバレエを学んでいる子どもたちと、世界的なバレリーナが共演するステージなんです。スペシャルゲストとして迎えるウィーン国立バレエ団プリンシパルのリュドミラ・コノヴァロワは、私がロシア国立ボリショイバレエ学校で学んでいたときの友人なんですよ。
——青木さんはロシアでバレエの勉強をしていたんですね。そもそも、いつからバレエをはじめたんですか?
青木さん:4歳からです。未熟児として生まれた私を健康に育てようと、母が幼稚園に併設された教室でモダンバレエを習わせたんです。でもクラシックバレエをやっている友達が、トゥシューズを履いて爪先立ちしている姿に憧れて、私もクラシックバレエをはじめました。
——バレエをはじめたことで何か変化はありましたか?
青木さん:身体が強くなって風邪ひとつひかなくなりました。おかげで小学校時代は皆勤賞をもらったくらいです(笑)
——それはすごい(笑)。さて、バレエの勉強のためにロシアへ渡ったのには、どんないきさつがあったんですか?
青木さん:12歳のときに見たロシアのバレエ団の来日公演がきっかけでした。10歳くらいの子どもたちが舞台を歩いているだけの姿を見て、今まで自分がやってきたバレエとはまったく違う美しさを感じたんです。感動と同時にショックを受けました。

——歩いているだけの姿に、そこまでの衝撃を受けたんですね。
青木さん:あんなバレエを身につけたいと思って調べるうちに、東京の表参道にロシア国立ボリショイバレエ学校の先生が教えてくれる教室があることを知ったんです。でも地元の中学校からではそのバレエ教室のレッスンに間に合わなかったので、教室の近くにある私立中学校を受験しました。
——バレエを勉強するために、中学受験までしたんですね。学校とバレエの両立は大変だったんじゃないですか?
青木さん:自宅のある埼玉と東京を往復するのが大変でしたね。朝早くに家を出て中学校へ通学して、レッスンが終わったら夜遅くに帰宅する毎日でした。厳しい学校だったので電車のなかで宿題をして、それでも終わらなかったら帰宅後に夜中まで宿題をやりました。いつも寝不足だったせいか、ぜんぜん身長が伸びなかったんですよ(笑)
——それは大変でしたね。そこまでして通ったバレエ教室ではどんなことを学んだんでしょうか?
青木さん:とにかく時間をかけて基礎を徹底的に叩き込まれましたね。単純なことにもこだわって、何度も何度も繰り返しやらせるんです。今まで自分がやってきたことは、バレエの真似ごとだったと感じてショックを受けました。
——そんなにレベルが違ったんですね。
青木さん:でも習いはじめて2年半が過ぎた頃に、不景気のあおりを受けてバレエ教室が撤退することになったんです。そのときに先生から「続きを教わりたいならロシアにおいで」と誘ってもらったんですよ。それで中学を卒業してからロシアに渡って国立ボリショイバレエ学校に入学しました。

ロシアでのバレエから「Noism」でのコンテンポラリーダンスまで。
——ロシア国立ボリショイバレエ学校って、どんなところなんですか?
青木さん:20室のバレエスタジオがあって、1〜8年生までが学んでいるんです。みんなプロを目指しているから競争が激しかったんですよ。だから必死に自主練する子ばかりでしたね。空いているスタジオを探しては、お互いにアドバイスし合いながらレッスンに励んでいました。
——ロシア語の会話は不自由しなかったんでしょうか?
青木さん:最初は苦労しましたね。演技のレッスンでは言葉がわからなかったので、みんなが上を見たら上を見て、みんなが座ったら座るというように、周りに合わせて見よう見まねで演じていました(笑)。日本人の先輩や同じクラスの友人にはずいぶん助けられましたね。
——いいお友達ができたんですね。
青木さん:自分たちと同じようにバレエが好きだということを、認めてくれたんだと思います。ロシアの子たちって日本人と違って気を使わないんですよ。言いたいことはストレートにはっきりと伝えるんです。「あなたは脚のラインが汚いから直した方がいい」とか「顔がピカチュウみたいにペロンとしているから、もっと表情をしっかりつけた方がいい」とか(笑)
——そういうところで文化の違いを感じますね(笑)。今回のコンサートで来日するリュドミラ・コノヴァロワさんとも、そのときに知り合ったんですね。
青木さん:もう25年来の付き合いになります。彼女は母子家庭だったんですけど、お母さんも急に亡くなったので孤児院から通学していたんです。そんななかで、弟を育てるために努力してプリンシパルに上り詰めたんですよ。

——今まで培ってきた友情があるから、今回の出演が実現したんでしょうね。青木さんは学校を卒業した後もロシアでバレエを?
青木さん:日本ではバレエで食べていくのが難しいと思ったので、そのままロシアのバレエ団に入りました。いろいろな国を訪れてすごい数の公演をこなすので、とにかくハードスケジュールだったんです。化粧を落とす間もなく次の公演地に向かって、寝台車で寝ていたら起こされて電車を乗り換えて、目的地に到着して起きたらすぐに本番といった具合でした。風邪をひいて熱が38℃以上あっても、舞台に立ったこともありましたね。
——まるで、売れっ子アイドルのようなスケジュールですね。
青木さん:その後に移籍したモスクワバレエ団で、コンテンポラリーダンスに触れる機会があって、表現の面白さに魅力を感じはじめたんです。外部ワークショップを通じてさらに興味を持つようになって、若いときしか新しいことにチャレンジできないと思って、バレエ団を退団してドイツのカンパニーと契約して、ドイツ語学校の入学やアパートの契約をした後で、ビザ取得のために日本へ一時帰国したんです。
——バレエのときもそうでしたが、やりたいことに対しての行動力がすごいですよね(笑)
青木さん:ありがとうございます。ところが、それが裏目に出てしまったんです。私の実家宛にドイツのカンパニーから1枚の手紙が届いて、EUのパスポートを持っていない外国人がドイツで働くことは難しいと労働局からいわれたいう理由で、契約を辞退すると書かれていました。仕方なく次回のオーディションに備えて、ドイツ語の勉強やダンスレッスンに励んでいたんです。
——そういうアクシデントもあるんですね。
青木さん:そんなときに、日本で「Noism」というコンポラリーダンスのレジデンシャルカンパニーが立ち上がっていて、舞踊家を募集していることを知ったんです。ちゃんとお給料がいただける上に、トップの舞踊家は私がよく見ていたコンテンポラリーダンスのビデオに出演していた方だったので、ぜひ挑戦してみたいと思いました。
——それで「Noism」で活動をはじめたわけですね。コンテンポラリーダンスは今までやってきたバレエと違ったんでしょうね。
青木さん:クラシックバレエと比べて、身体の使い方や表現方法が違ったので楽しかったですね。あとバレエのように完成されたものを表現するのではなく、最初から一緒に作り上げていく過程が面白かったです。

敷居の高さをなくして、気軽にバレエを楽しんでほしい。
——「巻バレエスタジオEmia」をはじめたのはどうしてなんですか?
青木さん:結婚を機にダンサーを引退したんですけど、友人の結婚披露宴で踊ってほしいと頼まれたんです。ブランクがあったので調整するために踊れる場所を探していたら、このスタジオと出会ったんですよ。それから何度か友人の結婚披露宴で踊る機会が続いて、踊る楽しさが蘇ってきたんです。
——ダンサーの血が再燃してきたんですね。
青木さん:そのうちバレエをやっている人たちから「教えてほしい」と頼まれるようになったので、みんなでバレエを楽しむサークルをはじめたんです。それがクチコミや紹介で希望者が増えていって「巻バレエスタジオEmia」をはじめることになりました。ボリショイバレエ学校や「Noism」の後輩たちも、講師としてレッスンを手伝ってくれたので本当に助かりましたね。

——友情ってありがたいですね。「巻バレエスタジオEmia」では、どんなふうにバレエを教えているんでしょうか?
青木さん:私が今まで培ってきたことを伝えられたらいいなと思っているんですけど、プロを目指す子だけではないし、経験やレベルも様々なんです。だからそれぞれの目的やレベルに合わせた教え方をするよう心がけています。でも、プロを目指したくなったときに手遅れにならないようにはしてあげたいですね。
——その成果を見られるのが、8月12日に開催される「巻バレエコンサート2024」なんですね。
青木さん:プロの力を借りながら、子どもたちをステージに上げたいという企画なんです。それと同時に、バレエに馴染みのない方々にも気軽に本格的なバレエを見ていただきたいんですよ。きっと感動していただけると思います。
——びっくりするのはチケット料金が800円ということです。
青木さん:ウイーン国立バレエ団プリンシパルのステージを見るためには、安い席でも10,000円以上はするんですよ。でも、そうした敷居の高さをなくして気軽に楽しんでいただきたいという思いがあったので、1,000円を切る料金で開催させていただくことにしました。こんな機会は滅多にないと思いますので、ぜひ足を運んでいただいてバレエの世界に触れていただきたいです。

巻バレエスタジオEmia
新潟市西蒲区巻甲384
050-5276-8124
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